毎年話題になっているAppleの開発者向けイベントWWDCですが、今年も「WWDC 2017」によって様々な発表がなされました。

多くの人が記憶しているのはAmazon Echoのような立ち位置にあるHomePadという人工アシスタントを搭載したホームスピーカーだと思いますが、実はみなさんが使っているiPhoneやiPadのオペレーティングシステムであるiOSも、この秋アップデートが予定されています。

iOSでは大幅なデザインフレームワークの変更こそ行われませんが、今回のアップデートでも便利な機能が盛りだくさんになりそうです。
とりわけ注目したいのは、iPadのマルチタスキング機能の向上、AR体験、コントロールセンターのカスタマイズ、カメラやLive Photosなどの機能の向上です。

今回は、この秋登場する「iOS11」が遂げた新たな進化の中でも特に注目の機能をピックアップしてご紹介していきます。
iPhoneユーザーの中には5年以上使っているユーザーも多いとおもいますが、ここまで便利になったのかときっと実感できるでしょう。
登場はこの秋と少し先になりますが、リリースに先駆けて予習をしておきましょう。

iPadの大幅アップデート

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今回のiOS11のアップデートにより、ファイル管理やマルチタスキングが驚くほど簡単になります。
iPadはmacOSのようにDockに複数のアプリを収納することができるようになり、さまざまなアプリで作成したデータも一元的に管理できるようになります。
より具体的に、iPadでできるようになったことを確認していきましょう。

1. ファイルアプリケーション

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Source: Apple

ファイルアプリケーションの登場により、さまざまなファイルを一箇所で一元管理できるようになります
検索をしたり、タグをつけて整理したりすることができるほか、最近使ったファイルや、他のiOS上のファイル、iCloud Driveの中や、BoxやDropbox、百度、Google DriveやAdobe Creative Cloudといった他社のサービスに保存したファイルも簡単にアクセスすることができるようになります。

2. 新しいDock

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Source: Apple

macOSのように、どの画面からもアクセスできるDockによって、これまでのiPadを使った時のUXが根本から変わります。
スワイプするだけで瞬時にアプリケーションを開いたり切り替えたりすることもでき、お気に入りのアプリケーションを置いてカスタマイズを行うことも可能です。
また、最近開いたアプリケーションや、iPhoneやMac上で最後に使っていたアプリケーションなどをDockがスマートに提案し、Dockの右側に表示されます。

3. マルチタスキング

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Source: Apple

iPadのマルチタスキング機能もさらに強力になりました。
2つ目のアプリケーションをDockからドラッグ&ドロップすることで直接開くことができ、どちらのアプリケーションもSlide OverやSplit Viewによってアクティブな状態で操作することができます。
Slide Overで使っている2つ目のアプリケーションは、いつでも左側にドラッグすることができ、Appスイッチャーを使ってお気に入りのApp Spaceに戻ることもできます。

4. ドラッグ&ドロップ

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Source: Apple

iPadの新しい操作方法として、ドラッグ&ドロップが加わりました。
2つのアプリを開きながら、テキストや写真、ファイルなどをアプリケーション間で簡単に移動できるようになります。
画像ライブラリからメールに直接画像を貼り付けたり、ファイルを添付したりという方法もパソコンのような直感的な操作で行うことができるのです。

5. インスタントマークアップ/インスタントメモ

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Source: Apple

Apple Pencilを使った操作もより便利になります。
PDFやスクリーンショットにすばやく書き込むインスタントマークアップ機能、Apple Pencilでロック画面をタップするだけでメモを取り始められるインスタントメモ機能があれば、もうメモ帳を持ち歩く必要はありません。
メモしたものはすべて、メモアプリケーションに保存され、iCloud上で同期されるので、のちほどiPhoneやMacで確認することもできます。

6. インラインスケッチ

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メモアプリやメールアプリで何かを描き始めると、周りのテキストが自動的にわきに寄って描くスペースが確保されるようになります。
また、メモアプリ内の手書き文字も検索対象に含まれるようになります(英語と中国語が検索対象)。

7. スキャンと署名

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新たにドキュメントスキャナ機能が加わったことで、カメラに書類をかざすだけで自動的に感知してスキャンし、端の余分なスペースをトリミングして、最適な状態で保存することができるようになります。
Apple Pencilがあれば、空欄を埋めたり、その場で署名をすることだってできるようになります。
クラウドでプリンタが繋がっていれば、その場で印刷を行うことも可能になります。

iPhoneとiPadに追加された革新的な機能

iOS11を通して、iPhoneやiPadは所有しているユーザーのことを多く学び取ろうとし、より複雑なパーソナリぜーションが可能になります。
所有者がSiriにお願いする前に、様々なことをやってくれたりもします。

1. 進化したLive Photos

Live Photosに*「ループ」「バウンス」「長時間露光」*が加わったことで、これまでトイカメラや一眼レフでしかできなかった撮影も、さらにクリエイティブで表現力豊かに楽しめるようになります。

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*「ループ」*では、お気に入りのLive Photosをビデオループで表示することができるようになります。
自分で画像を選んだり、魅力的なループを作れる画像を写真アプリのAIが自動的に提案してくれたりします。

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*「バウンス」*では、Live Photosが前に進んだり後ろに巻きもどされたりと、面白い表現を楽しむことができます。

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*「長時間露光」*では、今までデジタル一眼でしか再現できなかった効果を再現することができます。
時間と動きの要素を捉え、光の軌跡をしっかりと捉えます。

2. 再設計されたメッセージアプリ

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メッセージアプリではAppパネルが完全に再設計され、ステッカーや動く絵文字、ゲームや予定などさまざまなアイテムを友だちと共有することができるようになります。
Appパネルは左右にスワイプするだけの簡単操作で、より少ないタップで簡単に気持ちを伝えることができるのです。

3. より賢くなったSiri

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先進的な機械学習と人工知能のおかげで、Siriができる範囲はますます広がり、より自然な新しい声で話すようになります。

とりわけ注目すべきは*「翻訳」機能*です。
まだ日本語には対応していませんが、英語で話しかけることで、Siriが中国語・スペイン語・フランス語・ドイツ語・イタリア語にフレーズを翻訳することができます。

また、Apple Musicで再生した曲の好みを学習しているので、Siriに音楽をかけるように頼めば、好きな曲やこれから好きになりそうな曲を流してくれます。
*「この曲のギタリストは誰?」*といった質問にも答えるようになります。

4. 音声以外でも活躍するSiri

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Siriは音声アシスタントではなく、iOSの中にいるあなたのパーソナルアシスタントという側面がより強くなるでしょう。

例えば、テキスト入力をするときに、映画や音楽、場所など、最近所有者がチェックしたあらゆる名前をQuick Typeという形でSiriが提案できるようになります。
情報はエンドトゥエンドで暗号化されるので、個人情報もしっかりと守られます。

また、Safariで直前に読んでいた内容に基づき、次に何を検索するかをSiriが提案できるようになりました。
さらに、オンラインでホテルの予約を取ったり、旅行のWebサイトでフライトスケジュールを確認すると、その情報をカレンダーに追加するかどうかをSiriが尋ねてきます。

5. カスタマイズ可能なコントロールセンター

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iOS11からはコントロールセンターも新しくなってカスタマイズ可能になり、よく使う機能の設定を簡単に下からのスワイプで変更できるようになりました。
アイデアを残しておくことが多いならボイスメモのボタンを追加したり、ダイニングの照明のオンオフを切り替えたいならホームアプリのコントロールを追加したりすることができます。
また、3Dタッチにも対応しているので、さらに多くのコマンドを駆使することだってできるようになります。

6. 運転モード

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車を運転している可能性がある場合、iPhoneが感知できるようになりました。
この機能によって、運転中は電話やテキストメッセージ、通知などに気をとられなくても済むようになり、あとで対応できるようにします。
連絡してきた人には、このモードをオンにしておくと所有者が運転中であることを自動的に通知します。

7. 新しいマップアプリ

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マップアプリがさらに進化してやってきます。
世界中にある主な空港やショッピングセンターをフロアごとに詳しく見ることができるようになりました。
空港のセキュリティを通過したあとに出会うレストランを探すのも、巨大なショッピングモールの中にどんな店が入っているのかをチェックするのも、簡単になります。

また、車線案内モードも新たに加わりました。
運転している時には曲がるべき交差点や降りるべき高速道路の出口を見逃さないように、音声や振動、表示で適切な車線を知らせます。
さらには、走っている道路の速度制限や、到着までの残り時間も表示されます。

8. ARKitで拡張現実が新登場

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Source: Apple

iOS11で追加されたARKitでは、世界中のデベロッパーが簡単にARをアプリに実装できるようになったので、何億ものiOSデバイス拡張現実を楽しめるようになります。
また、デベロッパーはCore MLという技術を使って、機械学習を使った、使うほどに賢くなるアプリケーションを開発することもできるようになります。

iOS11を今すぐに試す方法は?

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通常、最新のiOSを試すためには正式リリースまで待たなければなりませんが、Apple Beta Software Programのメンバーになることで、プレリリース版を試すことができます。

フィードバックを送ることが前提となりますが、このプログラムへの申し込みが最速でiOS11を試すための方法となります。
Apple IDがあれば申し込むことができます。

まとめ

この秋のiOS11のアップデートによって、さらに私たちの生活が便利に、そしてテクノロジーをシームレスに使うことができるようになります。
とりわけiPadはますますパソコンのような使い方ができるようになり、Siriはますます賢くなってさまざまなことができるようになります。

また、本文では紹介しきれませんでしたが、光学式手ぶれ補正やTrue Toneフラッシュを使った撮影、Apple Payによる友だち同士の支払い(米国のみ)など、わくわくする機能がたくさん実装されています。
デベロッパー側では、CoreMLによる機械学習、HomeKitによる外部アクセサリとの連携、SiriKitによるSiriを使った人工知能アプリケーションの作成、MusicKitによるApple Musicとの連携が可能になります。

iOSの最新版の到来まで、楽しみに待っていましょう。