コロナ禍で非対面・非接触が推奨され、実店舗へ足を運んで買い物をする行動が減った一方、EC利用が拡大しました。そのような中、「ショールーミング」という新たな買い物行動も見られるようになっています。

ショールーミングとは「商品を実店舗で見て、購入はECで」という消費者行動のことです。

この記事では、ウィズコロナ時代の買い物行動の実態を明らかにし、事業者として今後対策すべきことを解説します。

目次

  1. ショールーミングとは
  2. ショールーミングの実態
  3. ショールーミングへの対策
  4. ショールーミングストアの成功事例
  5. 顧客の行動・心理を理解してショールーミング対策を

▼最新のショールーミング行動の実態はこちら

ウィズコロナ時代のモノの買い方に関する自主調査

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~実店舗の機会損失?ショールーミング行動の実態とは~ウィズコロナ時代のモノの買い方に関する自主調査について解説いたします。

ショールーミングとは

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ショールーミングとは「実店舗で商品を確認し、購入はECで」という消費者行動のことです。メーカー/ブランドの直営店舗に訪問した後、公式ではないECモール等で購入を済ませる行動も多く見られます。

ショールーミングが増えた理由

ショールーミングという行動が増えた理由として、大きく以下の2つが考えられます。

コロナ禍でEC利用が拡大、実店舗での買い物が減った 

コロナ禍での巣ごもり消費が追い風となり、物販系分野のBtoC-EC市場は大幅に拡大しました。

「目的のない実店舗訪問」「実店舗での買い回り」は減少傾向にあり、反対に「ネット上だけで完結する商品購入」は増加傾向にあります。

消費者心理では「モノはなるべくネットで買いたい」という考えが強まっていると言えます。しかし、例えばアパレル・家具・家電などは、ネット上の商品説明だけでは商品特長やスペックのイメージが掴みにくい部分があります。

そこで、「最終的に購入するのはECだが、一旦店頭で実物を確かめてから」という行動が広がっているのです。

買う前の徹底的な情報収集が当たり前になった

買い物をする消費者の立場では、「買い物で失敗したくない」という心理があります。なおかつ、現代は「情報爆発の時代」と言われ、ネット上には無数の商品レビューやクチコミが溢れています。

何か買い物を一つするにしても、実際に商品を手にする以前に、既に試した人からの評価を容易にリサーチすることが可能です。買う前に自ら徹底的に情報収集して比較検討することが、当たり前の時代になったのです。

そのような消費者行動が加速する中、「実店舗」というチャネルは、「購入」の場から「比較・検討」の目的を果たす場へと意義がシフトしつつあると言えます。

ショールーミングの実態

それでは、どのような業種でショールーミング化が進んでいるのか、具体的にデータを見てみましょう。

家具・家電でショールーミング化が進行

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ショールーミング化が比較的進行している商材として、 家具や家電、キャンプ道具、楽器といった大型の商材が挙げられます。

一方、自動車のように依然として店舗購入型が多い商材も存在します。

消費者行動を理解しよう

ショールーミング化による機会損失を防ぐためには、消費者の心理・行動を深く理解した上で、適切な戦略立案が必要です。各フェーズでの消費者行動を、調査レポートから見ていきます。

①事前の情報収集

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例えば「洋服」「家具」「キャンプ道具」では、店舗訪問前の情報収集実施率は約9割に上ることが明らかになっています。

消費者は、店舗訪問前には主に公式サイトで情報収集を行っています。

情報収集後の店舗訪問先として、洋服では「メーカー/ブランドの直営店舗」に約8割が訪れますが、その一方で家具・キャンプ道具では 「ホームセンター・家電量販店」が勝っています。

②店舗で商品特徴を確認

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店舗に訪れる目的は、例えばキャンプ道具では「商品のサイズ」「触り心地」といった実際に見て触れて感じられる商品特徴を確認することが上位に挙がりました。

「商品の形状」「使い方」も店舗で確認し、店舗訪問後の情報収集では「価格」に関心が集まる様子も伺えます。

③ECで購入

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店舗訪問後には、訪問前より情報収集の行動がやや減少します。ただし「洋服」「家具」「キャンプ道具」3商材とも半数前後は「メーカー/ブランドの公式サイト」で引き続き情報収集を実施しています。

そして最終的に、家具・キャンプ道具は半数以上が「総合ECAmazon・楽天など) 」で商品購入を済ませています。

洋服は、比較・検討フェーズにおける直営店舗への訪問が8割超えだったものの、購入先としては6割未満となっています。

▼最新のショールーミング行動の調査レポートはこちら

ウィズコロナ時代のモノの買い方に関する自主調査

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~実店舗の機会損失?ショールーミング行動の実態とは~ウィズコロナ時代のモノの買い方に関する自主調査について解説いたします。

ショールーミングへの対策

商材によって、EC利用の定着度・ショールーミング化の進行度に違いがあります。

ウィズコロナ時代の今、事業者として必要な取り組みは、商材ごとの消費者行動に合わせた戦略と、自社サイトで 購買まで囲い込む戦略です。

ショールーミングストアを設置する

消費者の情報収集フェーズにおけるショールーミングのニーズが高まっていることから、あえて「ショールーミングをしてもらうための店舗」を設置している企業もあります。

例えば、ファストファッションブランドの「ZARA」「GU」「SHEIN」では、都内にショールーミング型店舗をオープンした事例があります。

店頭で提供するサービスは、試着に特化。「買うための店舗」と比較して、スタッフ数が少なくて済むので人件費を抑えられ、在庫を大量にストックしておく必要もありません。

ユーザーは試着した商品を気に入ったら、商品タグに付けられたQRコードをスマホから読み込むことで、公式ECで購入ができます。

実店舗での接客に付加価値を持たせる

実店舗へ足を運んでもらうには「明確な理由」が必要です。

そこで、実店舗での接客に付加価値を持たせて必ず店頭へ足を運んでもらうようにし、その後は公式ECでないと買えない、という流れを確立した事例もあります。

ビジネススーツのD2Cブランドとして知られる「FABRIC TOKYO」は、都内をはじめ全国各地に複数の実店舗を構えています。

しかし、いずれも「売らない店舗」で、在庫もレジも現金も置いていません。実店舗では、生地を見てスーツの採寸をすることに特化しています。採寸を済ませたユーザーは、そのデータをオンラインで入力して、自分に最適なサイズのスーツをオーダーできます。

一度採寸を済ませておけば、その後は店頭へたびたび足を運ばなくても、いつでもどこでも、スーツやシャツ、ベストなどのオーダーが完結します。

オンライン・オフラインの垣根をなくす

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オンラインでの買い物と、実店舗での買い物の境界線をなくそうとするマーケティング戦略を「OMOOnline Merges with Offline)」と言います。

これは「オンラインがオフラインを包括する」という考え方です。

例えば、オフライン(実店舗等)での購買記録や接客記録をすべてデータ化します。そのデータを、オンライン(EC等)での購買記録や接客記録と統合します。

顧客は、オン・オフを問わず、どの接点でブランドと接触しても、今までの自分の行動履歴や趣味嗜好を理解してもらえていて、一貫性のある顧客体験を享受できる、といったモデルです。

例えばAmazonが米国で展開していた無人店舗「Amazon GO」は「OMO」を実現した一例です。店頭には生鮮食品が並んでいて、顧客は商品を手に取っていくだけで、レジに並ばずクイックに店を出ることができます。請求は後で自分のAmazonアカウント宛に計上されます。

店頭・EC双方の購買履歴は統合されており、AmazonのECサイト上で表示される「おすすめ商品」に店頭での購買データも反映されます。Amazonと接点を持っている限り、どのチャネルで接触しても一貫した顧客体験が続いていく仕組みです。

ショールーミングストアの成功事例

ショールーミング化の進行は、実店舗を構える事業者にとってデメリットばかりではありません。

ネット上では提供できないような体験を提供し、顧客満足度を高めることで、ブランド全体で顧客を獲得・維持していくことが可能です。

以下に挙げる2つは、ショールーミングストアの成功事例です。

LaLaport CLOSET

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出典:PR TIMES 「LaLaport CLOSET(ららぽーとクローゼット)」 三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY内に3月18日(木)オープン

千葉県船橋市にある大型商業施設「ららぽーとTOKYO-BAY」には、「LaLaport CLOSET」というショールーミングストアがあります。

ここで顧客は、複数ブランドの洋服をまとめて試着、3Dボディースキャナーを使って無料で体型採寸、パーソナルカラー診断などができます。「自分に最適な服選び」に関して、オンラインでは実現が難しい項目をオフライン接点に集約し、顧客が店頭に足を運ぶ理由を作り出しています。

新宿高島屋「Meetz STORE」

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出典:PR TIMES “新たな出会い”がテーマのショールーム型店舗「Meetz STORE」が髙島屋新宿店に4月29日(金・祝)オープン

新宿高島屋では2022年4月に、「Meetz STORE(ミーツストア)」というギフト向け商材のショールーミングストアを開設しました。

国内外、約60のD2Cブランドのプロダクトが一堂に会して「グルメ」「ビューティー」「アート&クラフト」など、さまざまなジャンルの商品を見たり試したりでき、顧客は気に入った商品をオンライン経由で家族や友人、知人等にギフトとして贈ることができます。

複数D2Cブランドの商材を、ブランドの垣根を超えて見れる・試せるという、オンラインでは不可能な体験を提供しています。

顧客の行動・心理を理解してショールーミング対策を

ショールーミングという消費者行動が拡大していることを、具体例を交えながら紹介しました。

ショールーミング対策としては、まず「顧客が実店舗・ECそれぞれに求めるベネフィットとは何か?」を洞察し、顧客の心理・行動を深く理解することが不可欠です。

そのうえで、実店舗でなければ提供できない付加価値や、自社の強みを改めて棚卸ししていきましょう。実店舗・EC問わず、どんな接点でも快適な顧客体験を提供することが、顧客に支持されるカギと言えます。

▼最新のショールーミング行動の実態はこちら

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