WebデザイナーやUXデザイナーにとって、デザインといえばボタンの大きさや画像の配置、ロゴのタイポグラフィのバランスなど、「見た目」に関わるデザインがほとんどです。
しかし、近年、マイクロインタラクションが注目される中において、見直されるべきところは「見た目」だけではありません。

それは*「音」*です。
例えば、メールが送信されたり、ダウンロードが完了したときにお知らせしてくれる音も、マイクロインタラクションの中に含まれます。

実際、ユーザーは日頃耳にしている音に関して強く意識していないのかもしれませんが、マイクロインタラクションとは本来それでいいのです。
微細な、かすかな表現で、ユーザーに心地よい体験をしてもらうのが、マイクロインタラクションであり、UXデザインの目的です。

今回は、Webデザインやアプリデザインに取り入れたい、ユーザーのエンゲージメントを高めるサウンドインタラクションについて、概要や取り入れ方のコツをご紹介していきます。

高まるサウンドインタラクションへの期待

サウンドインタラクションとは、簡単にいえばユーザー操作のフィードバックを伝えるために*「音」*を使うことです。
タイマーをかけて指定の時刻が来る時に「ピロリ」と音を鳴らしたり、メールを受信したときに「チロリン」と音が鳴ったりしますが、サウンドインタラクションとはこうした音のことを指します。

このようなサウンドインタラクションは、取り立てて新しい技術であるというわけではありません。
実際、Windows 97のような20年前のOSでも採用されていました。

ところが、近年改めて注目されているのには、理由があります。
それは、音声アシスタントの登場です。

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SiriやGoogle Nowはスマートフォンでも利用することができますが、AmazonのAlexaのような音声アシスタントは、画面を持たないEchoのような端末で利用します。
基本的には、インタラクションは全て音声で行うので、各インタラクションに関するフィードバックは、音声や音(サウンド)で表現する必要が出てきました。

実際のところ、視覚情報だけを使ってデザインを行うアプリはだんだん減ってきて、一方で音声を用いたアプリが増えています。
Googleマップのようなアプリでも、移動を行うときには地図での表示に加えて、音声でも案内をしてくれます。

これからの時代は、ユーザーはスマートフォンのような画面を持つデバイスを携帯しながらも、ワイヤレスイヤホンを使って、画面を操作せずともあらゆる動作を行なっていく可能性があります。
そうしたことを背景に、ユーザーに画面を見ずとも意図を伝えていくために、サウンドインタラクションをデザインするという行為自体に改めて注目が集まっています。

サウンドインタラクションをデザインする際の4つのポイント

サウンドインタラクションが重要である理由についてはこれまでに説明した通りです。
それでは、実際に数秒(場合によっては1秒以下)のサウンドインタラクションを効果的にデザインするためには、どんなことに気をつけていけばいいのでしょうか。

1. 単純化する

音をデザインするときには、視覚情報以上にシンプルにする必要があります。

いくつかの音が重なった複雑な和音や、非常に長いデザインというのは、UXという観点で見ればネガティブな効果を生み出します。
とりわけモバイルプロダクトでは、かすかで目立たない、温かみのある音のほうがより好まれるようです。

Facebookメッセンジャーでも、メッセージを送ったり受け取ったりするときに非常に「単純」とも言える音が採用されています。

しかしながら、アプリをもっと単純化するためには、次のような質問を自問自答してみましょう。

「本当にこの音は必要なのか?」

ビジュアルコンポーネントを作成するときにも*「本当にこのボタンは必要なの?」*と考えると思いますが、サウンドインタラクションでも同じ質問が通用します。

ゼロでは少なすぎるかもしれませんが、使用するのは必要十分な数にするべきです。

もし先ほどの質問に対して、この音はユーザーがアプリケーションを使う時に本当に重要な役割をしているのだ、と断言することができれば、ぜひそのサウンドを採用しましょう。
たくさんの音がありすぎても、ユーザーはイライラするだけだし、本当に大切な音を聞き逃してしまう恐れすらあります。

2. システムとして統合する

先ほど例に挙げたFacebookメッセンジャーだけでなく、LINEやSkypeのような他のメッセンジャーアプリでも、同様のサウンドインタラクションに気づくはずです。
こうした音のデザインは、アプリケーションごとに異なりますが、アプリケーション内の音には類似点があります。

あえて似た音にしているのは、もちろん意図的です。
それは、アプリ内で没入感のあるUXを実現させるために*「一貫した」(コヒーシブな)*音を採用したほうが、ユーザーが体験に集中するのを邪魔せずに済むからです。
もちろん、逆に音のデザインが一貫していなければ、不快になるか、笑いをこらえられないかして、注意が散漫になってしまうのは言うまでもありません。

サウンドデザインを行う際には、可能な限りシステムとして統合した音にしましょう。
これは、ビジュアルコンポーネントを作成する時にも全体のイメージを統合していくのと同じことです。

3. ユニークかつ、そうではない音を使う

機能に取り入れるべき音をデザインする時に、忘れてはいけないのはコンテクストです。
ここでいうコンテクストとはユーザーがどのような場面でどのようなやり取りをするか、という個々の状況のことです。

例えば、サウンドデザイナーであるあなたが何らかのアクションにある音を紐づけたいとするならば、別の場合で状況が変われば、別の音を採用すべきです。
例えば、メッセージを受信する時にテキストを受信するときと添付ファイルを受信するときで、サウンドインタラクションのデザインを「似て非なる」もの(つまり、「ユニークかつ、そうではない音」)を使うほうが、ユーザーも音だけで何が起こっているかを判断できます。

いつ、どこでその音を使うのか、考えてみましょう。
ユーザーが積極的に行った「アクティブな」(積極的な)アクションなのか、あるいはメッセージ受信などの「パッシブな」(受け身の)アクションなのかでも、音のデザインが変わってくるかもしれません。

逆にいえば、それぞれのユーザーアクションに対してのフィードバックとしての音が全て同じで、アクションを特定できないとしたらどうでしょう。
この場合、音はユーザーの次の行動を促すための役割を担っておらず、UX上もどんな意図があるかわからないので、システムのサウンドデザイン全体を考え直す必要があります。

ビジュアルデザイナーがカラーパレットを使うように、サウンドデザイナーは「音の」パレットを使ってもよいかと思います。
ただし、ユニークさが必要だとは言っても、「変な」音を出す必要は全くなく、個々のアクションに対するフィードバックがユーザーに伝われば問題ありません。

4. 繰り返しに耐えうる音を使う

見逃しやすいですが非常に重大なことなので、確認していきましょう。
基本的にその音は繰り返し使用されることが前提になっている、という事実です。

つまりサウンドデザインをするときに、「繰り返し聞いていても耐えうるか」という要素は非常に大切です。
もしそうでなければ、音が鳴るたびにユーザーはイライラするので、せっかく見栄えが良く使いやすいデザインだったとしてもユーザーはアプリケーションから離れてしまいます。

例えば、iOSで予定を知らせる時の「ベルのような」音は、ほとんどのひとが聞いていて全く不快に感じないのではないでしょうか。

一方、ロックで聴くようなギター音がサウンドインタラクションに使われていたらどうでしょうか。
はじめのうち何回かは聴いていて爽快になるかもしれませんが、1,000回と聴いていると耳障りになることは間違いありません。
暗いヘビーな音よりは、明るい音のほうが前向きになれます。