Amazonの音声アシスタント "Alexa" を搭載したデバイス「Amazon Echo」をはじめ、IoT時代のデバイスには余計なボタンが付いていないことが多くなっています。こうしたデバイスは、基本的に手を使って操作するというよりは、音声を使って操作したり、あるいは全く操作しないようになっています。

実は、こうしたUI(User Interface)のほとんど(あるいは全く)ないデザインのことを、「ゼロUIと呼ぶことがあります。この言葉自体は2015年頃から次第に使われており、IoTデバイスだけではなく、最近ではモバイルデザインにおいても意識されていると言われています。

それではなぜ、このようなUIのないデザインが注目されているのでしょうか。

今回は、美しいアプリに共通して見られる「ゼロUIについて、その概要やポイントをご紹介します。
  

一切のムダを排除したデザイン「ゼロUI」とは?

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※ 画像引用元:pexels.com (freestock)

ゼロUIという言葉自体は、Accenture Interactiveの傘下であるFjourd(フィヨルド)のアンディグッドマン氏が2015年6月のカンファレンスで言及した言葉だとされています。このカンファレンスは、まさにIoTに関するソフトウェアやハードウェアに関するイベントで、ここでグッドマン氏は「Zero User Interface」、つまりデバイスにインターフェイスがないこと」について指摘しました。

2016年4月には、Googleのスンダーピチャイ氏もデバイスの未来について、「私たちはモバイルファーストの世界からAIファーストの世界に移行するだろう」と語っています。この10年でフリックやタップに慣れた私たちは、今度はこうした操作をなかったことにするかのような必要が出てくるかもしれません。

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※ 画像引用元:Amazon.com

実際、IoTのようなスクリーンレスでインターネットにつながっているデバイスは、Amazon Echoのように声を使ったり、Magic Leapのように動きを認識したりする技術が採用されています。こうした音声や動きを認識することにより、ユーザーUIを触りながら「使い方を学習する」必要がなくなり、より直感的にデバイスを扱うことができるようになります。
  

モバイルアプリケーションも「ゼロUI」の時代へ

モバイルアプリケーションの中にも、ゼロUIを意識したデザインが次第に増えてきました。

とりわけ注目したいのは、[Appleデザインアワード](## Appleデザインアワードの)で受賞した12個のアプリです。もちろん、多少ボタンを配置しているようなものもありますが、アプリケーションのほとんどはUIの存在自体を感じさせないデザインであることがわかります。

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※ 画像引用元:self-screenshot on July 10th

例えば、受賞した12のアプリケーションの中で、シンガポール生まれの、世界中150以上の通貨の為替を瞬時に変換するアプリ「Elk」は、「ゼロUI」を非常に意識したデザインとなっています。Apple Watchでは、デジタルクラウンを使って素早く2つの通貨の比較ができるとともに、iPhoneアプリではUIの存在を意識せずに操作することができます。

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※ self-screenshot on July 10th

イタリア生まれのテキストエディター"Bear"も、ゼロUIが意識されています。実際に直感的にボタンとして認識できるのは赤い色をしたフローティングアクションボタン(FAB)だけで、あとはベゼルレスなUIが採用されています。また、執筆中は一切のUIを隠すことによって、書くことに専念することができるようになっています。
  

UIを限りなく減らすことのメリット

それでは、なぜUIを減らしたり無くしたりする動きが加速しているのでしょうか。

そのメリットはいくつかありますが、ここでは以下の3点について確認してみましょう。
  

1. 操作が直感的で単純になる

UIが少なければ少ないほど、操作は直感的になります。

例えば、逆にUIが多過ぎて操作に困る場合を考えてみましょう。最もよく引き合いに出されるのが、テレビのリモコンです。テレビのリモコンは、薄型テレビになってますます多くのボタンがリモコンについており、結局全てのボタンの機能について熟知しているユーザーはほとんどいないのではないかと思います。

一方、UIが少なければどうなるでしょうか。iOSに標準で付いてくる "写真アプリ" は "ゼロUI" の典型のようなアプリですが、フリック操作などの直感的な操作だけでユーザーは写真を見たり整理したりすることができます。説明書がなくとも、少し触っただけで使い方がすぐにわかってしまうのです。

このように、UIの数がゼロに近くなればなるほど、直感的で単純な動作でアプリを操作することができるようになります。
  

2. より生活に溶け込む

UIの数が多過ぎると、実際にアプリを使わなくなってしまうことが多くなってしまうと言います。一方で、UIの少ないアプリは、余分な操作がいらないので、生活に溶け込みやすくなります。

例えば、Googleマップのようなアプリは、検索窓やフローティングアクションボタンのようなUI以外は余分なUIを置いていません。これによって、ユーザーアプリを立ち上げればすぐに何をすればいいかがわかるようになり、生活の中でもスムーズにアプリを使うことができるようになります。
  

3. 最終的には操作が不要になる

最終的には、UIがなくなれば、操作自体が不要になるかもしれません。

iOS標準の「天気アプリ」や「Siri」のような音声アシスタントはその典型です。アプリを開くだけで天気を確認したり、Siriでは指を使った操作が不要になります。

Apple Watch上でのUberアプリも非常にシンプルです。アプリを立ち上げて、車を呼ぶだけ。
UIが少なければ少ないほど機能が抑えられるように見えますが、かえってユーザーはそのほうが使いやすかったりするものです。
  

まとめ

ゼロUIという言葉を考える時に、デザイナーにとってはこれまでやってきたこととは真逆のことを考えなければならなくなるかもしれません。

デザイナーはこれまで「アプリをどのように見せるか」にばかり時間を取られていましたが、そうではなく、如何にしてUIなしで機能的にするかをゼロUI的デザインによって考える必要が出てくるからです。ただし、UIはないとしても、根本的なUXデザインの考え方(より良いUXを追求するという考え方)ではこれまでどおりとも言うことができます。

より直感的で、UIを意識しなくとも使えるデザインは"果たしてどんなデザインなのか" 、自分の開発しているサービスに当てはめて考えてみてはいかがでしょうか。