老若男女問わず日常的に携帯するスマートフォン。スマートフォンの機能を拡張するアプリはゲーム以外の用途でも多く利用されるようになり、企業にとって顧客と直接つながる重要な接点になりました。売り上げアップの施策としてもアプリは大いに効果を発揮しており、マーケティング施策の手段に欠かせない存在になりつつあります。

販促目的のアプリは会員証やポイントカード、クーポン発行などの用途で活用されることが多いものの、来店促進目的以外にもおもしろい活用方法でユーザーの人気を集めているアプリも増えてきました。ニーズを捉え、マーケティング活動にうまく生かしているアプリの事例をご紹介します。

WEAR

スクリーンショット 2019-12-23 14.32.27.png

画像引用:
ファッションコーディネートアプリWEARについて - WEAR

アイテムの着こなしが探せるファッションコーディネートアプリ「WEAR」は、リリースからわずか5か月で200万ダウンロードを突破した人気アプリです。コーディネート数は900万枚以上あり、気になるコーディネートを保存してまとめることも可能です。

このWEARは、ファッションECモールZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZOが提供しており、ユーザーは気になったコーディネートから、そのままZOZOTOWNでモデルが着用しているアイテムを購入できます。
これだけ驚異的な人気を出せたのは、インフルエンサーの求心力と生活者の高いニーズがあったからでしょう。「WEAR」にはインフルエンサーやインスタグラマーなど多くの著名人が自身のコーディネートを投稿していて、好きなモデルをフォローしてファッションを真似たり、気に入ったファッションアイテムをその場で購入したりできるので、ファッション好きのユーザーからファッションに詳しくないユーザーまで活用できます。

ファッションは「買ったものの上手な着こなし方がわからない」「何を買っていいかわからない」など迷うポイントが多く、有名人ユーザーのコーディネートをまとめてチェックできる「WEAR」はこうした悩みを解決する存在です。タンスに眠っていた洋服のおしゃれな着こなし方を探したり、好みに合うコーディネートを探して洋服を新調したりとさまざまな活用ができます。

急上昇ワードも紹介されていて、ファッション雑誌に頼らずとも最新のトレンドも把握できる点も強みです。ユーザーに欲しい情報を届けることで集客し、ワンストップで購入まで誘導できる仕組みによってコンバージョンを高めている優秀なマーケティングアプリだと言えるでしょう。

Nike Run Club

スクリーンショット 2019-12-23 14.34.35.png
画像引用:
Nike Run Clubアプリ. Nike.com (JP)

SNSにランニング記録をアップする「ランスタグラマー」も誕生し、ランニングがひとつのトレンドとなった今、ナイキのランニングアプリ「Nike Run Club」が注目を集めています。「Nike Run Club」はランニング初心者向けのアプリで、ランニングを継続しやすくなる仕掛けがたくさん入っています。

さまざまなランニングメニューがあり、時間や距離が計測できるので成長を実感しやすくランニングのモチベーションを維持できます。1キロあたりのペースがわかり、ランニングの質も向上。アップルウォッチと連携すれば心拍数の測定も可能です。走るとトロフィーが与えられ、達成感を得られるのもポイント。

ブランディングを行うには、ユーザーの生活のなかで心地いい体験を与える必要があります。ランニングを習慣にし、その都度ナイキのアプリを活用することで、自然とブランドへの親近感が高まっていきファン化へとつなげられるでしょう。ユーザーファーストのアプリで満足度が高い体験を提供すればブランドへの好感度が高まっていき、ロイヤル顧客を生み出せます。

特茶スマートアプリ

スクリーンショット 2019-12-23 14.35.36.png

画像引用:
特茶スマートアプリ - 体脂肪を減らすのを助ける - 伊右衛門 特茶 サントリー

サントリーホールディングス株式会社が提供する「特茶スマートアプリ」は健康促進アプリです。サントリーの飲料「伊右衛門特茶」の関連アプリで、運動や食事、そして特茶の飲料記録を「生活ログ」として蓄積可能です。食事アドバイスもあり、日常生活を管理することにより健康意識を高められます。

毎日生活記録して特茶との接点を継続的に設けることで、特茶の継続購入につなげていきます。特茶の飲用や歩数の達成によりポイントが貯まり、ポイントを使ってさまざまなキャンペーンに参加してお得な体験ができるのが売り。こうしたポイントも特茶購入の導線として機能しています。

ユーザーの特茶購入目的が健康促進であるため、健康促進アプリは当然ユーザーとの親和性が高く、ニーズにマッチしたアプリ。ダイエット目的での利用者が多く、一時的な飲用に留まらず日常的に特茶を飲むヘビーユーザーの創出に貢献します。日常生活で活用できるアプリにして、継続的な接点として機能させている好事例です。リピーター重視の商品は、日常生活に溶けこむアプリが適しているでしょう、

YAMAP

スクリーンショット 2019-12-23 14.36.30.png

画像引用:
YAMAP / ヤマップ | あたらしい山をつくろう。
登山GPSアプリ「YAMAP」は、2018年に12億円の調達を達成したシェア1位の登山アプリで、ダウンロード数は150万を突破。スマートフォンで携帯の電話が届かない山中でも現在地を確認できるのが強みです。登山の過程を記録でき、登山地図や全国の山の情報もチェックできます。

情報を共有できる点もポイントで、山好きなユーザー同士のコミュニケーションツールとしても活用でき、コミュニティビジネスを実現しました。このアプリを提供する株式会社ヤマップは、登山関連商品の販売に着手。登山靴用インソールの販売や、登山に関する損害保険代理業も行っています。すでにある商品の販促としてアプリを開発したのではなく、アプリを開発してからユーザーにマッチする商品を開発したのです。

顧客と直接つながるダイレクトマーケティングは、訴求力の高さが魅力です。もともとアウトドア企業ではなかったものの、登山ブランドのなかで着実な地位を築きました。これから新規参入する場合、アプリをフックにダイレクトマーケティングを行うのもひとつの方法です。

キャスティング

ワールドスポーツが運営する大型釣具店「キャスティング」のアプリは、一般的な会員証など既存顧客向けの機能を搭載していますが、バーコードスキャナーで販促力を高めています。アプリのトップにバーコードスキャナーを配置し、お店で値札のバーコードを読み取ると商品の使い方を動画で見られるのです。

専門知識を人に依存することなく、顧客へ伝えられるため、人的コストを削減しながら高い接客力を維持しやすくなり、機会損失を防げます。

顧客の背中をもう一押しする販促ツールを探しているなら、アプリに商品情報を多く搭載するのもおすすめです。接客の効率化も促せるでしょう。

Amazon ショッピングアプリ

スクリーンショット 2019-12-23 14.42.03.png

画像引用:
Amazon.co.jp: バーチャルメイク: ビューティー

Amazonもアプリで新しい取り組みを行っています。それが「バーチャルメイク」。「Eコマースでもコスメを試したい」というユーザーのインサイトを捉え、スマートフォンのカメラで撮影した動画や自撮り写真、あるいは自分以外のモデル写真などを活用して、該当のメイクアイテムを活用したメイクアップ写真をイメージ画像として生成できます。本来であれば店舗で試さなければならないタッチアップ(試用)をバーチャルで完了できるため、地域ユーザーや多忙なユーザーの購入ハードルが下がり、販促に貢献します。

日本ロレアル、資生堂、カネボウ、コーセー、花王などの約20ブランドが販売する約900以上のリップアイテムが「バーチャルメイク」に対応していて、Eコマースサイトにおける化粧品販売を加速させると思われます。また、Amazonは化粧品会社に顧客の購買行動やレビューなどの情報を提供しており、Amazonを通じた購入が顧客の情報収集に直結して今後の施策に反映できるため、化粧品メーカーにとっても大きなメリットがあります。

化粧品のように実際の使用感が重要な商品に関しては、アプリでトライアル体験を提供し、購入ハードルを下げてはいかがでしょうか。

ダイレクトマーケティングにはアプリが必須に

デジタル化によって顧客と直接的つながるハードルが一気に下がり、ダイレクトマーケティングが重要視されるようになった今、ダイレクトマーケティングの有用な手段であるアプリの重要性も増しています。多くの顧客との接点を持ち、さらにデータ収集によって提案力向上にも貢献するアプリを積極的に活用し、マーケティング施策に取り入れましょう。