「地域創生」や「町おこし」という言葉を耳にすることが多くなりました。地域の伝統を継承し発展させる取り組みで、日本各地で行われています。

そのような伝統に対する取り組みの中で、「漆塗りを施したタンブラー」「鉄器を加工した炊飯器」など、「伝統工芸」と「現代の商品」のコラボレーションが盛んに行われています。特に、日常生活で利用する機会の多い商品に活用されています。

今回は、日本の「伝統工芸」が活用されているコラボレーション商品の事例を7種類まとめました。
職人の加工技術がどのような商品に活かせるのか事例ごとに紹介するので、商品開発の参考にしてみましょう。

「伝統工芸」の技術はどんな商品に活用できるのか

「伝統工芸」には、「塗り」や「染め」、「鍛造」など商品によって様々な技術が用いられています。そして、地域ごとに独自の発展を遂げているのが特徴です。

伝統工芸品と聞くと「地域性の強い商品」という印象を受けますが、実はそこで培われた「技術」や「素材」は汎用性が高く、様々な日用品や雑貨に活用されています。

伝統工芸品の需要の低迷や、高齢化による職人の後継者不足が懸念される中、「技術」や「素材」を現代で身近な商品に活用することで「地域おこし」を試みる活動が行われています。

次に、伝統工芸品の専門店や職人と既存のメーカーと取り組みの事例をご紹介します。

参考:
伝統文化を活かした地域おこしに向けて(概要)|文化庁
伝統文化を活かした地域おこしの視点と実践(報告)|文化庁

伝統工芸とコラボレーションした商品事例

1.【サービス終了】漆器×3Dプリンタ

tradition-goods_-_1.jpg

urushi - rinkak

3Dプリンターを使用して作った商品の販売・購入が行えるマーケットプレイス「rinkak」と「漆職人」のコラボレーションによって生まれたブランドが「urushi」です。最新の「テクノロジー」と「伝統技法」の融合がコンセプトになっています。

3Dプリンターで出力した「タンブラー」や「器」に漆職人によって「蒔絵」が描かれているのが特徴です。
3Dプリンターは、人が手作業で作るには難しいデザインができます。それに対し、漆塗りは職人が一つ一つ手作業で制作するため1点ごとにデザインが異なり、機械にはない個性を出せます。互いのメリットを活かし、デメリットを補い合った事例と言えるでしょう。

2.茶筒×スピーカー

tradition-goods_-_2.jpg

京都の伝統工芸を後継する職人たちのプロジェクトユニット「GO ON」と大手家電メーカーのパナソニックがコラボレーションするプロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトでは、茶筒や焼物、木工芸などの伝統工芸と家電がコラボレーションしています。

たとえば、京都の老舗茶筒メーカー「開化堂」の茶筒とスピーカーを組み合わせた「響筒(kyo-zutsu)」が非常にユニークです。茶筒の中にスピーカーユニットが組み込まれており、精密に作られた金属製の茶筒から一般的なスピーカーとは異なる音の響き方をするのが特徴です。全く異なる商品同士を組み合わせることで、新しい価値観が生み出された事例と言えるでしょう。

3.南部鉄器×炊飯ジャー

tradition-goods_-_3.jpg

南部鉄器 極め羽釜 - 象印マホービン

炊飯ジャーやポットなど家庭向け家電を手がける象印マホービンと南部鉄器の技術がコラボレーションした商品が「南部鉄器 極め羽釜」です。岩手県の伝統工芸である「南部鉄器」で炊くご飯の味を、炊飯ジャーで気軽に再現できるのが特徴です。

一般的な炊飯ジャーの内釜は、ご飯の仕上がりを均一的にするため様々な素材を組み合わせて作られています。便利である一方で、味が単調になりがちという側面もあります。そこで、南部鉄器 極め羽釜では純粋な鉄だけで作られた南部鉄器を内釜に用いることで、「かまど」で炊いたような味を再現しています。
現代にある便利な家電に伝統技術の製法を組み合わせることで相乗効果を生み出した事例です。

4.藍染×スニーカー

tradition-goods_-_4.jpg

SUKUMO Leather Sneakers

「SUKUMO Leather Sneakers」は、スクモレザーという「藍染の革」とスニーカーがコラボレーションした商品です。「ジャパンブルー」と呼ばれることもある「藍染」は着物や手ぬぐいなど日本の伝統品に用いられています。

その独特の色合いをスニーカーに用いているのが特徴です。藍染は天然染料なので、一般的な化学染料とは仕上がりが変化します。また、使用するほどに色の抜け方など「個性」がでてくるという特性を持っています。着物などで使われた「染め」という技術を通じて、日本の伝統を異なる形でスニーカーへ活用した事例です。

5.鯖江眼鏡×アクセサリー

tradition-goods_-_5.jpg

KISSO(キッソオ)

眼鏡の産地である福井県の鯖江市にある眼鏡の材料商社であるキッソオが手がけるアクセサリーブランドが「KISSO(キッソオ)」です。
もともと眼鏡を専門に取り扱う商社ですが、そこで培った素材の活かし方、加工法を活かして、眼鏡以外の新しいものづくりを試みた背景があります。

ピアスやブレスレットなどが販売されており、これらの加工は鯖江の眼鏡職人が全て手作業で行っており、すべて鯖江で作られているのが特徴です。
眼鏡の製造という地場産業が持つ地域の強みを活かし、新たな商品を作った事例と言えるでしょう。

6.津軽塗×スマホカバー

tradition-goods_-_6.jpg

青森県の伝統工芸である「津軽塗」の老舗専門店である小林漆器は、津軽塗の技術を用いて様々な日用品や雑貨を手がけています。
その代表作が「スマホカバー」です。「研ぎ出し変わり塗り」という津軽塗ならではの職人技術が使われています。

「塗り」という技術の汎用性の高さから、スマホカバー、オートバイ、家具やアクセサリーと現代にある様々なものとのコラボレーションを行っているのが特徴です。
津軽塗の伝統の継承や地域の活性化という目的のもと、伝統技術を活用した事例です。

7.【取り扱い終了】越前打刃物×レターオープナー

tradition-goods_-_7.jpg

レターオープナー - 龍泉刃物

福井の刃物製造を行う龍泉刃物は、「越前打刃物」という越前地方に根付く鍛造技術を用いて様々な刃物製品を手がけています。
包丁やナイフなど一般的な刃物製品の他、「レターオープナー」という手紙を開封する雑貨を製造しているのが特徴です。

越前打刃物の鋭い切れ味を活かしながら、安全に使えるレターオープナーというのをコンセプトで製造されています。また、越前の伝統工芸である「越前漆器」の本漆塗りを採用した「地域性」を押し出した製品もあります。レターオープナーはヨーロッパで生まれた刃物製品の雑貨ですが、日本の技術と素材とコラボレーションすることで、精密さや質感を向上させた事例です。

まとめ

日本各地にある伝統工芸は、かつてと異なる形で活用されていることがわかりました。
刃物の鍛造技術や、染や塗といった技術は量産できない一点物としての魅力があります。

伝統工芸が持つ「独自の魅力」と日用品などの商品が融合すると、「伝統」は身近な存在になるでしょう。

近年では、「ふるさと納税」など地域おこしを支援する制度を活用して、様々なコラボ商品が販売されています。

この取り組みは「伝統の継承」や「地域おこし」という意味合いだけでなく、メーカーにとっても新しい商品を作るキッカケにもなります。
ぜひ商品開発の参考にしてみてはいかがでしょうか。