アイデアが浮かばない時は「なぜ」を繰り返そう!「クエスチョンストーミング」の実践方法を解説
デザインの試作品を作る(プロトタイピングする)際に、こういう機能をつけたい、ああいうボタンがいい、というさまざまな意見がチーム内で出るでしょう。
しかし、長時間議論をしていると、アイデアが煮詰まってきたり、似通ったアイデアばかりが出てきたりしてしまい、クリエイティブな発想に乏しくなってしまう場合があります。
そこでブレインストーミングをやってみても、創造的にゼロからアイデアを生み出さなければならないというプレッシャーにかられ、結果的に実現不可能なアイデアばかりが残ってしまう場合もあります。
そこで、ブレインストーミングがアイデア自体ではなく、「質問」を生み出すように進行されたらどうでしょうか。
問題に対して適切な「質問」を見つけることで、より深い分析を行うきっかけとなったり、問題の本質を理解するきっけかとなったりすることがあります。
今回は、アイデアが煮詰まったときに使える、*「クエスチョンフォーカス」なブレスト(クエスチョンストーミング)*の基本的な考え方や実践方法をご紹介します。
アイデアを量産する「ブレインストーミング」
※ Source: Pexels.com
ブレインストーミングは、アメリカの広告マンだったアレックス・オズボーン氏が考案したとされる会議方式の一つで、グループでアイデアを出し合う事によって、メンバーによる相互の連鎖反応や発想の誘発を期待する会議技法です。
一般的に、ブレインストーミングでは*「判断や結論を出してはいけない」「どんなに奇抜で斬新、あるいは粗野な考えでも歓迎する」「質よりも量を重視する」「アイデアをくっつけたり展開したりする」*という4つの原則があります。
これらの決まりごとをチームメンバーと共有しておくことで、良いアイデアを生み出すための下地が出来上がります。
質問を量産する「クエスチョンストーミング」
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アイデアを量産することができるブレインストーミングであっても、途中でアイデアが煮詰まったり、似たようなアイデアばかりで止まってしまったり、あるいは本質的な問題が見えてこない場合があります。
そうした状況を打開していくアプローチとして注目を浴びているのが、クエスチョンフォーカスなブレインストーミング(クエスチョンストーミング)です。
クエスチョンフォーカスなブレインストーミングでは、「アイデア」そのものではなく、*そのアイデアの前提である「質問」*を量産していきます。
『トヨタ アズ ナンバーワン』の著者としても知られるビジネスコンサルタントのマシュー・メイ氏の新刊『Winning the Brain Game: Fixing the 7 Fatal Flaws of Thinking』では、著者が*「フレームシンキング」*と呼んでいるクエスチョンフォーカスなブレインストーミングのやり方が紹介されています。
「フレームシンキング」と呼んでいるのは、「質問」を量産することによって、思考の枠組み(フレーム)を設定する手助けをするからです。
これは、スタンフォード大学教授のティナ・シーリヒ氏の*「質問とは、解答を落とし込む枠組みである」*(Questions are the frames into which the answers fall.)という言葉から借用したものと言われています。
メイ氏は、およそ10年にわたるクライアントとのフレームシンキングの結果、斬新な考え方をするのに従来のブレインストーミングよりもフレームシンキングのほうが効果的であると言います。
また、MITリーダーシップセンターの所長であるハル・グレジャーセン氏も、同じく*「クエスチョンストーミング」が効果的であると紹介しています。
一方、20年以上もクエスチョンフォーカスな方法について研究してきたアメリカのNGO団体RQI(Right Question Institute)は、「問題提起技法」*と呼ばれる方法を特許化し、学校などの公共機関はもちろん、マイクロソフトを始めとする企業でのアイデア出しのために使われていると言われています。
クエスチョンストーミングとブレインストーミングの違い
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多くの機関や企業で「質問」を量産するためのブレインストーミングを取り入れていることは分かりましたが、果たしてどのようにすればいいのでしょうか。
それを考えるにあたり、まず従来のブレインストーミングとクエスチョンストーミングの違いを考えるとよく分かります。
どちらも、量を重視することには変わりないのですが、クエスチョンストーミングでは「質問」を限りなく生み出していくので、問題を深掘りし、思い込みを克服することができます。
例えば、デザインの現場でオンボーディングがうまくいかないアプリ開発の現場にいるとしましょう。
そうした場合、以下のような「質問」がクエスチョンストーミングによって浮き彫りになります。
「何が問題なのか」
「なぜその問題は存在するのか」
「どのようにしたらその問題は解決するのか」
「その問題を解決することで誰にメリットがあるのか」
「その問題はデザイン全体にどのような影響を及ぼすか」
「ユーザーにとってどれくらい重要な問題なのか」
「どうすれば再発しないか」
クエスチョンストーミングでは、普段はチームメンバーが聞かないような(あるいは「聞いてはいけない」ことが暗黙の了解となっている)質問が出てくることもあります(たとえば「そもそもこのボタンはいるのか?」「なぜこれに最優先で取り組む必要があるのか」など)。
しかし、ブレインストーミングでアイデアの質や大小にこだわらないという前提があるように、クエスチョンストーミングでもすべての質問を歓迎し、制限を取っ払うことで、普段見えなかった問題が見えてくるのです。
ブレインストーミングでは、アイデアがなかなか出ない瞬間に立ち会いますが、クエスチョンストーミングは基本的に*「5W1H」*を組み合わせればいいので、ブレインストーミング以上にたくさんのレスポンスが返ってきます。
マイクロソフトで問題提起技法を指揮しているクリスティー・ショフナー氏がCO.DESIGNでのインタビューの中で述べたように、アイデア以上にたくさんの質問が思い浮かぶだけでなく、「みなが驚くようなアイデアを出さなければならない」というプレッシャーを感じることがなくなります。
クエスチョンストーミングの5ステップ
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以下より、*「問題提起技法」*によるクエスチョンストーミングの5つのステップについて確認していきましょう。
1. 「質問」にフォーカスする
例えば、業界の進むべき方向性に不安を感じていたり、今やっている事業に意義を感じていないなど、メンバーが感じていることでメンバー1人では一見解決できないような「大きすぎる」問題であったとしても、「質問化」するのが重要です。
その際、短い形で、複数の問題を「質問化」してみてください。
「ユーザーの30%は会員登録後ログインせずボーディングオフしてしまう」という問題も「なぜ」「どのように」などさまざまなアプローチで問題提起をすることができます。
2. 「質問」を作る
4人から6人程度のグループを1つの単位にして、すべてのユーザーが自由に「質問」を書き出せるように準備します。
書き出しの際、「編集」や「話し合い」は不要です。
10分ほどの時間制限を設けて、少なくとも20個は質問を出していきます。
3. 「質問」を磨く
質問が書き出せたら、グループ内で出た「質問」を磨いていきます。
例えば、「はい」「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンは、「5W1H」に書き直せる場合には質問を転換していきます。
4. 「質問」を並び替える
各チームはそれぞれに全体で共有したい質問を、話し合いや多数決によって、3つか4つ選び出します。
どの質問が「最もよい」質問なのかは、そのときのチームの状況によっても変わってくるでしょう。
5. 「次にやること」を決める
ブレインストーミングでは「次に何をやるか」を決めるのにもういくつかのステップを踏まなければなりませんが、クエスチョンストーミングならすぐに行動に移すことができます。
質問を解決するためのアクションプランを決め、次に「何を」「誰が」「いつまでに」「どのように」やるのかを決めましょう。
まとめ
クエスチョンストーミングはMicrosoftやAmazonといった企業でも取り入れられており、普段は見えてこない問題を明らかにするのに役立ちます。
とりわけ、見た目だけでなくユーザー体験を重視したUXデザインの現場では、問題を定義して解決していくプロセスがあるかないかでサービスやアプリケーションの完成度や完成速度も大きく変わってくるでしょう。
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- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
- UX
- UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を意味します。似たような言葉に、UI(ユーザーインターフェイス、User Interface)がありますが、こちらはユーザーと製品・サービスの接触面を指した言葉です。
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- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
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