国内のスマートフォン普及率が70%を超えていよいよ「個人の時代」となった今、Webマーケティングの世界では「カスタマイゼーション」や「パーソナライゼーション」に言及される機会が増えています。

カスタマイゼーションとパーソナライゼーションは、同じことを指しているように思えるかもしれません。
しかし、この2つには明確な違いがあります。
「ユーザーの興味を引く」という目的は共通しているのですが、この目的に到達するまでの道のりが異なります。

今回は、「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」の違いを、具体的な事例と合わせてご紹介します。
UXデザインが声高に叫ばれる現代において、これらの違いをしっかりと理解し、次の一手に繋げていきましょう。

カスタマイゼーションとは?

カスタマイゼーションを定義するとすれば、*「ユーザーによって行われる」*ものです。
設定画面をユーザーの好みの状態にできたり、レイアウトコンテンツ、機能などを調整したりできるのがカスタマイゼーションです。

例えばFacebookの設定画面では、旧姓やニックネームを表示したり、自分自身の詳細なプロフィールを設定したりすることができますが、これらはすべてカスタマイゼーションに当てはまります。

カスタマイゼーションによってユーザー体験が快適になる理由は、ユーザーが自分のインタラクションをコントロールできるからです。
それぞれのユーザーは、自分が望む通りの挙動をシステムに求めることができます。

裏を返せば、ユーザーが自分自身の理想の状態やニーズを理解している場合には、カスタマイゼーションはうまく働きます。
その意味で言えば、AIによる操作とは違って、あくまでもユーザーの意思に依存していると言えるでしょう。

カスタマイゼーションはさまざまなアプリケーションやサービスで見ることができますが、最も分かりやすいのはiOSの「設定」アプリでしょう。
アプリごとに通知を許可・禁止したり、キーボードを任意の形に変えたりして、ユーザーが使いやすいように挙動を設定していきます。

また、Facebookのフィード画面では、自分が閲覧したくないような投稿は「投稿を隠す」といったメニューで隠すことができます。
同じく、人やページ別に通知を許可したり、禁止したりして自分の操作しやすい環境を作ることができます。

パーソナライゼーション

パーソナライゼーションとは、カスタマイゼーションとは違って*「使っているアプリケーションによって行われる」*ものです。
アプリケーションやサービス側で、ユーザーの好みに合わせたコンテンツや経験、機能を提供しようとします。

最も身近な例で言えば、Amazonの「あなたへのおすすめ」というリコメンデーションでしょう。
Amazon側では、購入履歴や閲覧履歴に基づいてどのような本がユーザーの好みに合いそうかを学習し、パーソナライズし、ユーザーが購入しやすいように提案してくれます。
このようにパーソナライゼーションを行うと、カスタマーの利便性が増すだけでなく、カスタマーのエンゲージメントやロイヤリティも上がります。

パーソナライゼーションを行うことで、ユーザーとの結びつきがますます強まるので、パーソナライズ部分が小さいとしても、全体のシステムに統合しやすくなります。パーソナライゼーションの最終的なゴールは、ユーザーがほとんど(あるいはまったく)労力をかけずにユーザーの好みやニーズに合わせたコンテンツや機能を提供することです。

アプリには一人ひとりのユーザーをよく分析し、その分析に基づいたインターフェイスに変化していくことが求められます。

パーソナライゼーションの例としてよく引き合いに出されるのが、Googleの提供しているAdSense広告です。
この広告はパーソナライズド広告とも言われ、ユーザーが過去に検索した結果をもとにユーザーの好みに合いそうな広告を表示するようにシステム側が適切な広告を選んでいます。

また、Netflixが過去の閲覧履歴を元に表示している「あなたへのおすすめ」もまたパーソナライゼーションのひとつです。
実際に、全視聴のおよそ75%がパーソナライズされたおすすめで視聴選択をしたものだと言います。

Googleマップアプリで検索をするときに、近くにいる場所を元に好ましい検索結果を提案してくれるのも、「ロケーションベース」のパーソナライゼーションということもできます。