広告配信やコンテンツ制作において、ユーザーの好みや属性などインサイトを探るために様々な方法やツールがあります。

そのようなツールでは、ユーザーが訪れたページや滞在時間、性別や年齢の傾向から好みを推測することができますが、個別の好みを特定するには限界がありました。

そこで近年、ユーザーの好みの特定という課題を解決すべく、解析ツールとしてのAI(人工知能)活用の取り組みが進められています。その1つが「感情AI」というユーザーの表情や声から「感情」を読み取れるAIです。

感情AIはAIのディープラーニング技術を利用し、人間の表情や声の特徴を学習させることで「喜怒哀楽」や「好き嫌い」のような感情を数値化して分析できます。

今回は、感情を分析できるAIについての解説と、実際に企業で活用されている事例をご紹介します。
  

感情AIとは?

表情・声・文章から感情を分析できる

「感情AI」とは、人間の表情や声、文章から感情を分析できるAIです。感情AIが普及することで、今まで定性的な判断に頼っていた感情を数値化することができ、インサイトを詳細に分析することが可能となります。

具体的には、カメラやマイクを用いてAIに、表情、声、文章を学習させます。老若男女様々な人間のデータをもとに、「微表情学」などの心理学理論を用いて感情を推定・分析できる仕組みです。
  

感情AIを活用するメリット

感情AIを企業が活用することで、ユーザーのインサイトを詳細に分析できるようになります。推定に頼っていた面もデータ化できるため、分析精度の向上が期待できるでしょう。

また、ロボットに感情AIを実装することで、話しかけた人間の感情に合わせて応答できるのもメリットです。対話型ロボットによるコンシェルジュサービスやカスタマーサポートに活用することで、人間に近いコミュニケーションが可能になります。
  

プライバシーにおける課題

カメラやマイクを用いて表情や声のデータを収集します。これは個人を特定できる「個人情報」であることから、データを収集する際の配慮が必要です。

データを匿名化し、セキュリティ対策を行うなど、プライバシー保護を十分に行うことが普及への課題となるでしょう。
  

感情を分析するAIの活用事例5選

ここからは、現在公表されている感情AIの活用事例をご紹介します。

広告配信からカスタマーサポートまで様々なビジネスへの活用が進められているため、Web担当者の方はぜひ参考にしてみましょう。
  

1. 広告配信システムでの活用

1つ目が「広告配信システム」での活用です。カメラで認識した表情から感情を分析し、「その人が求めている広告」を表示させる仕組みです。

博報堂の自社開発プロジェクト「スダラボ」と博報堂アイ・スタジオ、日本マイクロソフトが共同で「Face Targeting AD(フェイスターゲティング・アド)」という感情AIを活用したプロダクトを開発しました。

街頭のデジタルサイネージ広告に利用でき、広告の前に立つ人の「顔の特徴」と「感情」を認識し、自動的に広告が配信されるプロダクトです。

参考:
Face Targeting AD|スダラボ
  

2. 動画コンテンツ視聴者のエンゲージメント調査に活用

テレビ番組や映画など、動画コンテンツでのエンゲージメント調査にも活用されています。コンテンツの放映中に、「どのシーン」で「どのような感情」になるのかを分析する仕組みです。

アメリカ最大の放送局「CBS」では、Affdexという感情認識ソフトを活用し、「視聴者が盛り上がるシーン」などのリサーチを行いました。コンテンツ視聴中のインサイトを分析することで、最も効果の高いタイミングでのCM放映が可能になります。

参考:
CBS社 エンゲージメント事例|Affdex
  

3. カスタマーサポートでの活用

カスタマーサポートでも感情AIの技術が活用され始めています。声のトーンやスピードを分析し、数値化することで顧客の感情を可視化するという活用法です。

コールセンターの運営事業を手がけるCENTRIC株式会社は、声の感情解析に特化したAI「LVAS-CC」を導入しました。顧客のサービスに対する悩みや不満などを声から解析するこで、齟齬を防ぐ役割があります。企業と顧客のコミュニケーションを円滑にすることで、離反防止や売上向上につながるでしょう。

参考:
国内初、AI活用の感情解析システムをコールセンターに導入顧客の感情起伏を分析~AI活用でコールセンターの働き方改革を推進~|CENTRIC株式会社のプレスリリース
  

4. 社員アンケートなど文字情報の感情分析に活用

文字から感情を分析できるAIは、企業の人材管理に活用され始めています。従業員から文章データを集め、そこに記載されている文章から従業員の感情を分析するものです。

アメリカの企業 Kanjoya Inc.が開発した文字解析ソフト「Kanjoya」は、企業の人材管理に利用されている感情AIがあります。これは、従業員からアンケート回答を集め、文章データから感情を分析し、モチベーション管理に役立てるという仕組みです。

参考:
Kanjoya
社員の本音を聞き出す新ツールが続々登場 〜 人材資源管理の新たな方法に|U.S.FrontLine
  

5.対話型ロボットでの活用

人とコミュニケーションを行う対話型ロボットにも、感情AIが実装され始めています。人間に話しかけられた際、表情や声のトーンを分析し、それに応じた振る舞いを行うものです。

この技術は、ソフトバンクロボティクスが開発・販売を行う「Pepper」に搭載されています。Pepperの頭部に4つの指向性マイク、顔に3DカメラとHDカメラが搭載されており、対話相手を識別できる仕組みです。実店舗や宿泊施設のコンシェルジュサービスなどで活用されています。

参考:
Pepperの仕組み|Pepper Developer Portal
  

まとめ

感情AIは、すでに広告業界やカスタマーサポートでの活用、対話型ロボットへの実装が行われています。開発途上の技術ということもあり、今後の普及が期待される技術です。

感情を分析することで、コンテンツの"どの部分を好み" "どの部分を嫌うのか"というような詳細な検証できます。今回は、ビジネスにおける活用事例を紹介しましたが、医療分野での活用も進められています。

個人の表情や声を分析することからプライバシー上の課題があるものの、感情AIが普及することで、コンテンツユーザーのミスマッチを削減できるほか、広告ならば成約率の向上なども見込めるでしょう。