BtoC向けネットショップや実店舗などで販売されている商品には「オープン価格」「メーカー希望小売価格」「定価」と様々な表記方法があります。また、セール時には「通常10,800円のところ80%OFFの2,160円で特化販売」のように割引前と割引後の価格が提示されるのが一般的です。

商品の価格表示にはいくつか種類があることはなんとなく知っているものの、それぞれの違いや仕組み、表示ルールは知らないという方もいるのではないでしょうか。
価格表示は「景品表示法」に従って行う必要があります。販売に携わる担当者であれば、そのルールは絶対に知っておかなければいけません。

今回は、「オープン価格」「メーカー希望小売価格」「定価」など価格表示の仕組みを解説します。
また、価格表示を行う際の注意点をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 「オープン価格」とは
    1. メリット
    2. デメリット
  2. 「メーカー希望小売価格」とは
    1. メリット
    2. デメリット
  3. 「定価」とは
  4. 価格表示をする際に確認すべきポイント
    1. 二重価格表示
    2. 有利誤認
  5. まとめ

「オープン価格」とは

オープン価格とは、メーカーが商品の価格を定めず、販売店に任せている価格表示を指します。価格の設定は販売店が行えるため、仕入れの「卸値」に「利益」と「仕入れコスト」を加えた価格で販売されています。

そのため、販売価格は一律ではなく販売店により様々です。また、定められた価格が無いため「◯%OFF」と値下げ価格の表示ができないという特徴があります。

メリット

オープン価格は、メーカーと販売店のそれぞれにメリットがあります。

メーカー側のメリットは、値下げ価格による「ブランドイメージ」を損ねないことです。販売される価格だけを表示するため「安売り」というイメージを消費者に感じさせないというメリットがあります。

販売店側のメリットは、先にも述べた通り価格設定を決められることです。利益率を考慮した上で、競合他社より安く販売価格を設定できます。
また、希少性の高い商品であれば、利益率を重視した価格設定ができるというメリットもあります。

デメリット

オープン価格は、メーカー側で価格が定められていないことによるデメリットもあります。
それは、販売の基準となる価格が無いことです。
そのため、販売価格の何%で仕入れる「掛け率」による交渉が難しくなります。交渉時には参考価格を用いることがほとんどです。

また、オープン価格は消費者にとってのデメリットもあります。それは、メーカー公式ホームページやカタログで価格がわからない点です。
価格を知りたければ、販売店のネットショップを確認するか店頭に問い合わせる必要があるので、消費者の手間が増えてしまいます。

「メーカー希望小売価格」とは

メーカー希望小売価格とは、メーカーが予め販売する価格を定められる価格表示を指します。オープン価格に対して、基本的に価格は一律で設定されるのが特徴です。「希望小売価格◯◯◯円から◯◯%OFF」という値下げ価格の表示ができます。

メリット

メーカー希望小売価格は、基準となる価格があるため値下げ価格を表示できることがメリットです。値下げ価格を表示が可能なため、限定セールや在庫処分セールで販売店は集客が行えます。

販売店が仕入れを行う際、メーカー希望小売価格を「上代」、卸値を「下代」として予め定められているため、仕入れを行う時「掛け率」による交渉を行いやすいというメリットもあります。

デメリット

メーカー希望小売価格は、販売店が値下げ価格を表示できるため価格競争に陥りやすいというデメリットがあります。
また、値下げ価格によってブランドイメージを損ねることもあり得るでしょう。

もう一つのデメリットとして、メーカー希望小売価格は原則定められた価格ですが、販売店によって任意に価格を変えられるため、“架空の価格”をセール表示する不当表示の恐れがあります。

これは、消費者庁が公開する「景品表示法の主な違反事例及び運用に係る主なガイドライン等について」から違反事例を参照できます。

参考:
景品表示法の主な違反事例及び運用に係る主なガイドライン等について(消費者庁)

「定価」とは

「定価」とは、メーカーが予め定めた販売価格を指します。書籍や雑誌、CDなど「再販制度」に該当する「割引が禁止される」商品に用いられます。

先に紹介した「メーカー希望小売価格」もメーカーが定めた価格であることから「定価」と言われます。しかし、「再販制度」の商品と混同するため、「再販制度」に該当しない商品は「定価」ではなく「メーカー希望小売価格」と呼ばれています。

価格表示をする際に確認すべきポイント

上記で紹介した「オープン価格」「メーカー希望小売価格」の「価格表示」を行う際、確認すべきポイントを解説します。

二重価格表示

1つ目が、「二重価格表示」です。これは、「価格10,800円のところ80%OFFで2,160円で販売します」というような、過去の販売価格を比較対象価格にすることを指します。

定められた価格から限定セールなどで割引する場合なども該当します。適正なセールの場合は問題ないですが、表示の種類によって景品表示法 第五条に抵触する恐れがあります。

景品表示法に抵触する「二重価格表示」とは、先に「メーカー希望小売価格」のデメリットで挙げた、架空の価格から割引することなどです。これは、消費者の誤認につながります。例えば、「通常価格3万円のところ、当店限定で1万5,000円で販売!」という割引表示を行う際、「架空の通常価格」を利用していた場合に該当します。

有利誤認

2つ目が、「有利誤認」です。 これは、価格や取引条件が「有利」だと誤認させることを指します。「二重価格表示」にも関連しており、「価格」「数量」「アフターサービス」「成分表示」などが該当します。

不当なセール価格はもちろん、アフターサービスやオプションの付帯を行う際も該当することがあるので注意が必要です。例えば、「損害補償に対応したノートパソコンを10万円でご提供します!」という表示を行う際、見えにくい箇所に「*損害補償はオプション料金が発生します」と記載するなどが有利誤認に該当します。

参考:
不当景品類及び不当表示防止法ガイドブック|消費者庁

まとめ

「オープン価格」は販売店が価格を設定でき、「メーカー希望小売価格」は、メーカーが予め価格を設定するという違いがあります。たとえば、オープン価格の場合、卸値のみ決められており、販売価格はショップが自由に価格を設定できるという仕組みです。

ただ、「オープン価格」はショップによって異なる価格設定ができるため、基準になる価格が曖昧になるというデメリットもあります。

また、販売価格を商品の価値から鑑みて明らかに「高く」設定し、セール価格で販売するのは、景品表示法にの二重価格表示のルールに抵触するため、絶対に行ってはいけません。

販売に携わる担当者であれば、価格設定の仕組みと法律を知り、健全な運営を行うようにしましょう。