伝説の芸妓、岩崎究香氏から学ぶ「祇園で得た人生の教訓」

上記では、岩崎究香氏が芸妓時代に実際に関わった方々から「昇る人」の共通点や特徴を明らかにしました。次に、岩崎究香氏が自分自身の経験から得た教訓をご紹介します。

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©️昇る人生の課外授業

岩崎究香氏がナンバーワンになったキッカケ

私は、もともと「ナンバーワン」になろうと思っていたわけではありませんでした。でも、毎日お稽古帰りにそのまま帰るのはもったいないと思ったので、営業をしていたんです。お茶屋さん(宴会をする場所)に「おはようさんどす、峰子どす。今日お座敷あったら声を掛けてください」と挨拶していました。今は違うかもしれませんが、当時は誰もそんな事していなかったんですよ。

そして、家に帰ったらお茶屋さんから置屋(舞妓たちが共同生活をする家)に電話がかかってくるんです。「ほんまに峰子さん空いたはんのどすか?」って。10分でも15分でも時間が空いてたら、お座敷に出てましたね。時間がなくても、ちょっとだけでも、ご挨拶に行く。これだけでも(周りの印象が)全然違いました。これは一年だけでもと決めて続けました。

宴会でも、お客さんを楽しませるために工夫を沢山していました。ご贔屓にしてくれはるお客さんやと、宴会で舞っても、ただ喋ってもつまらないですよね。なので、小咄やら“ちゃり舞”をして場を楽しませてました。どんな小咄をしたら楽しんでもらえるのかと考えるのも楽しかったんですよぉ。

すると、知らん内にナンバーワンになってたんです。なので、目指してた訳と違って、結果的になってたってことです。
  

「個性を消すお稽古」をすることで「本当の個性」が垣間見える

私がお稽古を通して学んだ「個性」についてもお話します。舞妓さんや芸妓さんの「お稽古」は舞踊や振る舞いのお稽古をするのですが、「個性を消すためのお稽古」でもあるんです。それは、流派ごとに“型”があるからです。それぞれ流派があって、お師匠さんやお母さん(置屋の女将)に言われたことは絶対に守らないといけない。

例えば、歌舞伎を観に行って「カッコええな」と感じても、それをお稽古に出したら「あきまへん!」って叱られます。かといって、何もしないと「何を見てきたんえ!」って叱られますけどね(笑)。でも、こうやってお稽古を通して「個性」を消していくんです。

そして面白いことに、流派の教えを守って“型”をしっかりと身に付けると、自然と個性が出てくるんです。素直に“型”を受け入れて毎日お稽古に励むと、本当の個性が見えてきます。なので、「個性を作る」なんてもってのほか、個性は自然に出てきます。
  

お稽古には「素直さ」が大切

芸事のお稽古を始めるのは、今ですと15歳くらいからになると思います。でも、私の時代はもっと小さなころからお稽古をしていました。なので、個性を消すことに苦労はなかったんです。

お師匠さんが教えて下さることはなんでも素直に受け入れることができました。15歳くらいの多感な時期だとまたちょっと感じ方も違うと思いますけれど、素直でいることが最も大切なことです。

舞妓さんや芸妓さんは、毎日お稽古をしてからお座敷に出る生活をしています。お稽古が全てなので余計なことを考える暇もないのです。お稽古が当たり前の暮らしなので、辛いとか逃げ出したいとか思うこともなく、純粋に楽しんでお稽古をしていました。
  

「日本の伝統を語る」ことの大切さ

近年、外国のお客さんが祇園にいらっしゃることも増えましたし、日本から海外へ行く方も多くなりました。そこで、外国の方々と交流することがありますよね。海外の方は母国の歴史を大切にしているので、日本の伝統や文化について質問されることがあると思います。その時、日本について語れますか?意外と難しいものですよね。

もし外国からいらっしゃるお客さんであれば、伝統的な町並みに触れてもらっても良いと思いますし、お座敷に案内しても良いと思います。でも、自分自身が日本の伝統文化を語れることが大切です。

そのためには、まずご自身のルーツを辿ってみてください。過去帳をみたり、代々受け継がれている物事などを親に聞いてみると良いでしょう。自然と歴史を振り返ることになるので、日本の伝統を知るキッカケにもなります。自分のルーツから語るのであれば、人に伝えることもできるでしょう?

このイベントも、伝統や文化に触れてほしいという想いがあります。楽しんでいただきながら、学んでいただければ良いなと思っています。