読書は、ビジネスにおいて現場では得られない知識を体系的に学ぶことができます。とはいえ、仕事の忙しさから「読書をする時間」をなかなか確保できないという方もいるのではないでしょうか。

忙しいと本を読むこと自体億劫に感じたり、焦って読むほど「目で文字を追うだけ」になり、中身が理解できずに流し読みしてしまうこともあるでしょう。もし、限られた時間の中でも読書から学びたいと考えているのなら、読み方を工夫してみることをオススメします。

今回は、効率的に本の内容を理解するための読書術について紹介します。読書に苦手意識のある方でも実践できるため、活用してみてはいかがでしょうか。

読書時間の捻出が難しいという課題

読書から得られる知識やスキルなど「メリット」はわかるものの、読書する機会が少ないという方が増えています。

読売新聞社が2016年10月に行った「郵送全国世論調査『読書週間』」によると、月間の読書冊数が1冊と回答した人が18%、*2冊と回答した人が17%*であるのに対し、*読まなかったと回答した人が46%*でした。

また、読まなかった理由に関して、「時間がなかったから」という回答が49%と、約半数の人が「読書時間」が捻出できず読まなかったことがわかります。また、本を読む理由として49%の人が「知識や教養を深めるため」と回答しており、読書によるメリットを感じています。

スマートフォンの普及や、Webメディア、アプリなど増加の影響もあり、読書に対して割り当てられる時間が減少していると推測できるでしょう。次に、読書に対するハードルを挙げている「時間」を短縮し、効率的に読書からスキルを得る方法について解説していきます。

参考:
「2016年10月 郵送全国世論調査『読書週間』」 : 特集 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
(2020年8月31日時点でページが存在しないためリンクを削除しました)

理解しながら読み進められる「効率的な読書」のポイント

熟読よりも短時間で、かつ効率的に本の内容を理解するためのポイントをご紹介します。

「目次」「あとがき」を丁寧に読む

効率的に読書を進める上で、最も簡単にできるのが「目次」と「あとがき」を重点的に読むことです。これは、「ライフハッカー[日本版]」で連載を持つ書評家 印南敦史氏が提唱する「フローリーディング」のノウハウの1つです。

印南氏は自身を「遅読家」と称しており、決して素早く読書ができるわけではなかったそうです。遅読家でありながら、効率的な読書をする方法として、目次とあとがきを読むことを挙げています。目次とあとがきには、本のアウトラインと全体像がまとめられています。本の全体像を掴むことで、なにを目的とした本なのかを理解しながら読み進められるでしょう。

参考:
遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣

マーカーやメモを活用する

読書は、1ページ目から最後まで読み終えると達成感を感じます。しかし、単に読み終えただけで、理解できた実感を持てなかったことはないでしょうか。それを解決する手段として活用できるのが、マーカーやメモの活用です。

ビジネス書に特化した読書術「レバレッジ・リーディング」を提唱する本田直之氏によると、書籍にマーカーとメモを直接書き込み、読了後もそのメモを読み直すことで理解が深まると述べています。

また、紙の書籍に直接書き込むことに抵抗を感じる方は、別紙にメモを取るのも良いでしょう。必ずしもマーカーとメモだけでなく、トニー・ブザンが提唱するマインドマップを活用するのも手段です。読み終ええた箇所に対して、自分の見解や本の要約を書き込むことで復習になるからです。

参考:
レバレッジ・リーディング
マインドマップ読書術

「速読」を意識せず自分のペースで読む

読書の効率化と聞くと、読了スピードを上げることを優先してしまいがちです。上述の「目次とあとがきを読む」「マーカーやメモを取る」のように「理解を深める」読み方を重視してみましょう。

当たり前のようですが、読書のゴールは最後まで読み終えることではなく、読んで知識やスキルを身につけることだからです。内容を理解しながら読み進めるためにも、様々な手法を用いつつも自分の読みやすいペースを保つことが大切です。

読んでいる箇所が難しいと感じたら「先に進む」

もし、呼んでいる書籍の文中に難しいと感じる箇所があれば、該当箇所を読み飛ばして先に進むというのも手段です。これは、決して流し読みをするというわけではなく、「理解できるところだけをセレクトしていく」ことを目的としています。

この手法は、教育学者の齋藤孝氏が提唱する読書術の1つです。斎藤氏によると、1冊から2割でも理解できれば十分で、その数を増やしていくことが大切と述べています。

また、読み飛ばしたとしても、その先で結論がわかることで「読み飛ばした箇所の意味」を理解しやすくなるというメリットもあります。1文字1文字を追うように読むのではなく、文章の構成や流れという大きな枠組みで読書をしてみましょう。

参考
大人のための読書の全技術

「既に知っているジャンル」の本を読む

読書に対する苦手意識を持っており、なかなか着手できずにいるのであれば、あえて「既に知っているジャンル」など、読みやすい本を手に取るのがオススメです。これは、ギリシャ哲学から科学書まであらゆるジャンルの書評を手がけるブロガー、読書猿氏が述べている手法です。読書に対する苦手意識の改善と、読書習慣を身につけるために効果的です。

参考:
読書の初心者に贈る、読むことの障害を取り除き書物へ誘う14の質問と答え 読書猿Classic: between / beyond readers

複数の書籍を平行して読む

読書にはルールがありません。1冊の本を読み始めたら終えるまで他の本を読まないという方もいるでしょう。しかし、あえて複数の書籍を平行して読むことで理解を深めることに繋がるのです。

例えば、マーケティングやセールスなど特定の分野について知識を身に着けたいのであれば、同じ分野の書籍を入門書から専門書を併せて読み進めます。書籍の専門性の違いはあれど共通点を見出すことができます。すると、その分野で最も重要なことが理解できるという仕組みです。これは、日本を代表する編集者 松岡正剛氏が提唱する「多読術」という読み方です。

また、あえて異なるジャンルの書籍を同時に読み進めるという方法もあります。これは、“特定の知識”を深めるためではなく、異なる分野の中にある“偶然性”から思いもよらない発想が得られることを目的としています。言語学者である外山滋比古氏の著書『乱読のセレンディピティ』で展開される方法です。

参考:
多読術
乱読のセレンディピティ