孫氏の兵法に、「彼を知り己を知れば、百戦危うからず。」という言葉があります。「敵のことを知り、自分のことを知れば恐れるものはない」という意味で、これはマーケティングにおいても同じことが言えます。顧客の課題、競合のサービス、自社の強みは何かを知ることは、今後の戦略を考える上でとても重要です。

その分析のための代表的なフレームワークが「3C分析」です。
今回は、実際の企業の事例も踏まえながら3C分析の基本と実践方法を解説します。

3C分析とは

3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の分析を指します。市場の中で競合と自社の特徴を整理することで自社の強みを認識し、今後の戦略に活かすためのフレームワークです。

それでは実際に、ファッションネットショップ「ZOZOTOWN」(株式会社スタートトゥデイ)を例として、3C分析を行ってみます。

Customer(市場・顧客)

企業のビジネスモデルは、「BtoB(企業から企業)」と「BtoC(企業から個人)」に分かれます。「ZOZOTOWN」は「BtoC」事業のため、後者に視点を当てて分析します。

経済産業省のデータによると、2016年のBtoC-EC市場規模は、15兆1,358億円(前年比9.9%増)となっています。また、EC化率(実店舗での販売なども含めた全体の商取引市場における、ネットショップの割合)は、5.43%(前年比 0.68 ポイント増)です。

これを物販系分野の「衣類・服装雑貨等」に絞ってみます。市場規模は1兆5,297億円(前年比10.5%増)です。また、EC化率は10.93%(前年比1.89ポイント増)です。全体の市場規模と比べても、高い成長率となっています。

この成長を支えている顧客は、主に女性です。市場規模ベースでも、男性の2倍以上と推定されています。年代は、特に20代から30代が中心です。年々拡大するスマートフォン市場に合わせ、ホームページのスマートフォン最適化も進んできていることから、若い顧客層を取り込んでいます。

今では多くのアパレルブランドがネットショップを立ち上げ、様々なサービスを展開しています。顧客は、どこにいても豊富なラインナップから商品を選ぶことができます。以前懸念されていた試着ができない問題も、アプリでのバーチャル試着機能や返品無料キャンペーンといったサービスで解消されてきています。

参考:
平成 28 年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

Competitor(競合)

次に、競合を分析してみましょう。
競合には、「直接競合」と「間接競合」という2つの考え方があります。
「直接競合」とは、同じ業界・業態で似たサービスを提供している競合のことです。「間接競合」とは、業界・業態やサービスは違っても、同じターゲットに同じ課題解決をもたらす競合のことです。例えば、「痩せたい」と思っているターゲットに対して、ダイエットサプリ販売会社同士は直接競合です。一方、ダイエットサプリ販売会社とスポーツジム運営会社は間接競合だと考えられます。

今回は、ファッション系のネットショップとして直接競合になりうる以下の2社を取り上げました。

・「SHOPLIST」(クルーズ株式会社)
・「夢展望」(夢展望株式会社)

「SHOPLIST.com by CROOZ」(クルーズ株式会社)

ファッション通販SHOPLIST(ショップリスト)_ファッション通販なら安くて可愛いモテ服アイテムがなんでも揃う【SHOPLIST(ショップリスト)】.png

SHOPLIST.com by CROOZ

「SHOPLIST」は「ZOZOTOWN」と同じく、様々なアパレルブランドの商品をまとめて購入できるため、ここでは直接競合として分析します。

「SHOPLIST」は、2012年7月にサービスを開始しました。幅広いジャンルのファッションアイテムを揃えています。4年目の2016年3月期には約150億円を売り上げました。

主なターゲットは、ファストファッション志向の10代〜40代の男女です。ファストファッションとは、流行を取り入れつつ低価格に抑えた商品を指します。実際の会員は90%以上が女性で、年齢層は25歳前後の方が多いようです。

価格を重視する会員に応じるように、ほぼ毎日のようにセールやイベントが有り、異なるブランドでの購入でもまとめて配送、割引をするサービスも行っています。豊富な商品を手頃な価格で手に入れることができることが、「SHOPLIST」の特徴的な強みです。

「夢展望」(夢展望株式会社)

かわいいプチプラファッション通販なら夢展望【公式サイト】.png

夢展望

「夢展望」は、他2サイトとは違い自社の商品のみを扱うECサイトですが、ファッションECサイトとしての顧客に求められることは似ているため、間接競合として分析します。

「夢展望」は、2005年12月に自社サイトを開設しました。主なターゲットは、10代〜20代の女性です。ガーリーで甘めなファッションが中心で、会員は160万人を超えています。スマートフォンからの流入が多く、売上比率は85%です。

こちらも「SHOPLIST」と同様、低価格で可愛いコーディネートが完成することで人気を博しています。ターゲットは20代までですが、開設当時からの30代のファンが多いことも特徴のひとつです。

Company(自社)

「ZOZOTOWN」(株式会社スタートトゥデイ)

ファッション通販ZOZOTOWN.png

ZOZOTOWN

最後に、「ZOZOTOWN」(株式会社スタートトゥデイ)を分析します。

「ZOZOTOWN」は、2014年12月にサービスを開始しました。人気ブランドも多く取り入れており、男女ともに利用されているサイトです。現在は763億円を売り上げ、前年比40%以上の著しい成長を見せています。

ターゲットは競合2社と少し違い、約7:3の男女比となっています。また、会員の平均年齢も33歳と、若干高めです。これは、取り扱うブランドが幅広いため、それに応じて利用者の層も広がっているからだと考えられます。

強みとしては、取り扱いブランドの知名度と幅広さ、性別を選ばないターゲット層です。「ツケ払い」や「買い替え割」など、斬新なサービスで若者の満足度を追求していることも競合にはないポイントです。

分析結果

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どのサイトも女性がメインターゲットでしたが、その中でもバランスよく利用されているのが「ZOZOTOWN」でした。

「ZOZOTOWN」は他にも、中古流通サイト「ZOZOUSED」、コーディネートサイト「WEAR」の運用も行っています。そのため、コーディネートを参考にして新しい服を探し、着なくなった服は売るというサイクルを自社サービスで回すことができます。

会社の中長期ビジョンとしても挙げられていますが、今後もそういった市場拡大戦略を進めていくことで、市場でより突出した存在になると予想できます。

まとめ

3C分析の3つのCは、分析しなくても感覚としてなんとなく想像できることもあります。しかし、定量的に分析することで、これまで見えなかったものに気づく可能性もあります。特に自社の強みに関しては、社内だけでなく、顧客や第3者の意見も取り入れることで、視野を広げることができるはずです。

際限なく調べ始めると膨大な情報量になってしまいますが、どんな情報があれば顧客により良いサービスを届けることができるかという軸を持って取捨選択していくことも大切です。自社の立ち位置を再確認するためにも、ぜひ一度取り組んでみてください。

3C分析の基礎を学ぶ

3C分析とは〜マーケティングの基礎を覚えて競合と市場を分析しよう