SNSをやるのは「政治の見える化」を推進するため

熊谷俊人(千葉市長)__kumagai_chiba_さん___Twitter.png
https://twitter.com/kumagai_chiba

ferret:
熊谷氏はTwitterを軸としてかなり積極的にSNSを使った情報発信をされていますが、SNSを利用する目的はどこにあるんでしょうか。

熊谷俊人氏(以下 熊谷氏):
私がSNSをやってる理由は大きく分けて2つあります。
1つはまず理念。私が政治家をやっている理由として、行政や市民から集まるたくさんの情報を、できる限り多くの市民の方にわかる形で伝えていくという*「見える化」を政治の世界でも実現したい*という思いがあります。そのポリシーに従って損得抜きに、私自身がやりたいからやっているというのが1つです。

2つめは、多くの人たちに千葉市のことを知ってほしい、政治に関心を持ってほしい、政治って面白いって思ってほしい、行政って面白いと思ってほしいという思いです。
民主主義の社会の中でSNSほど便利なツールはないので、その時代に政治がやれているのはすごくありがたいことだと思ってます。

ferret:
民主主義との関わりというのは、市民の意見を取り入れられるためですか?

熊谷氏:
そうですね。今までは直接のコミュニケーションに限界があったので、この世界はやむをえず間接民主主義を選んできています。その中で、政治家がマスメディアに頼ることなく、一部の人に対してでも直接のコミュニケーションをリアルタイムにできるというのは民主制における進化だと思っています。

Twitterは”行政と政治の理想”を実現するための公開言論プラットフォーム

ferret:
従来でも市民との会話を通して直接のコミュニケーションを行うことはできたと思うんですが、SNSのコミュニケーションでもっとも違うと感じることはなんですか?

熊谷氏:
複数人対複数人のコミュニケーションができるということですね。実際、ブログを書くことだってできるし、メールだってあるし、今までだって市民の声を聞くことはできました。
その点でいえば、Twitterは公開言論プラットフォームだと思ってます。
オープンなコミュニケーションなのか、クローズドなコミュニケーションなのかといったところに違いがあるかなと。

だから、ツイートに返信もらった時に、多くの人が思っていることだなという返信については引用リツイートを使って返答するようにしています。
例えば*「千葉市の税金が高い」*という意見は、実際はそんなことはないのですが、多くの人が感じていることだと思います。多分、全国の市長が言われている意見でしょう。そういう質問に対して「こういうことなんですよ」と返すと、質問してない人も「ああ、そうだったんだ」と納得する。
これが大事なことだと思っているので、みなさんが考えている疑問点を意見としてもらえると嬉しくなります。

あとは、極端な考え方の意見もありがたいですね。
「こんな極端な意見、よく相手しているね」とも度々言われるんですが。私はその人を相手にしているというより、この問題をどう考えますかという公開討論をしているつもりで行っています。極端な意見というのは、その問題に対して両極端な立場から問題を見つけることができます。だから見えるように会話するようにしています。これは行政と政治の理想でもあります。

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ferret:
“行政と政治の理想”とは?

熊谷氏:
現在多くの行政や政治で行われている「行政や政治に対して特定の要望を持っている人間が訴えて、政治や行政が何か判断してくれるのを待つ」という関係は*”お上と下々の関係”*です。
例えば、緑が生い茂っている公園に対して「夜道が危ないから木々を切ってくれ」という人もいれば、「豊かな森が良いんだから切るな」という両方の意見の人がいます。
この方たちは個別に陳情にきて、行政と政治がどう判断するか待つ。つまり行政や政治に生殺与奪権があります。

でも本当は、問題についてみんなで議論して対話するのが大事ですよね。
それを簡単にできるのが、TwitterのようなSNSなんです。
先ほどの例を出すと、公園の木を切ってくれという人は「木を切らないなんて頭おかしいんじゃないの」くらいのことを考えている。でも「豊かな森が良いんだから切るな」という意見があると知ると「あ、なるほど。これには理由があるのね」と納得した上で、さらに一段階上の反対意見が生まれてくるわけです。

私が大事にしていることは、みんなの意見が聞けるということです。そして、吸い上げたものを自分のものにせずに公開していくこと。
だから私はハブ(HUB)であり、アカウントは1つのツールにならなきゃいけない。
千葉市のあらゆる動きと情報が、市長という人間をハブにして流通するというのが理想の民主主義であり、理想のまちづくりだと一市民として考えています。

ferret:
そうすると、市のアカウントとは違う意味合いが出てきますよね。

熊谷氏:
はい、全く違います。市のアカウントは広報ですから。対話ではないし、民主主義ではない一方的な発信です。運営しているのは行政の職員であり、それ以上のことはできないし、やっちゃいけない、それは政治家の領域です。
いろんな意見を吸い上げて、それをハブのように拡散させていく。その拡散の中で色々な意見がぐるぐる回る。その渦に対して、時には「それはできない、なぜならこうだから」と言うのが私の仕事、政治家の仕事ですね。