Appleは、アクセシビリティの向上を熱心に追求している企業のひとつです。
例えばiPhoneには文字を太く表示したり視差効果をオフにしたりする機能があったり、Apple Watchには車椅子ユーザーにも使いやすいワークアウトやアクティビティのAppが用意されていたりします。

もちろん、アクセシビリティとは障碍しょうがいを持った方のことも考慮されていますが、万人が使いやすいように設計されており、必要な機能を必要な時に設定して呼び出すことができるのが、Apple製品の優れた部分でもあります。

それでは、自社サイトやリリースしているアプリのアクセシビリティを向上させたいと思ったときに、何から手をつければよいのでしょうか。
今回は、アクセシビリティの最先端企業であるAppleから、MacやiPhoneに隠れたアクセシビリティ機能と学ぶべき4つのポイントをご紹介します。

何気なく日々使い続けているあなたのMacやiPhone、Apple TVやApple Watchなどに、実はあなたが知らないかもしれない便利な機能が多数実装されています。
ぜひこれらの機能をヒントに、自社サイトやリリースしているアプリのアクセシビリティを見直してみてください。

MacやiPhoneに隠された驚くべきアクセシビリティ機能

1. VoiceOver (ボイスオーバー)

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VoiceOverは、視覚に障碍を持った方でもMacをスムーズに使うことができる内蔵スクリーンリーダーです。

スクリーンリーダーといえば、「テキスト・トゥ・スピーチ」(Text-to-speech)と呼ばれるいわゆるテキストの読み上げを想像しますが、VoiceOverは違います。

VoiceOverでは、スクリーンに何が映っているかをユーザーに伝え、ビデオ編集やプレゼンテーション作成などを行なっている際に次に取るべき行動を音声で伝えてくれます
例えば、プレゼンテーションを作成するときに、トラックパッドを動かして現在マウスカーソルが触れているUIを、「カラーホイールと選択されたボタン」というように読み上げてくれます。

他にも、VoiceOver トラックパッドコマンドを有効化することで、現在開いているウィンドウやドキュメントを音声で確認することができ、トラックパッドの角や縁をタップしてナビゲーションに従って操作をすることも可能です。

2. Text-to-speech (テキスト・トゥ・スピーチ)

もちろん、自分が読んでいたり書いていたりするものを聞きたい時に、テキスト・トゥ・スピーチの機能は非常に役に立ちます。

テキスト・トゥ・スピーチ機能を有効化すると読んでいるテキストがハイライト表示され、Macがそのテキストを大きな声で読み上げてくれます。

テキスト・トゥ・スピーチは2017年6月現在、42の言語70以上の男性・女性の種類の声が用意されており、PDFやWebサイト、写真に撮った宿題のプリントなどを読み上げてくれます。
日本語では女性音声の「Kyoko」と男性音声の「Otoya」を利用することができます。

3. スイッチコントロール

スイッチコントロールは、マウスやキーボードで指をあちこちに動かさなくても、スクリーン上のキーボードやメニュー、Dockなどを操作できる機能です。

この機能を有効化すると、スイッチコントロール専用の小窓がデスクトップに表示され、システムだけでなくアプリ内の操作もシンプルに行えます。
また、ジョイスティックやキーボードのスペースキー、あるいはトラックパッドで複数の指でシングルタップをすることで、簡単にスイッチコントロールを操作することが可能なので、あらゆる外部デバイスからの操作が可能です。

さらに、MacOS Sierraからは、プラットフォームを超えたスイッチコントロールに対応しています。
例えば、iCloudアカウントでMacと手持ちのiPhoneやiPadが同期されていれば、iPhoneやiPad上でMacを直接操作できるようになりました。

4. FaceTime (フェイスタイム)

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FaceTimeはいわばSkypeと同じようにビデオ通話を行う機能が実装されているので、「なぜ同じようなものをAppleからリリースしているの?」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、実はアクセシビリティの向上を可能な限り行おうというAppleだからこそ、FaceTimeのOS標準実装が重要だということに気づきます。

FaceTimeは、手話を使うひとに非常に役立っています。
高品質のビデオと高速のフレームレートで、ぶれることなく的確に、手話だけでなく相手の顔の表情までしっかりと伝えます。

MacやiPhone、iPadだけでなく、iPod TouchにもFaceTimeは実装されているので、Apple製品を持っている世界中の人とコミュニケーションが取れるようになったという意味では、FaceTimeの功績は思った以上に大きいものになっているでしょう。

5. スクリーンフラッシュ

耳の聞こえないユーザーに緊急情報を知らせるために、アラート音を流す代わりに、注意を引くためにスクリーンを点滅させる「スクリーンフラッシュ」と呼ばれる機能も存在します。
通常ビープ音をアプリが発する時、システムが同時にスクリーンフラッシュを行います。

6. Siri (シリ)

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Appleの音声アシスタントであるSiriは、macOS Sierraからデスクトップでも使うことができるようになりました。

もちろん、SiriはWebを検索する際やメッセージを送る時、あるいはドライブ内の文書の場所を特定したりリマインダーを作成する時に役立ちます。
しかし、それだけでなく、アクセシビリティの設定を音声だけでオン・オフのコントロールすることができるので、全てのひとに役立っています。

7. 音声入力コマンド (ディクテーションコマンド)

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MacやiPhoneで喋りながら喋った声がそのまま入力される「音声入力」を使っている人は少なくないでしょう。
しかし、「音声入力コマンド」の存在やその使い方について知っているひとはあまり多くないかもしれません。

macOSには50以上の編集用の音声入力コマンドが用意されています。
音声入力モードをオンにして、*「Returnキーを押す」「それを取り消す」「XXをOOで置き換える」「XXをボールドにする」と言うと、その通りに編集してくれます。
編集だけでなく、
「音声入力を開始」「Siriを開始」「ウィンドウを閉じる」「段落を選択」「XXをクリック」*といった各種アクションも実行してくれるのです。

もちろんこうした機能は、もともとアクセシビリティの向上を目的に作られました。
しかし、この機能を有効化して使いこなすことができれば、ユーザビリティも向上します。

8. 滞留コントロール

滞留コントロールとは、マウスカーソルを一定時間その場に合わせておくことでクリックと同じ操作を可能にするもので、ヘッドトラッキングやアイトラッキング技術を使ってマウス操作をできるようにする機能です。

指や手、腕を使って操作できないユーザーのために開発された機能ですが、例えばプロジェクターに画面を映して、動きを感知するヘッドセットなどを使ってある種のVR体験をする際などに役立つ機能です。

9. マウスキー

マウスやトラックパッドを使うことができない場合、マウスキーを有効化することで、テンキーによってマウスカーソルをコントロールできます。

数字はテンキーの位置と対応しており、例えば「8」を押すと上に進んだり、「4」を押すと左に進んだりといった具合です。
また、「5」がクリックに対応しており、テンキーだけでドラッグ&ドロップを行うこともできます。

10. ガイドアクセス

ガイドアクセスは1つのiPhoneでたった1つのアプリしか使えないようにする機能で、自閉症やADHDなどを患っている方に役立つ機能です。
親や教師、セラピストは、ガイドアクセスを有効にすることで、子どもや患者がホームボタンを押して他のアプリを立ち上げたりするのを防げます。

しかし、自らがガイドアクセスを有効化して、1つのアプリを使うことに集中する環境を作りあげることもできます。

Appleのアクセシビリティ機能から学ぶべき4つのこと

1. あらゆるユーザーが使うことを考える

Apple製品では、さまざまなユーザーが利用することを前提に設計されています。

アクセシビリティでは、「視覚」「聴覚」「運動・移動」「学習・識字」のそれぞれに関するサポートがされています。
一般的な企業がこれらの点すべてに対応するのは難しいかもしれませんが、一つひとつクリアしていくのは大きな一歩です。

2. 操作の選択肢をいくつも揃えておく

Apple製品のように操作の選択肢をいくつも揃えておくのは重要です。
例えば、Macの画面上でマウスカーソルを操作する際に、マウスやトラックパッドで操作することもできますが、テンキーや外部デバイスでも操作できるようにしています。

選択肢が1つしかなければ、ユーザーはそれに従わなければなりません。
しかし、選択肢が複数用意されているのであれば、ユーザーは自分の使いやすいものを選んで使うことができます

3. ユーザビリティとアクセシビリティを同時に達成する

Apple製品に搭載されているアクセシビリティ機能のほとんどは、一般ユーザーが使っても操作に役立つように設計されています。

アクセシビリティというとどうしても障碍を持った人にのみフォーカスが当たってしまいますが、そうではなく、万人に使いやすい機能を考えるようにしましょう。

4. パーソラナイズ可能にする

そして、Apple製品が優れているところは、これらのアクセシビリティ機能を、必要に応じてパーソナライズできるところです。
一人ひとりに必要な機能は違うという前提から、設定によって各項目を一つひとつ有効化できるようになっています。

Webサービスやアプリなどで、よかれと思って付けた機能がある人にとっては使いやすく、またある人にとってはそうではない場合があるかもしれません。
そうした場合に、設定を通じて自由にオン・オフを切り替えられるようにしておくといいでしょう。

まとめ

Apple製品がこれほどまでに多くの人に使われているのは、もちろんデザインが優れているということもありますが、それだけではありません。
世界中にいるどんな人にも使われることを前提に設計されていることが、これほど広まっていった理由のひとつだと言うことができます。

Appleのアクセシビリティから学べることは無数にあります。
さらに多くの方々に使ってもらうために、どんなことができるかを考えてみましょう。