「居酒屋で業務に関わる話をしてはいけない」
「パソコンの持ち出しは営業秘密の漏洩につながる」
社内でそのような話を聞いたことはありませんか?

このような営業秘密の漏洩は不正競争防止法で禁止行為として定められており、企業や個人が罰せられる可能性もあります。
ですが、この「不正競争防止法」について、実はあまりよくわかっていないという方は多いのではないでしょうか。

今回は不正競争防止法の基本知識をわかりやすく解説します。

不正競争防止法とは

「不正競争防止法」とは、企業が競合他社や個人に対して、不正な手段による競争の差し止めや損害賠償請求をできるよう認めた法律です。

実際に、不正競争防止法第1条では、以下のように法律の目的を明らかにしています。

この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
引用:不正競争防止法

上記にあるように、健全な経済成長に繋がらない不正な競争を防ぐのが不正競争防止法の目的です。

他の法律との関係性

不正競争防止法は”不正な行為”に対して差し止めや損害賠償請求を行うことを認めている法律です。そのため法律が適用される範囲に柔軟性があるのが特徴です。

例えば、A社が発売した独特なデザインの犬のぬいぐるみが人気となり、B社がそれと全く同じデザインでぬいぐるみを発売したとしましょう。
この時、犬のぬいぐるみのデザインを意匠登録していた場合、意匠法を根拠として、意匠権の侵害を訴え出ることが可能です。ですが、登録を行っていない場合、意匠法では訴え出ることはできません。

不正競争防止法では、意匠登録を行っていない場合でも、自社の商品の形を模倣した商品を販売しているとして訴え出ることが可能となります。B社に対して、ぬいぐるみを販売しないように差し止め請求し、これが認められれば、自社が得るはずだった利益を奪われるのを防げるでしょう。また、刑事事件としてB社を訴えれば、3億円以下の罰金が課せられます。

参考:
[不正競争防止法|経済産業省]
(http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/2016unfaircompetitiontextbookr2.pdf)

不正競争防止法で定められている禁止行為

では、実際に不正競争防止法では、どういった行為が禁止行為として定められているのでしょうか。禁止行為のうち、基本的なものを紹介します。

1.周知な商品等表示の混同惹起

すでに社会で広く知られている商品のパッケージや商品名に似せたものを販売し、元となった商品と勘違いして購入するよう促す行為を指します。

例えば、SONYの発売している「ウォークマン」という商品に対して、同一の表記を看板
として利用し、「有限会社ウォークマン」という商号として使用した企業に対しては、看板及び称号の使用禁止が認められています。

2.著名な商品等表示の冒用

著名な商品の名前を自社の商品やサービスの名称として利用する行為を指します。

例えば「シャネル」というファッションブランドの名前を風俗店の店名として利用した場合を考えてみましょう。
消費者から見て、ファッションブランドと風俗店を混同することはまずありえません。ですが、ファッションブランド側にとってはブランドイメージに関わるでしょう。

3.営業秘密の侵害

顧客情報や技術的なノウハウといった営業秘密を窃盗などの手段により取得する行為を指します。
ですが、企業が所有しているノウハウや情報の全てが営業秘密として、不正競争防止法に適用されるわけではありません。

具体的には以下の3つの要件全てを満たす必要があります。

1.秘密管理性:秘密として管理されていること
2.有用性:実際に利用されているかに関わらず、有益な情報であること
3.非公知性:公然に知られていないこと

つまり、秘密として管理されておらず、特に価値はなく、周囲の人が当たり前のように知っている情報は営業秘密として扱われません。
中でも、企業にとって知っておきたいのが「秘密管理性」です。企業がノウハウや情報を秘密のものとして管理していることを従業員に明確に表示し、従業員も秘密として管理していることを認識している可能性がなければ秘密管理性は認められません。

そのため、秘密保持契約のような書面の取り交わしが重要なのです。

参考:
[営業秘密 ~営業秘密を守り活用する~|METI/経済産業省] (http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html)
サイバー攻撃よりも怖い?社員や取引先などの内部犯による情報漏洩事例と対策方法|ferret [フェレット]
[ちゃんと結べていますか?秘密保持契約の基本を解説|ferret [フェレット]] (https://ferret-plus.com/8357)

4.他人の商品形態を模倣した商品の提供

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引用:[不正競争防止法|経済産業省]
(http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/2016unfaircompetitiontextbookr2.pdf)

他社の商品のデザイン・質感を模倣した商品を販売する行為を指します。
意匠法とは異なり、登録は不要です。そのため、意匠登録を行う費用や手間をかけられない商品やサービスでも対象となるのが特徴でしょう。

5.ドメイン名の不正取得等

他者に損害を与える目的や不正な利益を得る目的で、他者と類似したドメインを取得する行為を指します。

例えば「ferret-plus.com」というドメインに対して「ferret-plus.jp」というドメインのアダルトサイトを立ち上げたとします。
この時、消費者から見たらどちらも同じドメインに見えてしまい、「ferret-plus.com」と関連するアダルトサイトだと思ってしまうかもしれません。そのため「ferret-plus.com」を運営している企業は、自社のイメージが損なわれたとして訴え出ることが可能です。

参考:
ドメインの登録で注意すべきこと(2)不正競争防止法との関係|J-Net21

まとめ

不正競争防止法は、事業者間での公平な競争を妨げる行為を防止するための法律です。禁止されている行為の中でも代表的なものが「営業秘密」の漏洩でしょう

営業秘密の漏洩は企業側で規定を定めておかなければ、不正競争防止法の条件を満たすことができず、訴えを起こせない可能性があります。ですが、工業所有権情報・研修館の調査によると、中小企業のうち7割が営業秘密に関する規定がなく、技術や顧客情報が他社へ流出してしまうリスクが軽視されていることがわかります。

営業秘密の漏洩を含め、自社に不正競争防止法に違反している部署がないか、また抵触する可能性が高い業務はないか改めて確認しましょう。

参考:
[営業秘密規定、中小7割が未整備−INPIT、重要性訴え | 日刊工業新聞 電子版] (https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00442443?isReadConfirmed=true)