世の中には、驚くほどシンプルなのに大きなインパクトを与えるアプリも存在します。
しかし一方で、残念ながらたった一回使われただけで削除されてしまうアプリもあります。

Localyticsによる統計によれば、およそ*23%ものアプリが(つまりダウンロードされたアプリの約4回に1回が)たった一度だけ使われただけでホーム画面から消されてしまうとの結果が明らかになりました。
他方、アプリ
37%*は、同じユーザーによって11回以上使われています。

この差は一体どこにあるのでしょうか?

もちろんアプリを何回か使って消すか使い続けるかを判断するのはそのアプリの利便性や特徴、オンボーディングの成功可否やエンゲージメントなど、さまざまな要因が絡み合っているでしょう。
しかし、先ほどの統計を紐解くと、1回だけ開いて消されるアプリのほとんどは、第一印象をよく見せるのに失敗しているか、ユーザーエクスペリエンスの観点で引け目を取ってしまったかどちらかです。
デザインが最初にアプリを開いたユーザーにとって重要なことは、言うまでもないでしょう。

そこで今回は、シンプルなのに大きなインパクトを与えるアプリがほかのアプリと何が違うのか、そのポイントを解説していきます。

多くのアプリがミニマルデザインを採用している理由

ミニマルデザインが必ずしもユーザーの注目を引きつける、とは言えませんが、少なくとも第一印象の上では「シンプルさ」は非常に重要な役割を果たします。
その理由として、まず通常のデスクトップやノート型のコンピュータとモバイルアプリがどのように異なるかを考えてみると分かりやすいでしょう。

1. 機能が絞られている

WordやExcelなどを考えてみると実感が湧くと思いますが、多くのデスクトップアプリは仕事の遂行を目的に作られています。
そのため、機能が豊富で網羅されていることが極めて重要です。

一方、スマートフォンでアプリを開くときには、歩きながら、電車に乗りながら、誰かと話しながら操作する、ということが多いでしょう。
そうした隙間時間の中で開くアプリは、用途が限られており、複雑で操作が難しいUIは倦厭される傾向にあります。

2. 画面サイズが絞られている

デスクトップパソコンやノートパソコンとは違い、モバイルで閲覧できる画面は限られています。
また、パソコンであれば複数のパソコンを開いてマルチタスクを行うことができるでしょうが、モバイルは基本的にシングルタスクです。

3. クリックではなくタッチ

パソコンとの操作上の大きな違いとして、パソコンはマウスを動かしながらクリックすることができますが、モバイル端末ではタップを行います。
ほとんどのユーザーは親指をマウスカーソルがわりに使っており、またパソコンとは違ってモバイル端末ではあまりに長い文をタイピングするのを得意とはしていません。

また、デスクトップであればマウスやトラックパッドのような媒介機器を通じて操作を行いますが、モバイルは直接タップを行う点も考慮にいれておくべきです。
小さな手でも大きな手でも、室内でも外出先でも、暗い部屋でも明るい屋外でも見やすく使いやすいアプリであるかは重要な着眼点です。

以上の3つの観点を考慮に入れれば、なぜ多くのアプリがミニマルデザインを採用しているかが分かると思います。
限られた画面サイズの中で必要な機能のみを提供しており、洗練されていてシンプル。
その上、余計な操作も必要なく、デザインだけでなく効率性をも重視しています。

また、画面上に配置されたUIは少ないにもかかわらず、どの要素もすべてが重要な役割を担っています。
オンボーディングしやすく、ヘルプを用意しなくとも簡単に操作ができ、ユーザーエンゲージメントも高めやすいと言われています。