ビジネスシーンにおけるコミュニケーションが占める割合は60%以上と言われており、今も昔も重要度は変わっていません。かつて電話がメインだったビジネスコミュニケーションはすぐにメールが主役になりました。

メールの文化が根づいて早いもので10年以上が経過。現在はリアルタイムで即効性があり、より双方向なやり取りが実現できる「ビジネスチャット」に注目が集まっています。

弊社が寄稿する記事では「ビジネスチャットが変えるワークスタイル」を掲げ、ビジネスチャットがもつ特徴を踏まえつつ、それが既存ビジネスシーンにどのような影響を与えていくのか、またどのようなメリットをもたらすのかを実例を交えてご紹介していきます。今回のテーマは「ビジネスチャットとAI、ボット」です。
  

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ビジネスチャットとAI・ボットの関係

ITの世界では最近「AI」「ボット」といったキーワードが連日メディアを賑わせており、ビジネスの世界でもそれらをどう活用していくのか、どういったメリットがあるのかが積極的に議論されています。

今回はビジネスチャットとAI、ボットの関係、その落とし穴に触れるとともに、バズワードに踊らされない「本当に運用に乗るAI・ボットとは」という点を具体的に掘り下げていきます。

昨今の働き方改革によってAI、ボットを組み合わせたソリューションが数多くリリースされ、さらには戦略的なパートナーシップやそれを支援する仕組みのニュースがメディアで次々に発表されています。

参考:
「AIや働き方改革でビジネスを拡大」、日本MSがパートナー支援策を説明|日経BP社
セールスフォースとIBM、AI提携に基づく最新の共同ソリューションを発表|ZD net Japan

ここに上げたものはあくまで一例であり、数え切れないほどの新サービスが発表されています。

ビジネスチャットの業界でも、「チャットボット」という新しい概念を軸にAIやボットを全面にだしたサービスもいくつも存在します。しかし、実際に顧客へサービスを提案・提供してみると以外にも運用にのらずに結局使われなくなってしまうことも多く見受けられています。

そこで当社の経験とヒアリングをもとに本当に”使われる”AI・ボットと、運用に乗るために必要な判断軸を考えていきます。
  

CASE1.ボットは”1つのリンク”との戦いに負けると価値がない

日々の業務をしていると「日報」というものを書く事があります。

ある商社のお客様は外回りの営業が出先や直帰中でも簡単に日報が書けるようにビジネスチャットにボット対話型で、ボットとトークをすれば自動的に日報が生成されるサービスを導入し運用がスタートしました。

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図1:チャットのUIの対話型で日報連絡するボットのイメージ

ところが導入して1ヵ月経過後に再度訪問してみると驚くことに「結局SFAに付いている日報システムで運用することにした」という結果になっていました。

よくよく聞いてみると以下の点が不満だったようです。

・チャットボットで収集した日報をそのままSFAにいれる運用だった
・そもそもチャット形式の画面でやり取りが慣れない。する理由が理解できなかった
・どうせSFAに入れるならSFAに跳ぶリンクをチャットに貼ったほうが楽

これは大きな教訓になりました。

ボット型の画面でするやりとりの大きな課題として、まずそういった文化がまだ根付いていないこと、そもそも対話型で操作する理由の理解が世間で進んでいないことが、思ったよりも大きな違和感をユーザーに与えてしまったようです。

そこで注目したのが、今回はチャットボットはあくまで既存で実現できていた業務の”代替案”であり、操作画面の肩代わりをしただけだった点です。

既存のSFAシステムに付いている日報システムは、項目別に記入するオーソドックスな形式で、それにユーザーが慣れていたということも大きかったはずです。そのシステムの代替としてチャット形式の日報記入については、ユーザーが思ったよりも受け入れられなかったということになります。

結局、この商社のお客様は最終的にはチャットサービスもほかのものに変更し、当初の運用が上手くいかないだけでなく、運用設計や検討の時間も無駄になってしまいました。

チャットボットは単純に何かの代替として導入してしまうと、単純にその代替元のサービスへの直接のリンクに負けてしまうという具体的な事例と言えるでしょう。

教訓1:チャットボットは何かの単純な代替ではあってはならず、その時は代替元へのたった1つのリンクに負けてしまう
  

CASE2.日程調整をボットだけにしたら大混乱になった話

Webサービスの制作を利用している企業で、クライアント企業との日程調整、社内の日程調整は全てボット経由で簡単にできるようにしてしまおうという企画が立ち上がりました。システム担当者が着目したのは、日程調整時の”ムダ”です。

普段、この企業での日程調整はクライアント側から候補日をもらい、社内の参加者の日程を全て確認し、全員が空いている時間を確認して決定するというオーソドックスなものでした。

その企業は営業と顧客、コーディング担当やデザイナーなど各関係者間の情報共有をなるべくスムーズにするべく、よりリアルタイムに近い非同期なコミュニケーションが出来るビジネスチャットを導入していました。

クライアントへ訪問に行く時も色々な担当を直接クライアントのヒアリングに参加させるという企業文化もあり、日程調整は頻発する作業でした。

その上、それほど規模が大きい会社ではないからという理由でクライアント側との日程調整が完了したのに、即座にスケジュール作成をしなかったがために、日程を押さえようとした時にはすでにほかの担当者がスケジュールを……ということも珍しくありませんでした。こうした事象を引き起こさないためにも、何とかしてスケジュール調整等のおける効率化を測れないか、というのが課題になっていました。

そこで槍玉に上げられたのがチャットボットによる日程調整です。

これはボットに聞かれた質問に答えると自動で関係者の日程を確認し、空いている時間を提示し、問題なければスケジュールを作成するというサービスを提供します。

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図2:チャットで日程調整するイメージ

ところがこちらを運用して数ヵ月……ほとんどのユーザーがこの機能を利用しておらず、旧来の操作を行っていることが判明しました。

システム担当者が幾つかの社員にヒアリングを行い、当初は単純にチャット形式の画面に慣れていないだけではないかと考えていましたが、全く違う理由が浮かび上がってきました。多く寄せられた意見として2つの意見がありました。

・ 前後の予定や相手の予定の内容を見ながら調整したいことが多かった
・ 予定が作成されても不安でカレンダーアプリ等で確認(結局効率化できていない)

今回のケースでは、物理的には「ボットを利用することでスケジュール調整はかなり効率化できる」と、客観的にユーザーと管理者共に理解・共有できていました。しかし、実際にユーザーがどのようなことを考えてスケジュール調整していたのかという想像力が一歩足らず、結果的に便利なものの普及が進まなかったというのがポイントです。

日程調整のボットは空き時間とみなす時間や、前後の空白の条件などを設定できるだけで、例えば「前の予定の開催場所と次の予定の開催場所の距離はどうだ」「商談内容的に一度社内に戻る必要がありそうだ」などの細かいニーズには対応できませんでした。

しかし、このケースはまだ運用改善の余地はありそうです。これからのボット・AI技術の発展で解決できそうな課題です。

今回の教訓としては、以前できていた多種多様なことがボット・AIを導入したことで一部で制限されてしまうと、以前の運用からは中々脱却ができないとう点です。

教訓2:チャットボットはかつてできていたこととを狭めてはならず、少なくとも同じニーズを維持できるようにしなければならない。そうでないと結局使われなくなってしまう
  

CASE3.ボットは何でもアクセスできるからこそ、配慮が必要だった

最後に紹介するのは実際の事例です。ある企業様において、下記のような取り組みを検討されていたことがありました。

営業の売上報告や技術側の作業の進捗、製品のアクティブ数やアクティブ率の推移を決まったグループに定期的に投げ込んだり、誰もがボットに聞けば検索して対応したデータを引っ張ってこれたらすごく便利なのでは?

当時、その企業では社内のホウレンソウや情報共有の仕方において、よく"働き方改革"という観点で議論になっていました。

情報共有だけの会議はムダだし、情報共有に割く時間が自体もったいないから定量的なものは全部引っ張れるようにしよう、というのがアイデアの発端です。しかし、これは色々な人から意見を聞くうちに様々な問題点をが浮き彫りになり実現をやめることになりました。

まず1つに売上報告(営業成績)や作業進捗度は社内ではほぼ公開情報ではあるものの、ある程度配慮が必要なデータであることがわかりました。これはプライバシーの問題に似ている側面があります。社内のこのシステムを利用している人が、"誰もがどの部署の誰々の営業成績を確認できるというのは一定の問題がある"という認識がほとんどでした。

さらに、この利益を享受できるのは一部のマネジメント層、営業、製品担当だけであり、特に社内的に使いたい人も少ないものを作るのはどうか?という意見もありました。

私個人としては、とにかく動く使えるものを実現してから考えるというスタンスです。ただ、ユーザーが直接それも手軽に触れられるボットという媒体では、誰もが使える公共性と横断的にアクセスできるプライバシーの側面をしっかりと検討する必要があります。

教訓3:誰でも気軽に使えるからこそ、何でもすぐにアクセスして表示できるからこそ、配慮しなくてはならないことがたくさんある
  

本記事のポイントを総括

ビジネスチャットでボットを扱う上で考えておく必要があるポイントを共有しました。

教訓1:
チャットボットは何かの単純な代替ではあってはならない

教訓2:
チャットボットは今までできていたことができなくなると使われなくなる

教訓3:
チャットボットは誰でも気軽に使え、色々なデータにアクセスができてしまうからユーザーに配慮した慎重な運用が必要

  

まとめ

ボットやAIは今や流行の真っ只中にあり、日々様々なソリューションやリリースが出ています。

当社としては様々な企業とお客様自身とのやり取りの中で、”運用にのる”ことのハードルを実感しています。それに、今ボットなどを導入することは取り組みとしては刺激的でチャレンジ的とも言えますが、そのうち社会では当たり前になる可能性もあります。

今回の記事としてはある種ネガティブな情報のシェアになりましたが、コミュニケーションとAI、ボットの相性はもともと悪いものではなく、成功した事例もたくさん存在しています。

機械学習的に蓄積されたデータを利用してさらなる業務効率化を図ることで、日々積み重なっていくコミュニケーションこそが企業の増え続ける”資産”になっていくのではないかと考えています。

本記事を読んだ方も、ぜひ”運用に乗る”サービスとは何なのか、どういうことが課題になりユーザーの妨げになるのかと言ったことをよく考え、教訓を活かしていただければ幸いです。