株式会社ロックオン、マーケティングメトリックス研究所の松本です。

これまでferretにて、"誰が見ても一瞬で伝わるレポート資料の作り方(下記参照)"をテーマにしたグラフ表現方法について説明しました。

私自身、これまで「どのように見せれば”正しく”伝わるのか?」についてそれなりに研究してきました。言い換えれば「どんなテクニックを使えば”誤解”してくれるか?」についても研究してきたと言ってもいいでしょう。

そこで今回は、悪用厳禁という前提を踏まえつつ、誤解を生みやすいグラフの表現方法5つのテクニックを紹介します。

参考:
誰が見ても一瞬で伝わるレポート資料の作り方|ferret
誰が見ても一瞬で伝わるレポート資料の作り方折れ線グラフの使い方をマスターする編|ferret
誰が見ても一瞬で伝わるレポート資料の作り方!散布図の使い方をマスター|ferret
円グラフの使い方をマスターしよう〜誰が見ても一瞬で伝わるレポート資料の作り方|
ヒストグラムを使って誰が見ても一瞬で伝わるレポート資料を作る方法|ferret
箱ひげ図をマスターしよう!誰が見ても一瞬で伝わるレポート資料の作り方|ferret
  

時間軸を改ざんする

時間の推移を表現する場合、時間軸と時点の距離を連動させないというテクニックがあります。これは折れ線グラフで特に有効です。

以下の図を見てください。朝日新聞2004年7月4日朝刊の紙面に掲載された小泉内閣支持率の推移を表す折れ線グラフを再現しました。

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2001年4月以降、特徴的な事象が発生した際の支持率の推移だとわかります。その時点の間隔は1ヵ月から、最長で約8ヵ月とまばらです。しかし、折れ線グラフでは時点間がすべて等しく表現しています。したがって、支持率は右肩下がりのように見えてしまいます。

時間軸と時点の距離を連動させると、以下のような折れ線グラフになります。

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右肩下がりというか、最初の支持率が異常に高くて、後はほぼ横ばいだとわかります。

ある時点とある時点の間の「傾き」から変化を感覚的につかめるのが折れ線グラフの特徴です。折れ線グラフは「傾き」の推移を表現するのが一番得意なのです。

したがってデータ的には正しくても、「傾き」を操作することで誤解を生みやすいグラフが誕生します。

言い換えれば、この「傾き」さえ好き勝手に弄ってしまえば、折れ線グラフであなたに都合の良い結果を表現できるのです。
  

目盛りの刻みを合わせない

2つのグラフを比較する場合、その高さを表す目盛りを連動させないというテクニックがあります。これは折れ線グラフや棒グラフで特に有効です。

以下の図を見てください。フジテレビで2016年12月16日に放映された「池上彰緊急スペシャル なぜ世界から格差はなくならないのか?」で紹介された日本と米国の所得推移を表す折れ線グラフを再現しました。

ちなみに当時、テレビで放映されたグラフ結果と微妙に違いますが、その理由として途中の計算式で代入する人口データが微妙に異なるためだと考えます。

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グラフを見比べると、アメリカは1994年以降、日本も2000年以降、上位1%の所得と下位90%の所得が広がり続ける一方だとわかります。

ただし、双方のグラフは目盛りが違います。

グラフの中で表現している「高さ」が双方見比べて同じように見えても、その高さが実際の数字でどれくらいか表すには目盛りを見比べる必要があります。

1つのグラフで表現した結果、以下のようになりました。

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メモリを合わせたことで、最初に見せたグラフと異なる印象を抱いたはずです。

言い換えれば、この「目盛り」さえ好き勝手にいじってしまえば、折れ線グラフや棒グラフであなたに都合の良い結果を表現できるのです。
  

累積データで表現する

時系列なデータの場合、その殆どが日毎、週毎、月毎、年毎です。累積で表現されるのは稀です。

累積で表現すると、集計毎の増減がわからないからです。しかし、だからこそ累計データを使うテクニックが有効な時があります。

以下の図を見てください。あるアプリの累計DL数を表現するデータです。

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リリース日以降、指数的にDL件数が増えているように見えます。しかし、日毎のDL数で表現するとどうなるでしょう。

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日単位で細かくハネているので見辛いのですが、実は直近3ヵ月は落ち込んでいます。

新薬で命が助かった人など、その時点での累計数こそ重要な場合もあります。累計が一概にダメとは言えませんが、錯覚を生みやすい表現方法だと言えます。
  

3次元で表現する

ダメなグラフの代名詞とも言えるのが3次元を用いた表現方法です。

例えば、円グラフなら円の「角度」から内訳を感覚的につかめます。2次元で正確に表現される角度も、3次元で表現すれば自在に変えられます。

試しに目の前にあるキーボードの角を、真横から、右斜め30度から、左真下60度から見比べてください。同じ角度に見えないはずです。

つまり、高さに「奥行き」が表現されると、人間の目は錯覚を起こしてしまうのです。

以下の図を見てください。真ん中の太い棒は全く同じ高さなのに、奥行きを与えたことで違うように見えます。

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言い換えれば、3次元で表して奥行きを表現してしまえば、どんなグラフであっても勘違いを起こしやすいのです。

円グラフ同士で比較させる

「比較」という表現に向いているのは棒グラフです。そして「内訳の比較」という表現に向いているのは積み上げ棒グラフです。しかし、2つの円グラフを並べて内訳の比較をするというテクニックがあります。これは円グラフ特有の”錯覚”を用いた方法です。

以下の図を見てください。電力事業連合会が発表した発電電力量を表した円グラフです。1980年と30年後の2010年、発電設備内訳を表しています。

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原子力施設による発電電力量が大きく伸びて、火力も水力も減っているように見えます。

しかし、円グラフに割合しか記載が無い場合、総量がわからないので複数の円グラフの内訳と比較しても意味はありません。実際のところは以下のようになります。

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電力の総需要が伸びているのがわかります。言い換えれば、絶対量の変化より、内訳の変化を強調すれば、あたかも量まで減っているように表現できる場合があるのです。これだけが理由ではありませんが、一般的には円グラフは「グラフには適していない表現方法」として知られています。
  

まとめ

あくまで今回紹介した表現テクニックは悪用厳禁です。

こんな表現をしていたら「この人は私を騙そうとしているのかな?」と相手に思われる可能性があるので、注意喚起の意味で紹介させていただきました。ぜひ業務でお役立ていただければ幸いです。