電子契約サービスやOCR技術によって、様々な”紙の書類”を電子化できるようになりました。社内で紙の資料を極力利用しないことを「ペーパーレス化」と呼び、現在では企業で導入する事例も少なくありません。

そこで、自社でもビジネス文書のペーパーレス化を検討しているという方もいるのではないでしょうか。紙の書類を利用するのと比べ、用紙や印刷のコストを削減でき、管理も簡単に行えることからメリットの大きいペーパーレス化ですが、具体的にどういった書類が対応しているのかいまいちピンとこないという方もいるはずです。

今回は、企業がペーパーレス化を取り組むにあたり得られるメリットや、実施する上で課題となるポイントについて解説します。

ビジネス文書をペーパーレス化するメリットとは?

そもそも、ビジネス文書のペーパーレス化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。紙の書類を電子化するにあたり、下記の3つのメリットが挙げられます。

1.用紙の費用や管理のコスト削減

1つ目に挙げられるメリットが、用紙代や印刷代のコスト削減です。

一般的に、社内の会議資料や人事総務の手続きに利用する資料など、ビジネスの様々な場面で「紙の書類」が利用されています。頻繁に利用する書類も多く、コピー用紙と印刷費用が継続的に発生します。また、契約書や顧客情報などを管理するスペースを設けなければなりません。

日本経済団体連合会の試算によると、国内の税務書類の保存コストは年間で約3,000億円にもなるようです。

それらの書類を可能な限り電子化することで、不必要な印刷を抑えることができるというメリットがあります。1つのデータを必要なメンバーに共有するだけで良いため、不必要に印刷を行わなくて良いのがペーパーレス化の特徴と言えるでしょう。

また、紙の書類と異なり、色あせたり破れることもないので長期保管する書類を管理しやすいというメリットもあります。

参考:
[入門編]文書の電子化によるメリット(METI/経済産業省)
(2020年9月1日時点でページが存在しないためリンクを削除しました)

2.書類整理の効率化

2つ目のメリットが書類整理の効率化です。紙の書類を管理する場合、一定の場所に保管する必要があります。書類をファイリングし、部署や業務領域ごとに保管するのが一般的です。長期保管していた書類を参照したい場合、「どこに書類を保管したかわからない」ということも起こりうるでしょう。

PDFなど電子化した書類であれば、端末内で必要な書類を簡単に検索することができます。また、たとえフォルダ分けをし忘れたデータでも端末内全体を検索すれば参照できます。

また、ビジネス向けのクラウドストレージを活用することで、社内のメンバーであればどこでも同じ書類を利用できるというメリットもあります。また、電子データであれば、誰が利用しても同じ場所に保管されつづけるため、紛失のリスクも回避できるでしょう。

参考:
ビジネスマンにオススメ!今すぐ活用すべきクラウドサービス22選|ferret [フェレット]

3.セキュリティ向上を見込める

3つ目のメリットが書類保管時のセキュリティの向上が見込めることです。紙の書類の場合、書類持ち出し時の紛失や盗難のリスクがあります。書類は誰でも簡単にコピーできるため、利用する人の管理方法によってリスクが大きく異なるでしょう。

データ化した書類の場合であれば、特定のネットワーク回線上でしか参照できないよう閲覧・コピーの制限をかけたり、文書の暗号化が行えます。また、ツールベンダーから提供されているペーパーレスサービスの中には、「閲覧して一定期間経過すると自動的に抹消される」というセキュリティ機能を持ったサービスも存在します。

物理的に機密情報が残らないことでセキュリティ面での安全性を向上させることができるでしょう。とはいえ、ペーパーレス化を進めた上でセキュリティ対策を行うことが前提です。後述しますが、保管方法によってはデメリットにもなりうるので注意が必要です。

ペーパーレス化の課題

コスト削減から書類管理の効率化、セキュリティの向上など電子化には様々なメリットがあります。一方で、電子化を行い自社の書類管理をペーパーレスで行う上で、考えておくべき課題があるのも事実です。

1.電子化した資料の利用方法と管理ルールを周知する必要がある

ペーパーレス化する上で課題となるのが、書類の保存方法によっては一定のITスキルを要することです。例えば、電子契約サービスやクラウドストレージなどを新たに導入した場合、その利用手順や管理のルールについて全社的に周知する必要があります。

社外での利用や私用端末での展開を禁止するなど、紙の書類とは異なる管理ルールを社員全員が把握し、実施できる環境作りが課題となるでしょう。

また、紙の書類ではメモを直接書き込めますが、ペーパーレス化しデータ保管になることでメモを取ることができません。そのため、Adobe「Acrobat Pro DC」のようなツールの活用も新たに検討する必要があります。

参考:
Acrobatをより便利に!知っておきたい便利な小技5選|ferret [フェレット]

2.端末やインターネット回線の不調により閲覧できなくなる可能性

ペーパーレス化を実現することで、書類の思わぬ紛失や損壊を防ぐことができますが、利用端末やインターネット回線の不調により閲覧できなくなる可能性があります。

クラウド上に保管されている場合であれば、データの紛失こそありませんが、「重要な会議のタイミングで回線不調により資料が使えない」のように、必要なタイミングで閲覧できないのは業務上のデメリットです。

バックアップや予備の端末を用意しておくことが重要になります。また、回線不調に備えて資料を利用する時のみローカルデータとして一時保存するなど、万が一に備えた対策を考えてみましょう。

3.既存の“紙の書類”をデータにする工数が発生する

もし、社内に大量の書類が保管されており、今後ペーパーレス化を行おうと検討しているのであれば、紙の書類をデータにする工数が発生することを想定しておきましょう。これから作成する書類はデータで出力すれば良いものの、既存の書類をデータ化する場合、OCR(光学文字認識技術)に対応したスキャナを利用して個別にデータを生成しなければなりません。

紙の書類のデータ化を代行するサービスがあるため、利用するのも手段と言えるでしょう。ビジネス文書のデータ化代行サービスの多くは、セキュリティ対策を行っていることが殆どですが、万が一に備えて機密性の高い書類は内製するなど、用途に応じて使い分けることも大切です。

参考:
紙文書電子化サービス - ソリューション - ビジネスソリューション | コニカミノルタ

3.管理・運用方法によってはセキュリティ上のリスクが発生する

セキュリティの向上が見込めるペーパーレス化ですが、その管理や運用方法によっては紙の書類よりもセキュリティ上でのリスクが大きくなる可能性があります。例えば、データの複製・編集・ダウンロードが自由に行える状態で保管している場合などが該当します。

また、全社的に利用ルールの徹底を行っていない場合、社員の私用端末からの情報漏洩というリスクも考えられるでしょう。パスコードを設定していないスマートフォンや、暗号化していないファイルのメールの誤送信など様々なリスクが生じます。

そのため、ペーパーレス化すれば安全という認識を持たず、あくまで管理や運用体制を整備し、セキュリティ対策を行った上で初めて安全に利用できるという認識を持ちましょう。

参考:
情報を漏洩しないための具体的対策|ferret [フェレット]

ビジネス文書のペーパーレス化どこまでできる?

ビジネス文書のペーパーレス化によるメリットと考えられる課題をご紹介しました。では、具体的にどのようなビジネス文書がペーパーレス化できるのでしょうか。

2005年4月より施行された「e-文書法」により、特定のビジネス文書であれば電子化したデータでも、紙の書籍と同様に利用できます。

具体的に利用できるビジネス文書は、経済産業省が発表している「電子化が可能な文書」から参照できます。例えば、下記のような文書をデータで保管ないし利用することができます。

・会計帳簿
・信憑書類(契約書・見積書・納品書など)
・振替伝票
・営業報告書
・取締役会議事録
・規約等

上記のほかにも、契約等を必要としない、社内のみで利用する会議資料やセールス担当者が利用する提案資料などもデータ化して利用することもできます。

参考:
[入門編]電子化が可能な文書(METI/経済産業省)
(2020年9月1日時点でページが存在しないためリンクを削除しました)

まとめ

紙の書類の電子化が普及したことによって、様々なビジネス文書をペーパーレスで取り扱えるようになりました。具体的には、会議資料だけでなく、会計帳簿、契約書や行政への提出書類まで、社内・社外問わずビジネス文書をペーパーレス化できます。e-文書法に対応している書類であれば、紙の書類と同様に「証明」できるのが特徴です。

一方で、ペーパーレス化に取り組むに当たり、電子契約サービスや管理ソフトを導入しなければならない場合があります。新たなツールを取り入れるにあたり、全社的に教育を行う上での時間的コストはデメリットといえるでしょう。

とはいえ、コスト削減や業務効率化、セキュリティ面での強化という側面から得られるメリットが大きいため、デメリットを踏まえた上で自社での導入を検討してみてはいかがでしょうか。