たった十人のファンでも何万人を動かす力になる

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飯髙:
一方で、何万人とフォロワーを持つ著名人でも本が売れないという人がいるじゃないですか。この違いはどこにあるのでしょうか。

佐藤氏:
私がいつも思うのが、SNSのフォロワーって全員がファンというわけではないんですよね。もちろん応援してくださる方も沢山いらっしゃいますが、情報収集するためにフォローしてくださってる方もいらっしゃいますし。

飯髙:
SNSでフォローする時って、とりあえずこの人を押さえておこうっていうイメージがありますよね。

佐藤氏:
たとえば、フォロワーの多い有名な方が本を出した時、フォロワー全員が、その方の本を買うわけではないですよね。私自身、そこまでフォロワーがいる方ではありませんが、フォロワーの人数と本が売れる冊数ってそこまでリンクしていない気がしています。

そもそもSNSをやっているのが、人口の7分の1程度ということを知っておくことも大切だと思っているんです。インターネットに触れない方々に対して、どういう手段でこの本の情報をお届けに上がるかっていうことが課題だと感じています。

たしかにWebの時代ではありますが、一周回ってリアルの口コミがキッカケになったりするし、私の場合、美容院というリアルな場所で応援していただけたのが大きかった。

飯髙:
友美さんの場合、SNSのフォロワーが濃いですよね。面識のある方々がフォロワーに沢山いたり。

実際に面識のあるフォロワーが1,000人以上いるんじゃないですか?だから、フェイス・トゥ・フェイスで関わるために地方を回ろうと感覚的に思えるんじゃないかと思っています。友美さんが、さとなお(佐藤尚之)さんの講座を受けていたことも影響しているのかな。

佐藤氏:
さとなおさんから受けた影響はすごく大きいと思う。「最初に出会った10人のファンをとことん大事にして、そのファンの方々をもてなしていけば、そこから数万人に届いていく」と、さとなおさんに言われたことがあって。

さとなおさんの講座を受けていた時期と、本が出版された時期が近かったのもあって、その考え方を試して販促してみたかったんです。他の著者さんに言ってやってもらうのは責任が持てないから、自分の本と自分の体で試してみようと思いました。

飯髙:
Webの場合も、熱狂的なファンを10人作れっていうんです。10人から50人、100人になる。コアなファンだけを幸せにできれば、コミュニティ形成は上手くいくという話なんですけど。実際はあまり上手くいかないんですけどね。

佐藤氏:
そうなんですね。この本の場合、どこに行ってもこの本がいいよ、と話をしてくださる方が何人もいてくれたんです。

美容師さんではなくて、例えばIT企業の方とか、お洋服のスタイリストさんとか。その方たちが、色々なところでこの本の話をしてくださって、そこで私の本を知ってくださった方が長崎の書店イベントに参加してくださったり。そういう口コミの連鎖を感じました。

「読者にとって一番良い情報を届けたい」ユーザーファーストへのこだわり

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飯髙:
友美さんは、本を執筆する上で読者のことをとても気にかけてらっしゃったと聞きました。Webでも「ユーザーファースト」という言葉があって、ユーザーに全て向きましょうと言うものなんですが、事業を進めていると見失ってしまうんですよね。読者に向いて本を書き上げたポイントはありますか?

佐藤:
その点は、編集者の綿谷さんと一番議論したところでした。そもそも「髪」のことを書くなら、本来美容師さんが書くのが一番いいんですよ。だから、ヘアライターの私が書くのであれば、美容師さんでは書けないことを書きたいと思っていたんです。ライターだから書ける話じゃないと意味がないなと。

当初、綿谷さんには「前髪を1センチ切ったら人生が変わる。みたいな切り口は作れますか」と言われていたんです。

けれども「前髪が大事」というテーマは、すでに書店に「髪」というジャンルの棚があって、いろんな人が髪について語っている状態であれば有りだと思うけど、そもそも「髪」についてそこまで誰も重要視していないときに「前髪が大事」をテーマにして興味を持ってもらえるのか、というようなことを何度もやりとりしたんです。

「髪の重要性」が一般的に認知されていない中では、「前髪が大事」という話ではなく、もっと手前の「服よりメイクよりも髪が大事」という話をしないと駄目なんじゃないかと。これが結果的にユーザーファーストな考え方だったかなと思います。

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飯髙:
一般の読者さんに「髪」に興味を持ってもらうことを心がけたんですね。その他に、執筆する上で心がけたことはありますか?

佐藤:
本の内容と一貫性がある著者になろうと思いました。本の中身と自分のキャラが乖離しないようにと気をつけていて。私ってもともとカジュアルな格好で普段すっぴんで生活していることも多いんです(笑)。

でも、この本のプロモーションをしている間は、「この人に言われてもね…」とならないように、美容を啓発するライター風の見た目に気をつけました。

サンマーク出版さんの著者養成講座を受けていた時、企画が通った段階で「見た目に説得力をもたせてください」って言われたんです。それって、見た目がダメだってことじゃないですか。だから、すごい傷ついたんですよ!でも、これはメイクして髪もブローして、痩せろということだと思って、半年で13キロダイエットしました。これも本のプロモーションのためです。

あとは、みんなに応援してもらえる「良い人」になろうって思いましたね(笑)。今の時代って部分的に良い人にみせかけても、全部透けて本性が見えてしまう時代じゃないですか。だから、ちゃんと“良い人”になろうって。性格のいい人になろうと努力しました(笑)。

飯髙:
そうだったんですね。今回、“1人の著者として”本を書き終えて、友美さん自身はこれからどうなっていきたいですか?

佐藤:
どうなっていくんだろう!どうすれば良い?飯高さん、教えて!(笑)

うーん、でも、そうですね。これからも、文章書いていこうという覚悟が決まったかなあ。
『女の運命は髪で変わる』を書くまで、どうして著者になるのが嫌だったのかなと考えたら、「自分の発言に責任を持つ」のが怖かったと気づいたんです。

でも、自分で自分の本を書いてみたら、本当に楽しかったんです。

とくに、今年出版したばかりの『道を継ぐ』は最後までどんな結論になるか自分でもわからないまま書き進めていて、最後まで本と一緒に自分も成長したと感じました。その経験は本当に圧倒的で、「やばい、これ、今までの人生で一番楽しかったな」って感じたんですよ。だから、もう一回、こういう楽しい経験をしてみたいなと思うようになりました。

だから、大変なこともあるかもしれないし、責任も伴うと思うのですが、これからもコツコツ書いていきたいなって思います。