観光目的の訪日外国人の増加に伴い、訪日外国人向けの観光サービスが増えてきました。自社でも、訪日外国人をターゲットとした新しいサービス展開を考えている方もいらっしゃるかもしれません。

観光名所を巡る従来のツアーに加え、近年では様々な分野を観光資源とした、体験型のコンテンツや地域の方との交流ができるツアーが注目を集めています。このように、新しいテーマを設けたツアーのことを「ニューツーリズム」といいます。

今回は、ニューツーリズムの種類と事例を解説します。

訪日外国人の増加

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引用:
JNTO訪日旅行データハンドブック2017(世界20市場)|日本政府観光局

アジア圏の経済成長、日本でのビザ取得要件の緩和政策などが要因となり、訪日外国人は年々増加しています。近年は特に伸び率も高く、今後も増加していくと見込まれています。

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引用:
JNTO訪日旅行データハンドブック2017(世界20市場)|日本政府観光局

*訪日外国人の87%以上が、観光目的で日本を訪れています。*その割合も徐々に増加しているため、訪日外国人をターゲットとした観光サービスのニーズは引き続き高まっていくと考えられています。

これらの背景から、今日本では、観光目的の訪日外国人に対するサービス展開が盛んになっています。

ニューツーリズムとは

ニューツーリズムとは、特定のテーマを定めた体験型の旅行スタイルのことを指します。日本の観光施策として観光庁が定義し、積極的に後押ししているサービスのひとつです。「着地型観光」とも呼ばれています。

日本政府は、2020年までに4,000万人の外国人の訪日目標を立てています。

参考:
訪日客、20年に4000万人 政府が倍増目標 |日本経済新聞

一般社団法人日本旅行業協会は、訪日外国人の増加に向けて「旅行需要の地域への分散」と提言しています。地方が主体的にサービス化していくことで、地域活性化に繋がるとも言われています。

ニューツーリズムの種類

ツーリズムのテーマは提供者が自由に決めて良いためので多種多様ですが、一例をあげると以下のようなものがあります。

・産業観光…モノづくりの現場の見学・体験。
・グリーン・ツーリズム…地方での農業体験や地元の方との交流。
・エコツーリズム…自然環境についての体験。
・ヘルスツーリズム…健康や癒しを目的とした体験。
・メディカルツーリズム…医療サービスを受ける。
・文化観光…文化的遺産や歴史的遺産の見学。
・世界遺産観光:世界遺産の見学。
・スポーツツーリズム…スポーツの観戦や体験。
・宗教ツーリズム…宗教と関わりの深い地域、建造物の見学。
・ダークツーリズム…被災地や戦争跡地の見学。
・ロケツーリズム…ドラマ、映画、アニメなどの舞台となった地の見学。

参考:
エコツーリズム、ロケツーリズム……無数の「○○ツーリズム」が現れた理由とは|訪日ラボ

上記以外にも様々なテーマのニューツーリズムが展開されています。自社の強みと訪日外国人のニーズが合致するポイントがあれば、どんなテーマでも実現する可能性があります。

代表的なツーリズム

今回は、観光庁が代表的なニューツーリズムとして挙げている、以下5つのツーリズムの事例についてを解説します。

・産業観光…モノづくりの現場の見学・体験。
・グリーン・ツーリズム…地方での農業体験や地元の方との交流。
・エコツーリズム…自然環境についての体験。
・ヘルスツーリズム…健康や癒しを目的とした体験。
・文化観光…文化的遺産や歴史的遺産の見学。

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引用:
ニューツーリズムのプロモーションに係る実態調査|観光観光庁

産業観光

技術力を知ってもらう工場見学

埼玉県は、工場見学などの産業観光による訪日外国人の誘致を強化しています。埼玉県への訪日外国人数は5年前から倍増して約27万6千人となっていますが、日本全体では2%以下です。埼玉県は、多言語のパンフレットや通訳などの用意への補助金制度を整えています。

精密板金・レーザー加工業の野火止製作所では、技術力を広く知ってもらうため、旅行会社を通して訪日外国人の見学を受け入れています。埼玉県の補助金制度を活用し、英語と中国語の会社案内ホームページとパンフレット、英語のDVDなどの作成を進めています。

参考:
訪日客さん工場見に来て! 産業観光、埼玉県が後押し|NIKKEI STYLE

グリーン・ツーリズム

日本の食文化を収穫から料理を通して体験

新潟県は、食文化と農業を組み合わせた体験型サービスで訪日外国人を呼び込んでいます。日本の食文化に興味をもってくる訪日外国人は多いため、海外の旅行会社と提携してツアーを企画しています。

新潟市では、酒米の収穫体験、コシヒカリを使った料理教室などを開催しています。ブランド米としてのプロモーションも兼ねています。収穫体験では、米と酒の関わりやそれぞれのつくり方も解説し、日本の食文化を理解して楽しんでもらうように企画を工夫しています。

参考:
訪日客、新潟県へGO! グルメと農業体験で集客作戦 |NIKKEI STYLE

エコツーリズム

国立公園を「ナショナルパーク」に

環境省は、国立公園を「ナショナルパーク」として訪日外国人にアピールする施策として、「国立公園満喫プロジェクト」をはじめました。約200億円の予算を計上し、ツアーの開発やガイドの育成、多言語対応ツールの制作などに取り組んでいます。

モデル地区として、8ヶ所が選ばれています。例えば、北海道の阿寒ではマリモのエコツアーや、眺望のいいカフェの設置などを進めています。

参考:
国立公園のブランド化 自然の保護と活用両立を |毎日新聞

ヘルスツーリズム

自然の中で観光と健康増進

長野県木曽町は、観光と健康増進を組み合わせたプログラムで誘客を進めています。地域住民が観光ガイドとして参加し、地域一体となってサービスを展開しています。

木曽町の地域にしかいない木曽馬と一緒に歩いたり、自然を体感しながら林を歩くメニューなどを実施しています。森林の空気を浴びたり、川の中に手足を入れて血流を改善させたり、地元の野菜を使用した食事を提供したりと、健康増進のための様々なプログラムを実施しています。

参考:
長野・木曽町の開田高原、ヘルスツーリズムで誘客 |日本経済新聞

文化観光

日本文化を体験できるツアーを民泊仲介サイトで紹介

アメリカの民泊仲介サイトAirbnb(エアビーアンドビー)は、訪日外国人向けに日本文化を体験できるツアーを紹介しています。和紙作りや讃岐うどんの手打ち体験など様々なメニューを用意しています。ツアーを提供する事業者と訪日外国人をネットで結びつけるサービスで、今後は20種類のメニューを100種類まで増やす計画です。

自社のみでツアーを企画するよりも集客が容易であるため、アイディア次第で人気ツアーに育てることもできるでしょう。

参考:
訪日客、日本の文化体験 折り紙、盆栽、弁当づくり… 民泊サイトのツアー仲介|毎日新聞

まとめ

ニューツーリズムはテーマが自由なので、様々な分野で取り入れられる可能性があります。ただ、日本側が「体験してほしい」ことと、訪日外国人が「体験したい」ことは異なる場合もあるかもしれません。

訪日外国人のニーズを実際の声やデータを参考に汲み取り、ターゲットを明確にしたツーリズムを企画することが重要です。観光庁が毎年、訪日外国人の現状を国別にまとめているので、参考にしてみるとよいでしょう。

参考:
観光?買い物?訪日外国人のニーズ最新状況を解説|ferret[フェレット]