2015年、労働安全衛生法が改正され、企業のストレスチェックが義務化されました。社員にとって働きやすい企業であることは、企業が成長していく上で今やひとつの重要な指標となっています。

社員の健康管理を行う人事総務の担当者も、働きやすい環境をつくるために日々試行錯誤しているのではないでしょうか。特に、目に見えにくい心の健康状態を支援する施策について悩んでいる方も少なくないでしょう。

社員の心の健康をサポートする活動全般のことを、「EAP」といいます。1980年代にアメリカの企業が取り入れ、徐々に日本でもその概念が広がってきました。

今回は、EAPの解説と、新しいメンタルヘルス対策のサービスを事例としてご紹介します。

EAPとは

EAPとは、「Employee Assistance Program」の略で、従業員の支援プログラムを指します。職場における従業員の心の健康(メンタルヘルス)をサポートするプログラムです。

1984年、アメリカ政府が公式な規定を作り、企業が取り組みを始めました。アメリカで、アルコールや薬物に依存し、業務に支障をきたす社員が増加したことがきっかけです。

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引用:
平成 28 年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況|厚生労働省

日本でも、社員が職場のストレスが原因で精神的な症状に苦しむケースが顕在化してきています。厚生労働省は、企業には社員を守る責任があるとして、EAPの導入を推奨しています。

EAPの効果

生産性の向上

メンタルヘルスに問題を抱えた社員はモチベーションが低下し、生産性も低下します。本人だけでなく周囲の上司や同僚にも、仕事量や職場の雰囲気などにおいて影響がでることもあります。

社員の精神状態と企業の業績の関連性を証明した調査もあり、社員の不安を取り除くことで、モチベーションの向上、生産性や業績の向上にも繋げることができます。

労務災害予防

近年、精神障害や過労自殺に対する労災認定基準が緩和されてきた傾向があります。労災認定基準の緩和は社員にとっては安心材料ですが、企業にとっては経済的なコストの負担にもなりかねません。

問題を抱える社員に早急に対応し、予防も徹底することで労務災害のリスクを軽減できます。

EAPで気をつけること

個人情報の保護を徹底する

メンタルヘルスに関することは、プライベートな問題であるため、周囲に知られたくないと思う人は少なくありません。社員が安心してEAPに参加できるよう、個人情報の保護を徹底する必要があります。

特に社内での情報共有の範囲には、細心の注意を払いましょう。

適正な評価を行う

普段の仕事に対する評価と、メンタルヘルスの評価は切り分けて考える必要があります。業務態度などでメンタルヘルスの評価を歪めたり、逆にメンタルヘルスの評価を仕事の評価に反映させたりといったことが無いように気をつけます。

EAPの4つのケア

2000年、厚生労働省は「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を発表しました。その中で、以下4つのケアを計画的・継続的に行うことが重要だと提唱しています。

【1】セルフケア
【2】ラインによるケア
【3】事業場内産業保健スタッフ等によるケア
【4】事業場外資源によるケア
参考:
[職場における心の健康づくり(2017年)|厚生労働省](http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf)

今回は、上記4つのケアを解説し、その支援をするサービスや事例をご紹介します。