新サービスを開発する際、最初に顧客や競合、自社の強みを分析して戦略を立てる必要があります。
多様なサービスが溢れている今、自社の強みを明確にしなければ生き残っていけません。

しかし、自社の強みを明確にすることはそう簡単ではありません。主力となる新しい事業を始めたいと思っていいるものの、競合に負けない戦略が思い浮かばず、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

戦略のひとつとして、ある特定の分野に集中し、圧倒的な種類数と低価格で差別化を図るものがあります。特定の分野で優位性を誇るため、周囲の競合は同じ分野での売上が下がることもあることから、このような戦略は「カテゴリー・キラー」と呼ばれています。

カテゴリー・キラーを理解することで、戦略の選択肢を増やすことができます。

今回は、カテゴリー・キラーの基本概念を解説します。

カテゴリー・キラーとは

カテゴリー・キラーとは、ある特定の分野において集中的に商品展開することで、圧倒的な品ぞろえと低価格を実現する小売形態のことです。

カテゴリー・キラーが進出することで、競合店舗の同じカテゴリーの売上が極端に減少してしまい、縮小や撤退に追い込まれることから名付けられました。

例えば、大量の商品を低価格で展開するファストファッションが近年増えてきています。このファストファッションの登場により、服飾小売店やデパートの服飾部門は大きな打撃を受けました。
ファストファッションは、「ファッション業界におけるカテゴリー・キラー」と言えます。

百貨店とのちがい

カテゴリー・キラーと対照的に比較されるのが、総合デパートや百貨店です。総合デパートや百貨店は、服飾・食品・アクセサリー・スポーツ用品など、分野を絞らず多種多様な品揃えを提供しています。

一方、カテゴリー・キラーは、特定の分野での豊富な品揃えを誇ります。また、大量仕入れなどによって徹底的にコストを削り、低価格で商品を提供できることも強みです。

カテゴリーキラーの優位性

圧倒的な品ぞろえ

カテゴリー・キラーは、特定の分野に絞って大量の商品を大規模な店舗で提供します。そのため、デパートの一角程度の品揃えでは立ち向かえません。

カテゴリー・キラーの店に行けば、その場で多くの商品と比較・検討できることも、顧客にとって大きなメリットとなります。

コスト削減による低価格化

カテゴリー・キラーは一度に大量の商品を入荷することで、入荷コストを徹底的に削っています。また、近隣に複数の店舗を構えて在庫を共同管理するなど、商品に転嫁されがちなコストを徹底的に削っています。

選択と集中による戦略

カテゴリー・キラーは、既に競合にシェアを独占されている地域でも、挽回できる可能性があります。注力する分野を決め、全ての資源をそこに投資して、競合に圧倒的な差をつけることが重要です。

今後の課題

これまで優位性を維持してきたカテゴリー・キラーも、インターネットの普及により、競争力を奪われつつあります。

カテゴリー・キラーの強みであった「豊富な品ぞろえ」と「低価格」というポイントにおいて、Amazonを筆頭としたネットショップが台頭しはじめています。最近では、店頭で商品を見て、気に入ったらネットショップで購入するという「ショールーミング」が流行しています。

今カテゴリー・キラーと呼ばれている企業は、価格などの表面的な要素だけでなく、自社独自の付加価値を提供するために動き始めています。

カテゴリー・キラーの企業例

衣料品

ユニクロ

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ユニクロ

ユニクロは、流行に合わせた低価格な衣料を、セルフサービスで販売するというユニークな戦略を打ち出しています。高品質な衣料を低価格で販売することで消費者の心を掴み、従来の総合スーパーや百貨店の衣料品売り場にとって脅威の存在となりました。

ZOZOTOWN

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ZOZOTOWN

ZOZOTOWNは、様々なブランドの商品を出品して販売する「モール型」ネットショップです。年間商品取り扱い高は2017年3月時点で2,110億円、売上763億円と、圧倒的な高収益と成長を続けています。

ZOZOTOWNは自らファッション業界のカテゴリー・キラーと認識しており、競合は百貨店であると発言しています。

日用家電

ヨドバシカメラ

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ヨドバシ.com

ヨドバシカメラは、都心に大規模な店舗を構える家電量販店です。利便性のいい都心で成長を続けてきました。

近年流行する「ショールーミング」を逆手にとり、自社ネットショップを立ち上げました。専門性の高さを活かしたサービスと自社運送の仕組みで購入を促しています。

ヤマダ電機

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ヤマダウェブコム

ヤマダ電機は、グループ全体で国内約4,400店舗を構える業界1位の家電量販店です。郊外型の「テックランド」、都市型の「LABI」、傘下のベスト電器やマツヤデンキなどを運営しています。

最近はショールーミングや地方の人口減少が原因で、郊外店舗の閉鎖を進めています。住宅部門など家電以外の異業種への参入などで、競争力の強化を狙っています。

玩具

トイザらス

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トイザらス

トイザラスは、玩具の大型専門店です。アメリカでは800店舗以上を展開しており、日本でも「トイザらス」の名称で160店舗以上を展開しています。子供向け玩具の専門店として高い認知度を誇り、カテゴリー・キラーの代表的な企業となっています。

しかし、2017年、アメリカのトイザラスが破産申請を行いました。インターネット販売に侵食され、顧客が流出してしまったことが大きな原因です。日本の事業に影響はないとのことですが、今後を見据えた対策が必要となってくるでしょう。

参考:
専門店の強み、ネットが侵食 米トイザラス破産申請|日本経済新聞

まとめ

カテゴリー・キラーは、これまで圧倒的な差別化で競合の小売店舗から抜きん出ていました。しかしインターネットの普及をきっかけに、ただ品揃えを増やし価格を下げるだけでは、同じ条件で並ぶネットショップには勝ちづらくなっています。

顧客にとって利便性の高いサービスの提供はもちろん、それ以外でも自社の強みを活かした独自の戦略を立てていくことが重要です。

これから新しい事業やサービスを立ち上げようと思っている方は、カテゴリー・キラーのように強みを引き立てつつ、自社にしかない付加価値も合わせて提供できるよう考える必要があるでしょう。