皆さんこんにちは、日本マイクロソフト株式会社の澤円です。

第1回目の記事「プレゼンテーションはなぜ“あなた”を幸せにするのか。ビジネスから日常生活まで活かせる理由」はいかがでしたでしょうか?

プレゼンテーションへの興味や期待が高まってくれていることを願うばかりです。

私の元には、「プレゼンスキルを向上させたい」「次の社内イベントで最高のプレゼンをしたい」といった依頼が頻繁に送られてきます。

もちろん、それらを承るのは大歓迎なのですが、最初のボタンをかけ違っていることが多いようです。実は、スキルの向上や良い振る舞いに着目するよりも、もっと大切なことがあります。

今回は、私が考える「プレゼンテーションにおいて最も大事なこと」についてお伝えします。

参考:
プレゼンテーションはなぜ“あなた”を幸せにするのか。ビジネスから日常生活まで活かせる理由
  

プレゼンで大事なことは“繁盛するレストラン”から学べる

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"プレゼンが上手くなりたい"という方の多くが求めているのは、主に以下のようなものです。

「上手く話せるようになりたい」
「ステージ上でかっこよく見えるようになりたい」
「緊張せずに話せるコツを知りたい」

もちろん、これらの要望はよく理解できます。

そして、プレゼン成功のためには上記で挙げた要望を解決するスキルは大事な要素であることは間違いありません。こうしたスキルは、実は「Better to have(持っていた方が良い)」だと思っています。

つまり、「備わっていると大きなプラスになるけど、必要不可欠とまではいえない」というレベルのものです。

プレゼンの最も重要なことを説明する時、私がよく引き合いに出すのは「レストラン経営」です。
  

繁盛しているレストランが重視していること

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さて、ここで皆さんに質問です。

レストランを繁盛させるために必要な要素は何だと思いますか?

飲食店の選択肢がない地域であれば、競合店がそもそも少ないため、何も考えなくてもある程度のお客さんは期待できるかもしれません。ただし、「繁盛させる」となったら、競争のあるなしにかかわらず、共通したチェックポイントがあると考えられます。

まず、何といっても「味」です。

あまりにも不味いレストランであれば、話のネタとして一度は行くかもしれませんが、その後リピーターになるかというと疑問ですよね。そのため、美味しい料理は、繁盛するレストランにとって必要不可欠な要素と言えます。

どんな顧客層に対して、「何の料理を提供するのか」「どういったレシピを選択するのか」というのも重要なポイントです。いくら味が良くても、地域のニーズに全く合わないカテゴリーの料理を出したら、それに"お客さんにどう楽しんでもらうのか"というのを、経営者自身が理解していないとレストランを繁盛させるのは難しいでしょう。

ここまで「味」について話をしてきましたが、続いてはレストランの立地についてです。立地ももちろん重要なポイントです。お酒を楽しむお店にもかかわらず、車以外の選択肢が無い地域にあると、経営が難しいのは明白です。

また、日々のオペレーションも大事です。店舗内を丁寧に清掃する、調度品を綺麗に並べる、トイレ掃除は欠かさない……やるべきことはたくさんあります。

これらのことは、全て「開店前に済ませるべき内容」です。開店してからでは、上記のことを修正するのはとても大変です。

全てお客さんが来る前に計画し、実装しておかなくてはなりません。
  

レストラン経営はプレゼンテーションに全て活かすことができる

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レストランを繁盛させるために行うべき事は全て、プレゼンに通じています。

美味しい料理はコンテンツの内容に、そして想定顧客層は、プレゼン相手のプロファイリングに相当します。店舗内やトイレをきれいにしたりすることは、プレゼン資料の構成や仕上げに通ずるものがあります。

どんな方に来てもらい、どう食べてもらったら成功なのか」を定義することが大事です。

ランチタイムにフォーカスして、とにかく効率よくコストパフォーマンスの高いおいしい料理を出すのも1つの選択ですね。気軽なディナーを楽しめるイタリアンで、幅広い世代に楽しんでもらうのも素敵です。とっておきの日に来てもらえるような特別な和食屋さんで、記念になる夜をプロデュースするのも最高です。
  

ビジョン:プレゼンを聞いた人の理想的な状態を考える

「誰がどうなると成功なのか」を定義しなくては、レストランを繁盛させることはできません。

これを私は「ビジョン」と呼んでいます。

ビジョン無くして、何事にも成功はないのではないか、と考えています。プレゼンもしかり。「自分のプレゼンテーションを聴くことで、誰がどのような状態になれば成功なのか」を定義しておかなければ、プレゼンで大きな成功を収めることはできません。

ビジョンがなくても、何となくそれっぽくはプレゼンできると思いますが、この連載は「もっとレベルの高いプレゼン」を目指す方に読んで欲しいと思っています。

今はそれほど得意でなくても、ビジョンを持ってプレゼンをすることを習慣づければ、大きな成功を手に入れることができます。逆に、目標設定を低くすれば、それ以上の結果が得られることは絶対にありません。ぜひ、大いなるビジョンを作ってからプレゼンをすることにしましょう。
  

核:プレゼン内容にインパクトを持たせる

また、レストランで出す料理そのものにおける、最大の魅力を定義することも忘れてはいけない重要なポイントです。

「あっさりとした塩味」や「サクッとした歯ごたえ」や「しっかりと残る後味」など、これらは意図的に作り出さなければ、出たとこ勝負の再現性のない料理になりかねません。

私はこの要素をプレゼンにおいては「」と呼んでいます。この「核」がないプレゼンは、味気のない料理のようになります。

「なんか、味がぼんやりしてるね」
「これ、塩の味しかしないね」
「甘いのか辛いのかわからない料理だなぁ」

致命的に不味いわけではないけれども、今1つ魅力のない料理というのも困りものです。

プレゼンも同様に、核がしっかりとできていなければ、聴衆にインパクトを与えることはできません。核がどのようなものなのかは、この連載の中でしっかりと深掘りしていきますので乞うご期待ください。
  

実装:聴衆を喜ばせるためのプラスアルファの要素としての「振る舞い」

そして、プレゼンテーションにおける「話し方」「姿勢」「身振り手振り」のような“振る舞い”は、レストランにおける配膳にあたります。

ホールの担当者の人たちが、注文を取ってからでき上がった料理を運んでテーブルに置いてくれる、あの一連の行動に当てはめることができます。もちろん、これはとても重要な要素です。

極端に愛想の悪いウェイトレスさんや、注文をいつも間違えるウェイターさんでは、お客さんはリピート来店してくることはないでしょう。ましてや、お盆の上の料理を3回に1回全部落としてしまうようでは、経営そのものが成り立ちません。

ウェイターさんの振る舞いは、非常に重要な要素であることは間違いありません。ただ、いくらホールスタッフの態度が良くても、肝心の料理が不味かったり店舗が極端に不潔だったりすれば、繁盛させるのはかなり難しいすよね。

まずは開店前の準備を徹底的に行いつつ、確実にお客さんが喜ぶ形で料理をサーブできるように配膳のフローを考えること。プレゼンもこのような考え方で進めるのが成功への第一歩です。

この要素を、この連載の中では「実装」と呼ぶことにします。
  

まとめ

私はプレゼンテーションを上記で紹介したように「三層構造」で捉えています。

1.「ビジョン」
成功を定義する最も重要な要素

2.「核」
プレゼンのコンテンツにおいてなくてはならない要素

3.「実装」
コンテンツの作成方法や話し方など、いわゆる聴衆の耳目に触れる部分のプロデュース

三層構造をしっかりと積み上げていくことで、皆さんのプレゼンテーションは完成度を高めていくことができます。この構造を意識せずにプレゼンを100回やっても、上達しないどころか変な癖がついてしまいかねません。

また、如何なるプレゼンも自分自身で全てのポイントが言語化できていなければ、聴衆の面前で頭が真っ白になりかねません。ぜひともこの連載を続けて読んでいただき、しっかりとプレゼンに対する意識付けをしてもらえれば嬉しく思います。