私たちの周りでは、何かを知らせるために視覚的な要素だけではなく、「音」を使って知らせることがあります。

音を使うことで、ほかの作業をしていたりして手が離せない時でも、何らかのメッセージを伝えることができます。つまり、音を統合して初めてユーザー体験(UX)が成立するという意味では、サウンドUXとも呼ぶべき音のUXも考えはじめたいところです。

今回は、サウンドUXを効果的に活用"する上で押さえておきたいポイントをご紹介します。
  

次代のUXの基本=VX+AX

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画像引用元:pexels.com

私たちの生活の中で、音は必要不可欠な要素となっています。

私たちの日々は目覚まし時計の音で始まり、照明のスイッチの微かな音で終わります。音は日常を取り巻く様々なところで用いられていて、音楽を聴いて楽しむ目的で活用することもあれば、運転している時に聞くニュース番組のような重要な情報収拾の目的でも利用しています。視覚がなくとも、音で聴いて情報収拾をしたり、時には重要な判断をすることも大いに有り得るのです。

ところが、デジタルプロダクトに関しては、この原則は当てはまるのでしょうか?

アプリをダウンロードして開いたり、Webサイトを見たりする時には、私たちが考えるのはどのように「見るか」であり、どのように「聴くか」ではありません。デザイン業界は視覚的な経験ばかりに焦点を当て、聴覚的な経験にはこれまで大きなリソースを割いてきませんでした。

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言うまでもなく、適切に音を活用することは、ユーザーの利便性を大きく向上させ、結果的にユーザー体験(UX)の向上にもつながります。スマートスピーカーやスマートフォンの音声AIのように、サウンドだけでインタラクションを表現するデバイスまで登場しました。

つまり、従来のUXVX(Virtual Experience=視覚的な体験)とほぼイコールだとすれば、これからは(実際はすでにもうそうですが)これにAX(Auditory Experience=AX)を足して考えなければなりません。

UX = VX + AX + α

「+α」の部分にはサービスやアプリ「付加価値」が入ります。

例えば、ポケモンGOであれば「位置情報」「ゲーミフィケーション」、あるいはApple Watchでは独特な「振動」(バイブレーションというよりはクリック)で何らかのお知らせを知らせてくれる、そうした視覚や聴覚以外の付加価値的な要素はあるでしょう。

ただし、そうしたアプリごとの付加価値を除いても、ほぼ全てのアプリWebサイトの基本は「VX+AX」です。サウンドは適切に使えば強力で役立つツールになります。
  

AXを体現する5種類のサウンド

そこで、下記では、サウンドが特に重要になってくる場面で表現される5つの種類のサウンドを確認してみましょう。
  

1. フィードバック音

PCやスマートフォンなどのデバイスユーザーインタラクションを行う際、最もよく使われるのがフィードバック音です。

日常的にも、ボタンを押したら「カチッ」という音がしたり、電話のダイヤルを押せばダイヤル音が鳴ったりと、私たちのアクションに対して「受け付けている」という合図を知らせる音は多くの場面で使用されています。

フィードバック音は、ウェアラブルデバイスやIoTデバイスでも効果を発揮します。

例えば、Google Home Miniはボタンレスなデザインとして知られていますが、側面をタップすることで音量調整することができます

これから先、多くのデバイスにスクリーンが搭載されていなかったり、あっても限定的な使用になる可能性があります。そうした場合にも、音を存分に活用することで課題が解決できそうです。
  

2. 通知音と警告音

何か別の作業をしている時に、ある動作が完了したり、何かを知らせたいという意図で発せられる音があります。日常生活でも、洗濯機が回し終わった時、お米が炊けた時など、多くの電化製品が「通知音」を採用しています。

これは、デジタルデバイスでも大いに活用できます。
通知音を活用することで、ユーザーが別の作業に没頭している時でも、ある程度離れたところにいても注意を引き付けることができるのです。

こうした通知音は、LINEやFacebookメッセンジャーなどのアプリケーションでも、メッセージが来た時に音が鳴るような設定になっています。また、フィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスでは、毎日のゴールに対しての達成度合いを「音」で通知してくれます。一方、同じ通知音でも、危険を知らせる重要なシチュエーションでは、「より不快な」音を使ってユーザーに危険を知らせます。

駐車する際に、ギアを「P」に合わせると必ず鳴る「ピー……ピー……」という音、macOSで次の予定が迫っている時に発する音。こうした警告音が不快なのは、あえてそうすることによってユーザーに細心の注意を払わせるためです。
  

3. アクセシビリティ

音がアクセシビリティの観点で活用されるケースもあります。

日常生活の中では、目の不自由な方が信号を不自由なく渡れるように、信号機に「音響用押ボタン」が設置されているところがあります。信号が青になっている間音を鳴らすことで、「今は渡ってもよい」という合図になります。

一方、iOSでも、アクセシビリティ設定で「選択項目の読み上げ」や「画面の読み上げ」を行うことができ、日本語では「Kyoko」「Otoya」「Siri (女性)」「Siri (男性)」の中から選ぶことができます。
  

4. ブランディング

サウンドロゴ「コンビニ」編

様々な企業が、ブランディングに「サウンドロゴ」と呼ばれる音を活用しています。

「松屋」「すき家」「なか卯」など、大手牛丼チェーン1つとっても、それぞれにユニークなサウンドロゴが店内でも流れています。音を聞いたらブランドが想起されるという、マーケティングの側面で企業はユニークな音を活用しています。
  

5. パーソナリゼーション&コミュニケーション

最後に注目したいのは、パーソナリゼーションの分野です。Google Assistantにはすでに誰が話し手か識別できる機能が搭載されており、「OK Google、私は誰?」というと「はい、○○さんです」**という返事ができるようになっています。また、Siriは使用者の名前を記憶し、返答する際に名前を付けて返答したり、より人間的なコミュニケーションを実現しています。

最近では自宅でもペットのように扱うことができる小さなロボットが増えましたが、こうしたロボットも、音を使ってユーザーとのコミュニケーションを図るケースは多いようです。音によってユーザーとの感情的なつながりを築いていくデバイスは、今後も増えてくるでしょう。
  

サウンドを活用するときの注意ポイント

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1. サウンドの使用場面を限定する

音をフィードバックや通知で使う場合には、視覚的な要素と違って使用シーンが限られている点に留意しましょう。聞いていて「不快」にならないような音でさえ、何度も何度も繰り返し発せられることで「不快」でいらいらさせるものに変わってしまいます。

同様に、予期できない音は人々を不快にさせてしまう恐れがあります。2000年代初めにAOLがメールソフトに、メールが到着した時に「You’ve Got Mail.(メールが来ましたよ)」という通知を組み込みましたが、今ではメール通知は単なるベル音に置き換えられています。
  

2. 適切な種類のサウンドを使う

機能に取り入れるべき音をデザインする時に、「コンテクスト」を重視する必要があります。

「コンテクスト」とは本来「文脈」の意味ですが、ここではユーザーがどのような場面でどのようなやり取りをするか、という個々の状況のことを指します。例えば、「メッセージを受信する時にテキストを受信する時」と「添付ファイルを受信する時」で、サウンドのデザインを別々にしたほうが、 ユーザーは音だけで何が起こっているかを判断できます。

ビジュアルデザイナーがカラーパレットを使うように、サウンドデザイナーは「音の」パレットを使ってみましょう。もちろん、ユニークさが必要だとは言っても、「変な」音を出す必要はなく、個々のアクションに対するフィードバックが ユーザーに伝われば問題ありません。
  

まとめ

視覚的なデザインは得意でも、聴覚的なデザインはどうすればいいのかわからない、そんなケースもあるでしょう。

まずは「何のために使われる音なのか?」を考えることが、スタート地点となります。

見た目はいいのに、何か物足りない。

そんな時には、ぜひ「音」にこだわってみてはいかがでしょうか。