導入の効果を最大化するために

ここからは、業界の垣根を越えて、これからサブスクリプション型のサービスを導入するうえでは、どのような要素が大切になってくるかを考えます。

サブスクリプション型ならではのメリットが明確であること

導入に際して、サブスクリプションモデルとして提供することによるメリットが明確であることが求められます。従来のモデルから転換する際に、魅力的なポイントを提示できるかどうかが重要です。

先程の野郎ラーメンの場合は、「月額定額制で食べ放題」という明確な訴求ポイントがありました。
サブスクリプションへ転換することによって、顧客を始めとした関係者にどういうメリットがあるのかを考えることがまず大切です。

買って終わりではない、継続的な関係性

従来のプロダクトの販売モデルと比べ、サブスクリプションモデルは顧客と長期的な関係性を築くことが非常に重要になります。顧客のサービス利用状況を詳しく把握したうえで、それぞれに合わせ最適なサービスを提供することが求められるのです。

例えば、株式会社スタートトゥデイが運営するファッションECサイト「ZOZOTOWN」の「おまかせ定期便」というサブスクリプション型サービスがあります。

申し込み時にコーディネートのテイストや、色や柄、サイズ感や予算などの様々な質問へ回答してもらうことで、それぞれのユーザーに合わせた商品を定期的に配送するというものです。

サービスの利用に際してかかる料金は送料のみで、届いた商品の中から欲しい商品のみを選んで購入できます。気に入らなかった商品は無料で返品が可能です。

また、2017年末に発表された採寸ボディースーツ「ZOZOSUIT」の計測データを利用することによって、ファッションECが抱えるサイズ感などの課題にも対応。「オシャレが苦手」というユーザーのニーズに答え、SNSで反響を呼んでいます。

サブスクリプション型のサービスにおいては、継続して利用してもらい、ライフタイムバリュー(顧客との契約開始から契約終了までの期間でもたらす利益)を向上させることによって収益を生み出します。したがって、それぞれのニーズを丁寧に拾うことが大切なのです。

参考:
【おまかせ定期便】あなたに一番似合う洋服を定期的にお届け - ZOZOTOWN

[【ZOZOSUIT】服が人に合わせる時代へ - ZOZOTOWN] (http://zozo.jp/zozosuit/)

プランを複数用意して、ハードルを下げる

自社のサブスクリプションサービスを提供するうえで、そもそもサービスの利用を開始してもらえなければ話になりません。つまり、入り口の設計が大切です。

定額制音楽ストリーミングサービスのSpotifyは、こうした点で非常に参考になるでしょう。
同サービスは、ユーザーの状況に応じて、複数のプランを提供しています。

登録されている楽曲が自由に聴ける「Spotify Premium」が有料プランとして存在しますが、無料のトライアル期間を設けることで、ユーザーはまず機能を体感できます。

また、トライアル終了後も、広告付きのシャッフル再生機能のみは無料で利用出来るなど、ライトな音楽ユーザーに対応しています。

他にも、学生のために割安の「学生プラン」や、家族全員でプレミアム機能の利用が可能になる「ファミリープラン」を提供しています。顧客の生活環境に応じて、柔軟なプラン変更が出来る体験は、サブスクリプションサービスにおいて大切な部分です。

これによって、様々な状況の顧客に対して、利用開始、継続のハードルを下げることに成功しています。

“解約率”に着目すること

サブスクリプション型サービスの最適化を図るうえで、特に追うべき重要な指標があります。それが*”解約率”*です。

「THE SUBSCRIPTION ECONOMY INDEX 」によれば、サブスクリプションサービスの解約率は平均で20%から30%の間であり、この解約率を下げることが非常に重要であるとされています。

売り切りではないビジネスモデルであるため、一定の期間内で解約されてしまうと、収入が顧客獲得のコストを下回り、顧客単位での赤字につながることが理由の1つです。

そして何よりも、解約率の上昇は、ユーザーのサービスに対する不満の現れでもあるため、この解約率を特に重要な指標として追っていき、測定していくことが非常に重要になります。

参考:
THE SUBSCRIPTION ECONOMY INDEX 3RD EDITION NOVEMBER 2017