意外と知られていないかもしれませんが、ドイツはスタートアップ企業が数多く生まれています。Microsoft社に買収された「Wunderlist」や、音楽サービス「SoundCloud」など、実はドイツ発のサービスです。

ダイヤモンド・オンラインの「なぜベルリンがスタートアップの聖地になったのか?(2020年8月4日時点でページが存在しないためリンクを削除しました)」を参照すると、なんとドイツのベルリンでは年間に500ものスタートアップが生まれているそうです。

アメリカのシリコンバレーが失速するなか、テクノクラブやコーヒーショップ、一風変わった住居などが混じり合っているベルリンは、いまやスタートアップの聖地

そこで今回は、スタートアップの聖地と呼ばれるベルリンを中心に2018年必見のドイツの注目スタートアップをご紹介いたします。パリやロンドンに比べて物価も安いので、ベルリンはドイツだけでなく世界中の起業家を集めています。どんなスタートアップがあるのか、チェックしてみましょう。

参考:
MS、「Wunderlist」開発企業6Wunderkinderを買収 - CNET Japan

2018年必見のドイツの注目スタートアップ5選

1. フリーランスのための強力な決済ツールを提供「Kontist」

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引用:Kontist

「Kontist」は、ドイツのフリーランサーのための決済ツールや電子商用口座を提供している、ベルリンのフリードリヒ通りに拠点を置くスタートアップです。

日本ではクラウド会計ソフトのfreeeMFクラウド会計で会計のオートメーション化は浸透しつつありますが、Kontistではアプリ上で税金の計算や帳簿の自動化を行うことができます。

さらにユニークな点として、銀行口座を持っていなくとも、アプリ上で10分未満で商用口座を開くことができます。口座を開くと、マスターカード加盟店対応の物理的なデビットカードが送られてきます。このカードはすでにアカウントと連携してあるので、あとはビジネス用の購入をこのカードで行えばいいだけです。

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物理カードでシームレスに決済

もちろん、レシートの自動読み込み機能や、取引の手動管理など、他にも便利な機能が盛りだくさんです。

物理的なマスターカードを利用しない場合でも、バーチャルなマスターカードを使うことができます。この場合、利用料は無料です。また、マスターカードの物理カードを発行する際には年間29ユーロ(約3,800円)かかりますが、3,000ユーロ以上利用すれば年会費は一切かかりません。

2. 21世紀の物流に欠かせない存在「FreightHub」

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引用:FreightHub

「FreightHub」は、国際物流をオンラインでリアルタイム管理できるシステムを提供している、ベルリンのザールブリュッカー通りに拠点を置くスタートアップです。

物流は日本国内でも日々ニュースになっていますが、国際物流を円滑に行うのはさらに骨の折れることです。適切な取引先をグローバルな視点で選んだり、情報を交換したり、荷物を積んでいる船や飛行機が現状どうなっているかを確認したりと、課題は山積しています。

FreightHubを使えば、これまで電話などでアナログに行なっていた作業を、たった1つのダッシュボードで完結させることができます。全ての配送が美しいインターフェイスの中で管理され、サプライチェーンのリアルタイムな状況が簡単な目視で確認できるようになります。

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FreightHub ダッシュボード

「画期的!」と国際物流業者から絶賛されているのが、それぞれの船や飛行機が現在どこで何をしているのかをマップ上で示す*「カーゴ・トラッキング」*という機能です。寄港しているのか、運送中なのか、倉庫まであとどれくらいの距離なのかが見える化されるので、マーケターやCEOは売上予測を立てやすくなります。

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カーゴ・トラッキング

FreightHubでは、AmazonのFBA(Fulfillment by Amazon)と呼ばれる、小売業者がAmazonの倉庫経由でAmazonプラットフォーム上で商品を売るサービスにも対応しており、ヨーロッパからアメリカへの商品輸出へのトータルサポートも行なっています。FreightHubを使えば、国際物流が安全になるだけでなく、市場を拡大させることも可能になります

3. グローバルなIoTプラットフォームを作る「Moeco」

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引用:Moeco

Moecoは、2017年にベルリンで創業したばかりの、IoTソリューションを提供するスタートアップ企業です。

現在、様々な企業がIoT業界に参入していますが、Moecoは何が特徴的なのでしょうか。Moecoが提供しているのは、オープンソースのブロックチェーンによるIoTデバイスの接続方式です。

通常のWi-Fiなどでインターネットに接続してIoT製品を接続する方式では、接続するデバイスが直接インターネットと繋がっていないと作動せず、プライバシーの危機にも晒され、バッテリーも消費しやすいという問題がありました。しかし、Moecoでは、これとは全く違う2つの方法で、IoT製品を接続します。

1つは、Moeco BLE(Bluetooth Low Energy technology)と呼ばれる、Bluetoothを介した接続方法です。例えば、スマートフォンに専用アプリを入れておけば、そのアプリの近くにあるデバイスがビーコンのようなセンサーによって、ペアリングせずにデータの送受信を行えるようになります。必要なのはアプリを入れるだけで、それ以外は何もする必要はありません。

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Moeco BLE

もうひとつが、Moeco LR(LPWAN technology)と呼ばれるものです。これは、コンセントに挿すネットワーク送受信機を家庭やオフィスに置いておくことで、パーミッション不要でシームレスな接続が実現するというものです。

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Moeco LR

行政でスマートシティを構築する際にも、特別なインフラを構築する必要がなく、市民のスマートフォンやLPWANデバイスでスマートシティを構築できるため、非常に低コストです。ブロックチェーンを利用しているため安全で、開発しやすいのもメリットだと言えます。すでにロンドンではプロジェクトが進んでおり、今後はドバイ、香港、バルセロナでもパイロットプロジェクトが進められる予定です。

4. 機械の「目」を作る企業「Blickfeld」

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引用:Blickfeld

深層学習を取り入れた自律的な機械を作成するには、様々なアルゴリズムを動的に処理できる*「脳」や、そこで何が起こっているのかを認知する「目」*が必要になります。「Blickfeld」はベルリンに次いでスタートアップが集積するミュンヘンで、このようなテクノロジーを開発するスタートアップです。

Blickfeldが主に開発しているのは、LiDARとよばれる自立式のレーザーで、物体の認知やマッピングを行うソフトと合わせて利用することで、低コストでロボットに「目」を取り付けることができるようになります。

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LiDAR

Blickfeldが開発しているセンサーをLiDARと組み合わせることで、3Dイメージを作成することができます。200m以上の物体も捉えることが可能で、動画として保存することも可能です。

2017年10月には投資ラウンドで425万米ドルを獲得したBlickfeldは、自動運転や新種のドローン開発などに貢献しています。アメリカ・テキサス州オースティンで行われているデジタルの祭典SXSWでも、ドイツの注目スタートアップとして、大きく注目を集めました。

5. 銀行業の資格を持ったテックスタートアップ「solarisBank」

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引用:solarisBank

「solarisBank」はベルリン大聖堂の近くに拠点を置いている、銀行業資格を持ったテクノロジー企業です。

銀行業資格を持っているからKontistのようにB2Cサービスを行なっているというわけではありません。solarisBankはB2Bのビジネスモデルを採用しており、企業にさまざまな銀行系APIを提供することで利用料で利益を稼ぐ、プラットフォーム企業なのです。

solarisBankでは、ブロックを積み上げるように、簡単に自分たちのビジネスモデルに合わせた決済方法を組み立てることができます。デビッドカードやギフトカードによる決済だけでなく、ローンを組むことさえできます。

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solarisBankのAPI群

2017年3月には日本のSBIホールディングスからも出資を受けており、国内外から合計で9500万ユーロ(約123億円)の出資金を獲得しています。FinTech領域では、銀行APIとの接続による画期的な金融サービスの登場が期待されています。solarisBankは今後、ヨーロッパだけでなくアジアでの海外展開も目指しており、SBIグループとアジア地域を事業対象とする合弁会社の設立も予定されています。