編集側が記事広告の商品理解を高めるべき

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(左から)長谷川賢人 氏、清水直哉 氏、飯髙悠太

モリ 氏:
記事広告をどのように売って、どのように継続して受注するかは、事業サイドとして大切なことですよね。記事広告のセールスをやってきた清水さんと飯髙さんはどのように商品設計をしているのですか?

清水 氏:
僕たちは「旅する文化を創る」ためにメディアをやっています。会社の売上の3割は記事広告なので、もちろん商品設計はとても大切です。広告を出稿してもらうときには、僕らにしかできないことや他のメディアとの違い、つまりアイデンティティやユニークさを考えながら商品設計をしています。

モリ 氏:
自分たちならではの価値を考えて、そこと連動させながら商品を作っているということですね。ferretではどうですか?

飯髙:
事業サイド側からの話ですが、ferretではメディアコミュニティの枠を提供しているという前提で商品設計をしています。ferretはマーケティングに関心がある人たち向けのメディアです。記事広告ってそのコミュニティの枠を提供しているんですよね。商品設計として、コミュニティ自体に価値があるのだからそれに見合う金額で販売すべきです。
そのコミュニティにあった商品を相応しい金額で提供することを大事にしています。

モリ 氏:
編集・ライター視点では、記事広告の商品設計についてどのように捉えていますか?

長谷川 氏:
編集も商品理解を高めるのは大事だと思うんですよね。以前、イベントで会った人に自分から記事広告を売り込んだことがあったんです。メディアの編集者であれば、自社の媒体資料は当然頭に入っているわけです。発注する上で相手が求める情報を把握して、その場で次のアポを取り付けました。

モリ 氏:
編集側がそれだけ情報を把握できていると、記事広告の受注から制作もスムーズに進みそうですよね。代理店が間に入るなど、関係者が増えたときには情報の受け渡しに苦労しそうですよね。

長谷川 氏:
クライアントとの間に代理店を挟んでいると、セールス、編集、ライターと制作側へ情報が降りてくる速度がどんどん遅くなりますよね。そもそも、代理店とセールスはクライアントのことを考えていて、編集はメディア・読者のことを考えていることが多いから、「誰を向いているか」が違うんです。先ほどの話でいうと、代理店やセールス側の人数が多いんですから、ズレていくのは当たり前です。

モリ 氏:
セールスの目標もありつつ、編集サイドから「うちのメディアはこれが強い」ってセールスや代理店に伝えていくようにコミュニケーションができるとズレが解消されるかもしれない?

長谷川 氏:
「自分たちが何者か」「どんなビジョンを持っており、強みは何か」と言えるのは大事ですよね。一例として、僕が勤めていたメディアジーンでは媒体説明会を定期的に開いて、広告代理店を招き、メディアについて知ってもらう機会を設けていました。

記事広告の効果はどうやって測定する?

モリ 氏:
記事広告の目標設定や効果測定はどのようにしていますか?

飯髙:
そもそも前提として、記事を読んですぐに物を買うってほぼないですよね。100記事読んで2〜3個ものを買ったらいい方です。なので記事広告を評価するときに、基本的にひとつのコンテンツで直接コンバージョンはありえないと思っています。

例えば、Web接客ツールの記事広告を読んだとしてよいと思ったら、まず記事を離脱してGoogleなりで検索して調べますよね。その後上司と話し合って、1週間後に資料請求する。この場合、多くの企業は最後の資料請求につながった部分だけ評価しています。けれどもきっかけは記事広告です。そこを評価できれば記事広告の価値はグッと上がります。なので、ビュースルーコンバージョンの計測は大事ですね。

あと、記事広告をビューだけで評価するのも違うと思います。マーケティング視点でいうと、記事広告は滞在時間や読了率で測った方がよい。記事広告を読んだ結果、読者の行動を変えることが重要なのだから、しっかり読まれていることを評価するべきなんです。

モリ 氏:
最終的なコンバージョンにつながったかどうか、読者のエンゲージメントなどを測れるといいってことですね。

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長谷川 氏:
以前、ギズモード・ジャパンとライフハッカー[日本版]で、同じ商材を紹介してビュースルーコンバージョンを計測したことがありました。そうしたら、ギズモードの読者は読んだ瞬間にコンバージョンをするユーザーが多く、ライフハッカーは、1週間を過ぎたあたりでも数値が変わらなかったんです。

これってつまり、読者層の違いなんですよね。ギズモードの読者はギズモードを信頼しているから即コンバージョン。ライフハッカーの読者は比較検討層が多い。ビュースルーコンバージョンを計測することで、客質の違いが可視化できたのが興味深かったです。こういう計測をすると、自分たちの強みが見えますよね。

記事広告でただPVを稼ぐという概念が入ってくると、このあたりの測定であるとか評価がおかしくなりがちです。自社メディアとして、評価をどうするかが大事だと思いますね。セールスとしても「過去にこんな事例があり、読者からこんな反応が起きた」という話で仕掛けていけるようになるといいですね。

ブランドリフトの測り方

モリ 氏:
ブランドに対する理解向上や購入意向を上げる「ブランドリフト」も指標として重要かと思いますが、この測り方はどうしていますか?

飯髙:
ユーザーアンケートが1番わかりやすいと思います。ブランドリフトって態度変容なので、わかりづらいじゃないですか。商品が欲しくなっても態度変容だし、好意を持っているのも態度変容です。最終的にはユーザーアンケートが一番わかりやすいと思いますね。

長谷川 氏:
先ほど話したビュースルーコンバージョンで測る方法もありますよね。

飯髙:
はい。でもそれだと物を買うところまでいかないと計測できません。買う場所が実店舗かもしれない。ビュースルーコンバージョンよりも手前を測るならユーザーアンケートが適切です。

長谷川 氏:
設定値をどこにするかが大事なんでしょうね。たとえば、電車の待ち時間に記事広告を読んで、そのあと商品をコンビニで購入したときに、メディアが貢献したといえるはずです。ここがもっと計測できれば記事広告の価値は高まっていきますよね。セールス側も売りやすくなるし、記事広告単価もあげられると思います。

清水 氏:
以前、旅行会社さんの記事広告をやったときに、実店舗に300人ぐらい集まったことがありました。いいコンテンツを作れば人は動くはずです。ただ計測できない部分もあるので、仮説を立ててやっていかなければいけません。