「デザイナーは打ち合わせに参加すべき」その理由とは

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轟 氏
最後に、デザイナーの価値を高めるためにすぐに始められることについて伺っていきたいです。2年とか3年とか中長期ではなく、いますぐ始められることですね。スライドには「打ち合わせに同行する」とありますが、これはどういうことでしょうか?

長谷川 氏:
受託制作の場合を想定しているのですが、「UX」とか「UXデザイン」という話が出ると、ユーザーテスト、ユーザーインタビューをしましょうという話になりますが、そういう状況っていきなり作れないですよね。予算を組まなければいけないし、ハードルが高いんですよ。

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伊原 氏:
無理やりやるしかない。みたいなね......。

じゃあ、なぜUXをやるかと言ったら半分くらいは「合意形成」のためにやるんですよね。もちろんUXデザインに資するものを作るには、リサーチもテストも必要ですけど、「クライアント 対 デザイナー」のようにならないためにも、「こういうユーザーがいます」という認識を合わせることです。

そのユーザーのイメージをもとにどうプロジェクトを進めるか議論できるようになるのが、UXデザインの価値でもあります。その上で、ユーザーテストをしたいと考えているなら、打ち合わせに参加しないとできません。

「デスクの前でデザインをしないと納期が大変」というのも重々承知しているのですが、定例の1時間や2時間参加して解決できることが多いので、問題無いと思うんですよね。それに、打ち合わせの場で議事録にならないような発言が、意外とデザインのきっかけになることが多い。なぜなら、議事録は決定事項しか残さないからです。

どういうニュアンスで結論に至ったのか、誰の発言をきっかけに結論に至ったのかなどです。ユーザーインタビューもそうですが、ステークホルダーにインタビューするのは、プロダクトに関わる人の合意を作る上で大切なので、参加しましょう。

轟 氏
実際、デザイナーが打ち合わせに参加するハードルって何なんでしょうか?ディレクターさんが嫌がるとか......?(笑)

長谷川 氏:
可能性としては多分にあると思います。先程、デザイナーの職域の話もありましたが、それをどう答えるかで変わります。「成果物を作ること」がデザイナーの職域と定義していれば、打ち合わせには何の意味があるのかと思うかもしれません。

しかし、別にそういう仕事の進め方が悪いのかというと、別にそうではありません。その責任を全うするというのも1つの道だと思うので。ただ、UXという文脈で考えるのであれば、ディレクターに同行したり、デスクから離れて行動を起こすことが必要になってくると思いました。

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轟 氏:
極論かもしれないですが、打ち合わせに同行しないデザイナーはUXデザイン的なスタートを切れないと。

伊原 氏:
そうです。これも、デザインの時間をどこに振り分けるかという話です。ビジュアルデザインのアウトプットを作る時間を削って、何をするかと。BtoBでは体験しにくいと思うのですが、商談の現場に参加してみるとかできますよね。BtoCであれば、自分で体験できます。

例えば、ビールの案件だったら、コンビニで売っているビールを調べて手に取る層の違いを聞いて回るとかできます。それは、直接アウトプットに紐付いていないように見えるかもしれませんが、その積み重ねがあることで打ち合わせに同行したとき、クライアントが何を言っているのかわかる。しかも、BtoCの案件が来たときに、ユーザーとして体験するってとても重要ですよね。

プロジェクトが始まってから体験しても、バイアスが掛かってしまうので自分が1人のユーザーであるうちに、その時の気持ちをわかっておくということが大切です。

轟 氏:
スライドの最後、「Adobe XDを使ってみる?」ですが、こちらに関してはいかがでしょうか?

長谷川 氏:
何度も言ってしまってますが、皆さんのデザインとしての職域で変わってくると思いますね。例えば、装飾する、ビジュアルデザインのアウトプットがタスクだという人に「Adobe XDを使え」なんて僕は言いません。正直な話、役に立ちません。IllustratorとかPhotoshopで良いです。

打ち合わせに同行してワイヤーフレームを引いてみせるとか、ユーザー体験の可視化をするという意味でAdobe XDのようなツールは良いのではないでしょうか。

伊原 氏:
そうですね、視覚化を高速で行い、そのフィードバックがちゃんと得られる仕組みが整っているのがAdobe XDですし、クライアントの目の前でデザインの修正を反映していけます。それはPhotoshopやIllustratorのようなツールとは異なる点です。