体験価値を知る旅人と優秀なマーケターの類似点

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清水 氏:
今の時代って殆どのことがWeb上で知れるし、完結することがあります。無料で簡単に大量の情報にアクセスできる。なので、そこで得られる情報の価値ってどんどん下がってきていると思うんですよね。

だからこそ、リアルの体験の価値っていうのが貴重になってきており、無料でどこからでもアクセスできる情報と比べて相対的に価値が上がってきていると感じます。何かを知っているだけじゃなくて、体験したことがあるっていうのは、すごく価値が高い。旅ってまさに体験の価値そのものなんです。そういった価値を若い内に触れていることって大切だなと思います。

組織の中でもリアルな体験を沢山して、人間的に養われている人がいるとビジネスが加速するのではと思ったのが、旅人採用でもあるんですよね。

だって、マーケターは顧客の価値観を受け入れてそれをプロダクトに反映させる能力が求められるから。

飯髙:
そういった旅人のマインドセットに似ているかもしれないんですが、最近考えていることが1つあるんです。それは、「プライドを持っていない」人の方が良いマーケターになるなってこと。あと、ここぞという時に思い切りアクセルを踏めるということ。

世の中分からないことの方が多いじゃないですか。その分からないことを素直に知っている人に聞けるって大事だなと思っています。まさに「体験」にも繋がるんだけど、知っている人に直接聞きに行くという行動をしているんですよね。肌感覚ですが、最近は(分からないことを)聞きにくる人が減ったなって思います。

清水 氏:
素直に質問できる人って確かに良いマーケターだなって思います!オイシックスドット大地株式会社のCMT(チーフ・マーケティング・テクノロジスト)の西井敏恭(以下、西井)さんがまさにそうですよね。

あの方は、マーケターとして実績も立場もある方なのに、僕らの話をちゃんと聞いてくれて「そういうの良いよね」って、同じ目線で話してくれる。そして、とことんユーザー目線になってマーケティングを考えることが出来る。

それは、西井さん自身が世界を130ヶ国以上も旅をしていて、世界中で様々なことを体験してきたからだからこそだと思うんです。

飯髙:
どういう情報に触れるのが大切かって、やっぱり経験した人から直接聞くことですよね。Googleで検索すればほとんどの情報にアクセスできる時代だからこそ、何が正しいのかわからないですもん。

清水 氏:
人と関わることが大切ですね。

僕は世界一周の旅をして、世界中の大都市を訪れて思ったことがあるんです。

それは、世界中の大都市の中で、東京だけが非常に独特だということ。なぜなら、そこにいる人はほとんど日本人だからです。世界どこを見渡しても、東京ってとても独特な地域なんです。

もちろん、最近では外国の方も増えてきていますが、アメリカのニューヨークもインドのデリーも、イギリスのロンドンだって色々な国の人がビジネス街を歩いている。自然と多様性を受け入れられる環境が整っているんですよね。

旅をせずに体験の価値を手に入れる方法

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飯髙:
日本人だけで集まった組織で、価値観も少し凝り固まってしまうことがあるかもしれないよね。そういった環境の中で「変えていきたい!」と思った時、「旅」は1つの選択肢かもしれないけれど、すぐに出られない環境の人も沢山います。

清水 氏:
日本人は今も昔も「働きすぎ」なんで、休みを取って旅にでたら良いんですよね!長期休暇が取れなくても、週末で台湾に行けたりしますからね。

旅に限らず、久しぶりに会う友人と食事にでかけたり、日々のルーティンから抜け出す体験をしてみると良いかもしれません。

飯髙:
海外の大手企業の中には、入社したてのマーケターにはまず海外に赴任させるという企業があるって聞いたことがあります。もちろん、インターネット時代なので検索すれば現地の情報は手に入るんだけど、現地のマーケットを知り、ユーザーが使っているサービスを直接体験してくるということを重視しているらしいんです。

例えば、中国でWeChatが大衆的なメッセンジャーツールだっていう話は有名だけれど、現地の人とコミュニケーションを取ってみないと実感わかないですよね。他にも「QRコード決済が普及!」ってニュースをみても、日本で暮らしていたらあまり接する機会がないですよね。でも、現地に行ったらそれが本当に普通だってことがわかる。やっぱり、体験した人の価値って大きいなと思いますね。

身近な話だと、「TikTok」っていう動画アプリが流行っていますよね。

自分がユーザーだと思うと合わないなって思ったんです。でも、若者の間ではものすごく流行っていて、彼らなりの使い方がある。実際に経験してみると、どこにどんな広告メニューを設けたら良いのかとかアプローチの方法が考えられるようになりますよね。

清水 氏:
僕らの体験と、彼ら(若者)の体験の違いをわかっていないとマーケティングは考えられないですよね。僕も、本当にそんな感じで、Instagramとか結構使っているんですけど、若い子たちの使い方とは違うなって感じることがあります。ハッシュタグで検索とかやらないからなあ……。でも、(彼らは)こういう価値観で使っているんだなっていうのはわかる。

飯髙:
彼らと同じ使い方をするまではいかなくとも、自分で体験したり若い世代の話を聞いてみるのは大事ですよね。マーケティングはトレンドの移り変わりによる変化がすごく大きいと思うのですが、清水さんがマーケティングの軸足としている事ってなにかありますか?

清水 氏:
軸足は、「人の価値観を受け入れる」ですね。受け入れようと思ったら、自然とコミュニケーションが発生します。それに伴って、実際に体験することにも繋がりますよね。

まずは「受け入れる」ことが一番大切だなと思っています。マーケティングの知識って、それこそトレンドの変化に合わせてインプットすべき知識も変わるじゃないですか。その知識があったとしても、実際のマーケティング施策でどう使う?って問われた時、知識だけではなにもできないじゃないですか。

飯髙:
たしかにフレームワークとかも、当てはめただけでは何もできないですからね。じゃあ、これからマーケターとして成長していきたいっていう人たちは、何をすべきだと思いますか?

清水 氏:
これからマーケターとして成長したいという方であれば、知識を得るっていうのはもちろん大切ですね。でも、土台がない中での知識というのは、結構危ないものだなと思ってるんですよね。僕が新卒のときの上司に教えてもらったのは、「知識や実務スキルは足し算で増やしていくものだ」ということです。

でも、マインドセットとか価値観という部分は掛け算なんですよね。場合によっては、マイナスになることもある。マーケティングも同じだと思っていて、どれだけ知識を積み上げても「何のために役立たせるのか」というところを考えないといけないと思います。知識を沢山積み上げた結果、プライドが邪魔をしてしまったら結局意味がないですから。