膨大な量のデータを蓄積できる今、DMPのような、データをビジネス活用するためのプラットフォーム市場が急成長しています。

DMPと共に、近年データプラットフォームの1つとして注目されているのがCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)です。

CDPは、簡単に言うと顧客1人ひとりに寄り添ったデータ活用を実現するプラットフォームです。

今回は、CDPの基本を解説します。

CDPは、個人を中心にデータを構成する

CDPとは、自社の顧客データとサードパーティデータを結びつけて一個人に関する情報をリッチにすることで、個々に合わせた施策を行いやすくするためのプラットフォームです。

ECサイトを例にもう少し詳しく見てみましょう。ECサイトが保持する氏名・住所・購入履歴などの会員データ(ファーストパーティデータ)と、自社以外のホームページやメディアが保有する個人の行動データやIoTで収集されるデータ(サードパーティデータ)を統合します。
(統合可能なサードパーティデータは、各CDPにより異なります。)

データを統合すると、自社の会員が外部でどのような動きをしているのかが可視化され、会員ごとの好みや傾向が精緻に把握できます。
そのデータをもとに、Web広告配信やダイレクトメール送付など様々な施策をパーソナライズできるというわけです。

CDPを提供する企業はまだそれほど多くはありません。日本だと、プライベートDMPとしてトレジャーデータ株式会社が提供していた「TREASURE DMP」が、2017年に「TREASURE CDP」にリニューアルされています。

DMPを理解されている方であれば、「CDPはプライベートDMPと同じなのでは?」と感じるかもしれません。

では、CDPとプライベートDMPは何が違うのでしょうか。ポイントは、何を起点にするか、というところです。

CDPとプライベートDMPとの違いは?

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まず、プライベートDMPの定義を確認しておきましょう。
DMPは、一般的には「パブリックDMP」と「プライベートDMP」の2種類に分類されます。
パブリックDMPとは、あらゆるホームページやメディアで収集されたオーディエンスデータを集積、管理するDMPのことです。

サードパーティデータのみを扱い、自社会員情報などのファーストパーティデータは含まないものが主流でしたが、近年はファーストパーティデータも取り込めるパブリックDMPが台頭しています。

一方でプライベートDMPとは、自社の顧客データを統合管理し、サードパーティデータも加えて顧客ごとに施策を最適化するためのプラットフォームです。

サードパーティデータが起点となるのがパブリックDMP、ファーストパーティデータが起点となるのがプライベートDMPと言えます。

プライベートDMPの解説と、先述したCDPに関する説明がほとんど同じなのに気づかれたでしょうか。

実際、CDPとプライベートDMPはほとんど同じです。
ただ、プライベートDMPは広告配信特化型、CRM特化型など様々なタイプがあり、必ずしも個人情報を精緻に分析する必要がない場合があります。(広告配信時にセグメント分けをするだけなら、それほど詳細な個人情報はいりません。)

CDPもプライベートDMPも個人情報を保有しているなかで、「個人を特定できるデータを必ず活用するのがCDP」、「必ずしも使わないのがプライベートDMP」と区別するとわかりやすいかもしれません。

ただ、どれだけパーソナライズできるかが重視される今、プライベートDMPでもCDPと同じように活用されるケースがほとんどです。

個人情報を取り扱う分、セキュリティに注意

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CDPにしろプライベートDMPにしろ、個人を特定できる情報を扱うので、セキュリティ面はできる限り強化する必要があります。

企業が保有する個人情報を狙うハッカーは、あらゆる手段を使ってハッキングを仕掛けてきます。
ハッキングの形態は「無差別型攻撃」と「標的型攻撃」の2種類に分けられます。
例えば、トロイの木馬はあらゆる端末に無差別に攻撃を仕掛ける「無差別型攻撃」を目的としています。

「標的型攻撃」は、特定の企業や組織、国家のシステムに侵入するために入念に準備し、攻略できるまで攻撃をくりかえすタイプを指します。

年々標的型攻撃の手口が巧妙化しており、一般的なウィルス対策ソフトだけでは攻撃から身を守るのは難しいでしょう。

標的型攻撃対策サービスの市場は伸びており、2016年の市場規模は200億円、2021年には315億円に拡大すると予想されています。

参考:
標的型サイバー攻撃対策市場、特化型脅威対策製品は2021年まで年間平均21.5%で成長――IDC予測:EnterpriseZine(エンタープライズジン)

巧妙化する標的型攻撃に対抗するために、サイバーセキュリティサービスも進化しています。
プライベートDMPやCDPと連携し、不穏な動きをするIPを検出して早い段階で対策を打てるサービスも登場しています。

世界的に見ると、日本のサイバーセキュリティに対する意識は低く、ハッカーの格好の標的になりやすいのが実情です。
2020年東京オリンピックを目前に控え、世界から注目を集める今は特にハッカーから狙われやすい状態にあります。

個人情報をより精緻にしていくことで、顧客にとって有益な情報を提供できるので、ビジネスに大きな恩恵を受けられるでしょう。
ただし、利便性向上に伴うリスクをしっかり理解する必要があります。

まとめ:顧客層を把握し、最適なデータ活用プラットフォームを選ぼう

日本国内でCDPを提供するトレジャーデータは、7月30日、ソフトバンク傘下のARM社
に6億ドル(推測)で買収されています。

参考:
ソフトバンク傘下のARMが米データ分析企業Treasure Dataを6億ドルで買収か | TechCrunch Japan

今後どのようなシナジーが起きるかはまだ未知数ですが、データ分析市場に対して期待が高まっているのは間違いないでしょう。

プライベートDMP、CDPの区別は正直難しく、理解しづらい部分のほうが多いと思います。ただ、重要なのはそれぞれの違いを理解することではなく「取得できるあらゆるデータを何のために使うのか」を考えることです。

もちろん売上を増やすためにデータを活用するべきですが、売上増加させるためには顧客満足が不可欠です。データを活用すれば、いくらでも顧客満足度を上げることができます。
顧客がなにを欲しがっているのか、顧客を不快にさせないプッシュ情報はどのような内容なのか、購入後のアフターフォローやコミュニケーションはどのようなタイミングで行えばいいのか。
顧客に対するホスピタリティを発揮するための手段の1つとして、プライベートDMPやCDP
を活用するのが理想的です。

それぞれで連携できるサービスや機能は異なるので、自社の顧客層や運用体制をしっかり把握したうえで最適なデータ活用プラットフォームを選びましょう。