ECサイト運営にあたって欠かせないのが「特定商取引法」に基づく表記です。直近では、悪質なサブスクリプション商品への対応が盛り込まれる等の改正が2022年6月に施行されました。

この記事では、特定商取引法におけるECサイトにおける具体的な規制違反時の罰則などについて、法律事務所ZeLo・外国法共同事業の長野友法弁護士に伺いました。

最新の内容を把握して、自社のECサイトが適切な対応ができているかをチェックしましょう。

プロフィール

長野 友法弁護士
法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士(第一東京弁護士会所属)
2010年一橋大学法学部卒業。2012年一橋大学法科大学院修了。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、花王株式会社入社。2021年法律事務所ZeLo・外国法共同事業参画。契約審査、自社基準策定等のガバナンス等を担当し、組織再編・紛争対応等にも従事。特に化粧品・メディア分野を多く担当。

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目次

  1. 特定商取引法の対象となる取引
  2. ECサイト(通信販売)における特定商取引法の具体的な内容
  3. 越境ECの場合の適用範囲
  4. 特定商取引法に違反した場合の罰則
  5. 特定商取引法と景品表示法、特定電子メール法との違い

特定商取引法の対象となる取引

ferret :
特定商取引に関する法律(以下、特定商取引法)は、ECサイト運営において適用される法規制ですが、ECサイトだけに限ったものではないのですよね。

長野弁護士:
はい。特定商取引法全体としては、大きく7つの取引類型が対象となっています。

  1. 通信販売
  2. 訪問販売
  3. 電話勧誘販売
  4. 連鎖販売取引
  5. 特定継続的役務提供
  6. 業務提供誘引販売取引
  7. 訪問購入

1つ目は通信販売で、ECサイトもこの取引類型に含まれます。物品ではなく役務を提供する契約も通信販売に含まれるため、SaaSプロダクトも特定商取引法の適用対象となる場合があります。

2つ目は事業者が消費者の自宅などに訪問してセールスを行う訪問販売、3つ目は電話勧誘販売です。4つ目は連鎖販売取引で、顧客が顧客を連れてくる形式のいわゆるマルチ商法が特定商取引法の適用対象となっています。

5つ目は、特定継続的役務提供です。この類型の中にはさらに7つの細かな類型があり、エステや美容医療、パソコン教室など長期間かつ高額な契約が含まれます。

6つ目は業務提供誘引販売取引です。例えば「誰でもできる簡単なお仕事がありますよ、そのためにこのパソコンの購入が必要です」などといった流れで仕事の紹介と商品の販売をセットで行う取引が該当します。

7つ目は訪問購入で、消費者の自宅などに訪問し、商品を消費者から購入する取引で、宝石や貴重品などを相場よりも安く購入する悪質な取引を規制することが目的です。7つの取引類型に応じて、それぞれ規制の内容は異なります。

参考:特定商取引法ガイド:特定商取引法の対象となる取引類型

今回はこの中の、ECサイトも含まれる「通信販売」について解説します。

ECサイト(通信販売)における特定商取引法の具体的な内容

ferret :
ECサイトについては、特定商取引法でどのような規制が定められているのでしょうか。

長野弁護士:
大きく分けて、広告を行う場合に決められた事項について記載しなければいけないという積極的広告規制と、誇大広告の禁止等の消極的広告規制の2つがあります。

積極的広告規制に関しては、
決められた事項を広告や契約の際に表示するために、ECサイト内に

➊「特定商取引法に関する表示ページを作ること
❷「特定申込みを受ける際の表示(最終確認画面の表示)」をすること

などが事業者には求められます。

➊「特定商取引法に関する表示」のページを作る

長野弁護士:
特定商取引法に関する表示として、事業者の氏名商品の価格支払方法など約15項目を、広告を出す段階で表示しておく必要があります。

特定商取引法ではECサイト自体も広告に該当するため、ECサイトを開設した時点から特定商取引法に関する表示を記載したページが必須です。

代表的な表示項目は下記のようなものです。

項目 内容
販売業者 事業者の氏名(名称)
代表責任者 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責


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