ファッションアプリ「FACY」を展開するSTYLER社は10月27日、都内ギャラリーで試着のみができるポップアップストア「FACY STORE」を開きました。

STYLER社はFACYをWeb経由の購買体験を提供するニューリテールプラットフォームとしており、普段はWebを通じて事業を展開。今回、初めて実店舗を試験的にオープンしました。STYLER社の埴岡瞬マーケティングマネジャーは「今後は衣料品だけでなくライフスタイル全般にまで商品数を増やし、日本にない購買体験を作っていきたい」と意気込みを語りました。

全国から店舗が参加

ポップアップ店舗は中目黒のギャラリーを27日、28日に期間限定でオープンしました。

FACYは全国の衣料品店と、衣料品を購入したいユーザーを結びつけるファッションマッチングアプリ。ユーザーが「仕事でもプライベートでも使えるカバンが欲しい」などの要望を記入すると、全国の登録店舗が商品をリコメンドしてくれます。

スマホのカメラを起動し、QRコードを読み込むとアプリが起動。そこから商品ページに飛ぶと、詳細なアイテム説明が並び、実際に商品を販売している店舗スタッフにチャットで質問できます。

メンズが200点、レディースが50点ほど並び、メンズアパレルのオールユアーズなど関東を中心に展開するショップだけでなく、三重県伊勢市のセレクトショップなど全国から参加しました。
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来店した客は実際に素材やサイズを手にとって確認し、試着した後にQRコードを読み込み、FACYストアで購入に進みます。購入した商品は後日、自宅などに配送される仕組みです。埴岡マネジャーは「ニューリテールが進む中国でも、飲食店で取り組まれていることが多い」とし、QRコードのみで決済し、購入するこうした取り組みは日本国内のファッション業界ではあまり例がないと言います。

こうした新しい購買体験の取り組みは購入側、出店側双方にとって利点があります。例えばFACYのアプリ上に情報が集約されたり、アプリ上でチャットでやりとりができれば「接客されたくない人にとっては、有益なユーザー体験を提供することにもなる」(埴岡マネジャー)といい、また店舗側からするとスタッフが地方にいても都心部など全国の顧客にアプローチできるという利点があります。

STYLER社は今後もこうした実店舗を定期的に開催していく予定です。

ただ、利点ばかりのように見えるSTYLER社のこうしたビジネスモデルにはまだまだ課題があります。

一番のポイントは在庫管理です。埴岡マネジャーによると、日本では店舗側の力が強いことや、在庫管理が実店舗とECとでシステム統一されておらず、今後これらの統一を始めるとしても費用的にも時間的にも労力を要すると指摘します。

中国では豊富や人口を背景にまだ安価な物流網が構築できますが、人件費が高額な日本では物流がネックになるそうです。「今後ドローンなどテクノロジーの発展によって大きく改善することも考えられるが、そうした場合にも法整備など課題も多いだろう」と話しました。

変化する購買体験

今回のFACYに限らず、最新の技術を用いて、日本では様々な購買体験の実験が試みられています。

東京都台東区に本社を構える東京シャツ株式会社は9月に近距離無線通信(NFC)タグを設置した極小店舗を開設しました。客はタグをスマートフォンにかざすことで商品データを登録できます。商品はその場で買う必要がなく、ネット上で決済後、後日自宅に配送される仕組みです。

また、今年10月にはJR東日本がJR赤羽駅構内に、AI技術を活用した無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を導入した店舗の実証実験を開始しました。店内にはレジ係などがおらず、店内のカメラが客が手に取った商品を店内に設置されたカメラが追跡。客は店舗に入る時にSuicaなどの交通系電子カードをかざし、出口付近の決済ゲートを通過する際に購入金額を確認することで出口が開くようになります。

STYLER社の取り組みはWebから購買を開始し店舗側で接客をするO2O施策を積極的に進めるものと言えます。これまで人や店舗に頼っていた小売業界の接客方法・購買方法を変えることができます。

一方で埴岡マネジャーは「中国でもニューリテールの実現にはまだ人の手を使うところが多い。自動化できる箇所はまだまだ多くあるはずで、そうしたことが進むと本当にWebにあった購買体験へと変化させることができる」と話しました。