Web販売とリアル店舗の両チャネル

ferret:
WEBでの販売は、事業成長にどのようにマッチしているのでしょうか。

枡野氏:
下着は比較的リピートされやすいもので、サイズがわかっていればリピート時にはわざわざ手に取らなくても購入の意思決定がしやすいという特性と、小さくて軽いので、運送コストが低いという利点があります。

なので、Web事業には非常に向いていますね。当然金融商品みたいな、重さ0gのほうがいいわけですけど、だけどパンツはそういう意味だと親和性は高いと思います。コートなどの重衣料ですと、送料だけで結構かかってしまいますので。

ですが、そもそも弊社はWebでの販売を重視している訳ではありません。元々マルチチャンネルで販売しているのが強みなのです。Webマーケティングの集客にはやはり限りがあります。日本のEC化率が10%いっていない中で、お客様が求める情報はWebでは全て見つからない。なので、ものを買ったりするときには、リアル店舗に行ってるわけです。

もちろんリピートしていただくという意味では、そのあとECサイトに来ていただくという動線もありますが、特にTOOTのようにコレクションごとに違うデザインや素材を採用している下着だと、Webで見たとしても、素材の確認のために、やっぱり店頭で購入される方も多くいらっしゃいますね。

だから今のところTOOTは、どちらかを重視するということはしていません。百貨店の売り上げを落として、ネットの比重を高くしたりすると、どちらもうまくいきません。

オフラインは、新規客との出会いの場所であり、製品に実際触ってもらう場所です。これはAIに置き換えられない、言語化しえないコミュニケーションをとる場所ですね。

特にTOOTのパンツのはき心地とかは、完全に言語化にされてしまうよりは、店員さんとのやり取りの中で伝わるような部分ってあるんじゃないかな。

ユニーク性とインターネットとの親和性

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枡野氏:
先日、ゼンマイじかけのモーターをつくっている企業の製品がWebサイトを通じてすごい数が海外で売れているという話を聞きました。BtoB向けの製品なのですが、海外ではBtoCの人に意外と売れているという話です。

これはたぶん製品そのものより、こうした高品質なジャパンクオリティの製品を「Webサイトで海外に発信・販売しよう」と思いついたこと自体がユニークなのだと思います。

私は、製品がユニークであればあるほど、Webでの販売に向いていると思います。ユニークな製品はインターネットとの親和性が高いのです。ユニークでないものは、検索してもなかなか上位に表示されにくい。ユニークでないものというのは、要は大量生産されて大量消費されるものなので、わざわざ欲しいと思って買うものではありません。だから生活動線の中で済んでしまうわけですよね。

生活動線にAmazonや楽天はあるかもしれないですけど、日常消費する製品というのは、わざわざ特定のブランドの公式サイトに行って買うということはあまりありません。インターネットでない場合は、帰り道の駅にあるデパートやドラッグストアなどで購入されるでしょう。

しかし、ユニークさを持っていれば話は別です。例えばTOOTの下着は、スウェーデンなどの海外からも注文が届きます。どのような経路で広まっているのかは未だに私もわかっていませんが、自発的に探されて、宣伝したこともない国や地域で買われているというのがユニーク性をもつ製品の面白みだと思うんです。

ただの下着でしかなく、スウェーデンで販売しようと思ったら、やっぱりスウェーデンのメディア、スウェーデン向けのWebマーケ、スウェーデン向けの店舗展開をしなければいけません。

Web販売というのは実はそうではなくて、ある種自分たちがユニークであればあるほど、検索して訪問してくれるということがひとつの強みだと思うんです。そういう意味で、伝統的な直販とWEB直販の「インバウンド」の意味の違いがここにあります。

ケーブルテレビなどに代表される伝統的な直販は、マスメディアを使って、ずっと喧伝することで、いかに多くのマスに働きかけるかが重要です。さらにそこから何回も顧客とコミュニケーションを図り、購入に至ります。

そういう中ではやはりマーケットインにならざるを得ない。だけどWebであれば、自分たちが信じられる。好きなことが光り輝いていれば、地球上どこにでも届く。TOOTのようなユニークな製品を扱っているブランドには得であり、強みなのではないでしょうか。