企業の労務管理においては、従来、社会保険・労働保険の手続きにかかる労務管理担当者の負担は大きく、本来、電子申請の利用により業務効率を活性化したいところです。最近は、電子申請に対応した労務管理システムが登場しており、難しい操作を必要とせず手軽に社会保険・労働保険の手続きをオンラインで行えるようになっています。

今回は労務管理における行政手続きの電子申請にスポットをあてて、電子申請のメリットや対応した労務管理システムを紹介します。

目次

  1. 労務管理には欠かせない社会保険や労働保険の手続きとは?
  2. 行政手続きのオンライン化状況
  3. 労務管理が楽になる!社会保険や労働保険の電子申請とは?
  4. 電子申請のメリット
  5. 電子申請のデメリット
  6. 電子申請に対応した労務管理システムを使おう
  7. 電子申請に対応したオススメの労務管理システム紹介
  8. まとめ

労務管理には欠かせない社会保険や労働保険の手続きとは?

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労務管理の担当者は、社員が入社すると保険や年金への加入手続きを行わなければいけません。具体的には、健康保険、雇用保険、労災保険、厚生年金の4つが該当します。

また年に一度、保険料計算のための手続きや労災保険、健康保険の給付金受給などの多数の手続き業務に対応しなければいけません。従業員の人数が少ない場合は、労務管理の担当者が少数でも対応できますが、従業員数が多い場合、労務管理の負担もその分大きくなり業務パフォーマンスが低下してしまう恐れがあります。

様々な帳票の作成をするためには、社会保険などに関する知識も必要であり、労務に関わるスタッフは経験やノウハウの日常的な蓄積も必要です。手続き書類は、各関係窓口に提出するため、労務管理担当者は手続きのために外出する時間も考慮し作業を進めなければいけません。

行政手続きのオンライン化状況

総務省が発表した「平成28年度における行政手続オンライン化等の状況」によると平成28年度の社会保険・労働保険の手続きのオンライン利用率は11.8%であり、平成27年度の9.0%から増加しているとはいえ、まだまだ低い状態にあります。

社会保険・労働保険以外の分野をみると、登記は68.4%、国税は60.1%という結果です。比較すると社会保険・労働保険は、他分野より著しく低い状態であることがわかります。

参考:
総務省「平成28年度における行政手続オンライン化等の状況」

労務管理が楽になる!社会保険や労働保険の電子申請とは?

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書類作成と提出窓口への訪問と、労務管理は担当者にとって時間負担が大きい手続き業務です。しかし近年、行政手続きのオンライン化が進むことで、窓口に直接訪問しなくても社会保険や労働保険の手続きができるようになりました。

電子申請は、*電子政府の総合窓口である「e-Gov(イーガブ)」*から行います。PCのブラウザからホームページにアクセスし、必要事項を入力し手続きを進めます。電子申請のマニュアルが用意されているなど、初めての人にもできるように配慮されているため安心です。

電子申請のメリット

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社会保険や労働保険の電子申請は、労務管理にどのようなメリットを与えてくれるのでしょうか。代表的なものを以下で紹介します。

1.時間と場所を制限されずに申請できる

これまで各手続きの窓口が開いている日時に訪問する必要がありましたが、電子申請なら24時間365日の好きなときに好きなところで申請手続きができるようになりました。
窓口への訪問に時間と交通費をかける必要がなくなり、業務スケジュールに自由度が増します。

2.情報漏洩のリスクが減少する

マイナンバーなど従業員の大切な個人情報を記載した書類を手続き各所の窓口まで持参する場合、途中で書類を紛失してしまうとったリスクが発生してしまいます。労務に関わる書類はとてもデリケートな内容であるため、取り扱いに気をつけなければ、企業経営に関わる危険が潜んでいる可能性もあるのです。

電子申請のデメリット

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効率的に労務管理業務を進行できる電子申請ですが、デメリットも存在します。メリットとデメリットの両方を理解した上で進める必要があるでしょう。

1.利用環境に該当するパソコンを用意しなければいけない

パソコンのOSやJavaスクリプトの動作など、e-Govを利用するための環境を整える必要があります。それほど大変な作業ではありませんが、下準備に時間と手間が生じてしまうため注意が必要です。

電子証明書も取得しておく必要があるため、忘れないようにしましょう。

2.電子申請を把握する時間が必要

便利な電子申請ですが、初めての利用の場合は操作を覚える時間も発生します。

システムに苦手意識がある人にとっては負担に感じる業務でもため、IT利用に意欲的な労務管理の担当スタッフを用意するといった知恵も有効でしょう。

電子申請に対応した労務管理システムを使おう

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電子申請を行ったことのない人でもスムーズに電子申請を行うには、労務管理システムの利用が最適です。労務管理システムは、従業員が登録した現住所や扶養家族等に関する情報などをもとに自動的に申請書を作成できるなど、労務管理担当の業務負担を大きく削減できます。

e-Govに対応した労務管理システムを選択し、電子申請にトライすると良いでしょう。労務管理システムを選択する際、対応している帳票の種類が多いことで、より多くの業務に対応できます。利用料金や対応帳票数などから総合的に判断して、ニーズを満たす労務管理システムを導入しましょう。

電子申請に対応したオススメの労務管理システム紹介

e-Govに対応し、電子申請が手軽にできる労務管理システムの中からオススメをピックアップしました。無料体験ができるものもあるため、試してみてみることをおすすめします。

OFFICESTATION

OFFICESTATION
引用:OFFICESTATION

OFFICESTATIONは、対応帳票が97種類もある労務管理システムです。e-Govの電子申請APIに対応しています。

手続きをしたい書類名をクリックするだけで簡単に電子申請や帳票作成が可能です。帳票出力に必要な情報は、従業員が入社の際に自分で入力するため、労務担当が入力する手間やミスを軽減できます。登録している情報より新しい情報がある場合も自動的に更新されるため安心です。

電子申請や帳票作成の履歴データも保持しています。e-Gov受付状況や過去のデータを確認できる管理機能の高さも魅力です。

jinjer労務

jinjer労務
引用:jinjer労務

社会保険の手続きをオンラインで簡単に行えるため、従業員の入社や退社に伴い発生する書類作成や手続き業務を少ない負担でスムーズに実施できます。役所に出向いて手続きする手間を削減することで、業務時間を短縮でき人件費削減のコストメリットを生み出すことが可能です。

従業員1人につき月額300円という利用料の安さも導入しやすい特徴と言えるでしょう。無料で試せるため、使い勝手を実際に操作して確認できます。

ジョブカン労務管理

ジョブカン労務管理
引用:ジョブカン労務管理

労務管理の全業務をカバーしている労務管理システムです。従業員に関する情報をクラウド上で一元管理でき、社会保険や労働保険の手続きをオンラインでスムーズに実施できます。

入社手続きを画面に従って、迷うことなく行えるなど、労務管理に対して経験が浅いスタッフでも対応できるよう開発されています。何より人間が作業することで、どうしても発生してしまいがちなミスを防止できることがシステム化の大きなメリットです。

社労夢 Company Edition

社労夢 Company Edition
引用:社労夢 Company Edition

全国2300事務所で利用されている「社労夢」を企業向けにした社会保険・労働保険の手続進捗管理システムです。社会保険や労働保険の役所への届け出は、e-Gov一括電子申請に対応しているためスムーズに実行できます。

電子申請に年間59万件も対応している豊富な実績と、平成11年からの労務管理開発経験が、ユーザーにとって魅力的な要素です。また、進捗管理機能に長けており、手続きそれぞの進行状況を簡単に確認できます。誰がどのようなタスクを行うべきか業務の見える化が可能です。

導入方法は、クラウドとオンプレミスの両方あり、セキュリティや導入コストなど自社の条件を満たす方を選択しやすいでしょう。

SmartHR

iSmartHR
引用:SmartHR

従業員から直接、社会保険や労働保険の手続きに必要な情報を収集して自動的に書類を作成できます。役所には電子申請によりデータを提出するため、訪問時の時間やコストを削減することが可能です。

電子申請によりペーパーレス化でき、業務の精度が上がるだけでなく管理もスムーズです。年末調整までオンライン上で簡単にでき、申請準備も「はい」「いいえ」のシンプルなアンケート形式で従業員が困ることなく手続きを進行できます。

知識が不十分な社員が対応しても的確に手続ができる、使い勝手の良さが魅力的な労務管理システムです。

まとめ

労務管理に伴う業務負担を軽減するために、電子申請は有効な手段です。労務管理システムの開発元は、なかなか利用率が高くならない労務分野の電子申請に目をつけ、ユーザーの使いやすさを追求しています。少ないプロセスのもと、社員がたくさんいてもスムーズに電子申請ができる機能は実に画期的です。

労務管理をシステム化すると、法改正や新しい帳票への対応など、環境の変化にもスムーズに対応できるのが強みです。電子申請はこれからも進化すると考えられることから、システム面からも適切な労務管理体制を構築しておくと得策と言えるのではないでしょうか。

労務管理は、入社や退社に伴う社会保険や労働保険の手続きばかりではありません。従業員の勤怠管理や労働環境の最適化など、カバーしなければいけない業務範囲が幅広い役割です。

まだ大企業のみですが、2020年4月1日から電子申請を義務化する方針が厚生労働省より出されていることから、今後、電子申請はますます活性化するでしょう。工数のかかる作業は労務管理システムなどのITツールを使いこなし、余裕を持って新たな業務に取り組むとパフォーマンスアップにつながるのではないでしょうか。