ferret Personでは、若手ながらビジネスシーンで活躍する人に焦点を当て、その活躍のカギとなった仕事の進め方や経験を探っていきます。

第3回に登場するのは、株式会社ヤプリでセールスを務める高橋 知久氏です。自身を内向的な性格だと言いつつも、14年間営業職として働く高橋氏に、営業という仕事への向き合い方や、近年重要になっているセールスと他チームの関わり方などについてお話を伺います。

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高橋 知久氏プロフィール

株式会社 ヤプリ セールス・マーケティング本部
中央大学卒業後、野村證券へ入社。
営業支店にて営業/新入社員の育成/マネジメントを担当。
同社プライベート・バンキング本部&クレディ・スイスにて企業オーナー等への事業承継や資産運用・管理のコンサルティングを担当。
IT/テクノロジーを中小企業に届けるためにfreeeに転職。税理士業界/中小企業へ業務改善コンサルティングを担当。
スマートデバイスに特化したインターネット事業を広げるために2019年3月ヤプリに入社。

挫折だらけの1年目

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ferret:
そもそも、どうして内向的な性格なのにもかかわらず、営業職に就こうと思ったのでしょうか?

高橋氏:
もともと僕は社会人になるまで自分が内向的であると思っていなかったんです。それに加えて、大学の先輩が営業職に就くケースが多かったため、自然と営業職を選び、証券会社に入社しました。

ferret:
実際に営業職になってからはいかがでしたか?

高橋氏:
1年目は挫折しかありませんでしたね。いわゆる「地図を1枚持って飛び込み営業」100件中99件くらいは断られるんです。なんだか自分が世の中から否定されているような気分でした。成績も同期の中でビリから数えたほうが早いくらいでしたね。

このときに自分が積極的な営業に向いていないことや、内向的な性格であることを自覚しました。

ferret:
それだけ辛くても営業職を続けたのですね。

高橋氏:
正直やめようと思っていました。親にも「理学療法士になるから会社を辞めようと思う」と伝えたりもしました。

「自分はできない」と自覚した2年目

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ferret:
その辛い1年目から何か転機があったんでしょうか?

高橋氏:
2年目になって、飛び込みの訪問営業から、窓口の営業に異動になったんです。
外回りの営業のときは、正直サボっていてもわからないですし、お客様と話す機会も少なかったんです。そのため、自分には何ができて何ができないのかすら把握できていませんでした。

窓口の営業になると、当たり前ですが来ていただいたお客様と話をしなければなりません。実際にお客様と話をすると、僕はお客様の話の内容がほとんどわからないんですね。でも、お客さんとはコミュニケーションを取り続けなければいけない。その状況下で仕事を進めるなかで、だんだんと仕事の進め方が変わりましたね。

ferret:
具体的にはどのような変化があったのでしょう?

高橋氏:
それまでは「頼ることや質問することは情けないこと」だと思っていたので、わからないことを隠そうとしていたんです。しかし、わからないことを周りに聞かなければ、仕事が進められない状況となり、周囲に質問することに抵抗がなくなりました。

また、お客様とのコミュニケーションのとり方も変わりました。それまではお客様の話すことの意味をきちんと理解できていないのにもかかわらず「はいはい、そうですよね」と空返事をして、僕がひたすら商材の良い点だけを伝えていたんです。お客様からすれば、そんな空返事をしたあとに、一方的に営業をかけてくるので、僕を信頼しようとは思わないですよね。

そこで、当時の僕にできることは何かを考え、ひたすらお客様の話をきちんと親身になって聞くようにしたんです。お客様の話をきちんと聞くことで、お客様に対して共感できるようになるんです。やっぱり自分のする話をきちんと聞いてもらえて、共感してもらえると、人間って嬉しいんですよね。結果としてお客様も信頼関係が築けるようになり、少しずつ成果も出せるようになりました。

営業をしていると、お客様の話を聞いているようで、実際には次に話すことを考えていたりして、本当にお客様の話に向き合っているかと言われると、そうではないケースが多くあると思うんです。そうではなく、きちんと本当の意味でお客様の話を聞くことが重要だと感じました。

ferret:
その経験は現在の営業にも繋がっていますか?

高橋氏:
そうですね。きちんとお客様と深いコミュニケーションを取ることが重要だと考えているので、「商談の90%が雑談だった」ケースもあります。お客様自身が課題であると認識していることは、意外に本当の課題ではないケースもあるんです。それはしっかりとお客様の話を聞いて、きちんとコミュニケーションを取らないと見えてこない部分だと思っています。

きちんとお客様の話を聞くことで、徐々に成果を出せるようになり、当初は下から10位だった支店を上位10支店まで押し上げ、その後もお客様と数億円単位の取引をするなどの成果を残せるようになりました。

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ferret:
他にもコミュニケーションを取る上で注意している点などはありますか?

高橋氏:
きちんと自己開示をすることですね。

人はどこの誰かもわからない人を信頼しようとはしないので、最初の自己紹介やアイスブレイクできちんと自分がどういう人間なのかを伝えるようにしています。商談前に相手の人についてあらかじめ下調べをしておいて、出身地や趣味などの共通点を探したりもしていますね。共通点を起点として自己開示を行うことで心理的な距離も近くなるケースが多いと感じています。

内向的だからこそ、相手の気持ちが察知できる

ferret:
高橋さんが考える、内向的な性格だからこその強みはどのようなものですか?

高橋氏:
相手の心理状況を敏感に察知できることではないでしょうか。内向的な人って、相手にどう思われているかを気にしすぎているがために、自分にコミュニケーション能力がないと思い込んでしまい、内向的になっていると思うんです。裏を返せばそれは相手が何を考えているか、自分のことをどう思っているのかをずっと考えている人だと思うんですね。

相手がどんな思いを持って自分に話をしているのかがわかる人は、本当の意味での聞き上手だと思います。だからこそ私もお客様の話をきちんと聞いて、信頼を得られたのではないかと思っています。

また、相手の気持ちを察知できることで、今相手が自分を信頼してくれているかがわかるため、より適切なタイミングで商談を進められます。人間は、信頼していない人から何かを買ったりしようとは思いませんからね。仮に受注につながったとしても、その後の解約にも繋がりやすくなってしまいます。サブスクリプション型のサービスが増え、継続的に自社サービスを利用してもらうことが重要になってきている今、お客様の信頼を得ることは非常に重要になっているため、内向的な人こそ強みを発揮して信頼を勝ち取っていけるのではないでしょうか。

1週間でもいいから別チームの業務を経験してみる

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ferret:
マーケティングチームや、契約後の顧客をサポートするカスタマーサクセスチームなどを設け、分業制で顧客に向き合っている企業も増えています。

そのような体制の企業では、分業であるからこそ提供できる価値がある反面、チーム間での連携や、コミュニケーションが課題となってしまうケースもあります。高橋さんはこの問題についてどのように向き合っていますか?

高橋氏:
私は「まず経験してみること」が重要だと考えています。1社目の証券会社では、自分で顧客リストや資料の作成などの、いわゆる「マーケティング」の部分から営業までを務めていました。2社目ではインサイドセールスやカスタマーサクセスなども経験しています。私はこのように他部署が行っている業務を一通り実際に経験したことで、わかることや共感できることが多く、それらがコミュニケーションや業務の中で生きていると感じます。

例えば、マーケティングチームが獲得したリードに対して営業をする体制であれば、営業チームは「もっと確度の高いリードがほしい」といった要望が発生することがあります。

仮にマーケティングの経験があれば、ただその意見を伝えるだけではなく、「この業種は受注率が高いからABM的なアプローチはどうだろか?」「顧客のスコアリングをしていけば、傾向が見えてくるのではないか?」など、要望に対して具体的なフィードバックや、実現可能性の高い改善案を提案できますよね。それだけでコミュニケーションが円滑に進みますし、提案を受けた側も提案を前向きに受け止められます。このような部分で経験の差が生まれてくると思います。

ferret:
やはり経験することが重要なんですね。

高橋氏:
他チームからのフィードバックなども手段としてはありますが、限界があるなとも感じているので、実際にやってみるのが一番ですね。別に長期間である必要はなくて、1週間程度でも変化が起きると思います。0(ゼロ)と1の差は大きいですからね。

「できるマーケター」と呼ばれるような方は営業に同行していますし、「一流のマーケターは一流の消費者」と言われるように、実際に経験してみて、相手の立場を経験すること、共感できるようになることが重要ですね。

自分の強みを活かす

高橋氏は内向的な性格だからこその強みを、自身の営業やマネジメントに活かしています。

自身の特性や個性がネガティブなものだったとしても、その裏側の強みを見つけることで、日々の業務で高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。