ユーザーにとって有益なコンテンツをユーザー流入の導線とするコンテンツマーケティング広告よりも受け入れられやすく好感度が高いのが特徴です。最近は動画を活用したコンテンツマーケティングに取り組む企業も増えています。

スマートフォンで動画を視聴するのが当たり前になり、動画コンテンツマーケティングはさらに影響力を高めていくでしょう。今回は動画コンテンツマーケティングの事例を紹介し、明日からマーケティングに生かせるように解説します。

北欧、暮らしの道具店

ECサイト「北欧、暮らしの道具店」は、「雑誌で商品を知る楽しみを感じながら、買う場」として差別化し、メディアとして機能しています。北欧発の商品を中心に、日用雑貨やインテリアを販売しているのですが、独自の世界観が写真や文章に反映されていて、多くのファンを抱えています。

買い物する気がない人にサービスすることを目指し、YouTubeチャンネルでは「フィットする暮らし、つくろう」というコンセプトのもと、短編ドラマ、ドキュメンタリー、スタッフのおすすめ商品などを動画で紹介。インフルエンサーの習慣や家事、暮らしの道具をピックアップし、その人らしいルーティーンを伝える動画も公開しています。

これらの動画はLINEなどのSNSツールを通じて発信し、2019年11月時点でチャンネル登録者数は約5.6万人。YouTubeで人気が出にくい企業チャンネルとしてはかなりの成功を収めています。「繰り返し見て元気になる大好きなドラマに」という思いで作られた短編ドラマ「青葉家のテーブル」の再生回数は100万回超と、チャンネル登録者数の約20倍。目的どおり、繰り返し見ているユーザーの存在が推測されます。

動画コンテンツがユーザーとの深い関係性を築くコミュニケーションポイントとして機能している好事例です。共感を生み、ブランドのファンを増やしたい場合はストーリー性のある動画コンテンツを制作し、継続的に公開してはいかがでしょうか。

新R25

株式会社サイバーエージェントの連結子会社が運営するメディア「新R25」は、「これからの時代を生き抜く仕事や人生のバイブル」をコンセプトにR25世代(20~30代)である若手ビジネスパーソンの成長を促すコンテンツを発信しています。インフルエンサーや著名人など拡散力を持つ人のインタビュー記事など100万PVを超える記事も多数あり、堀江貴文氏などのトーク中心の動画コンテンツも公開されています。

ビジネスハックになるノウハウや注目のサービス紹介動画、注目の若手起業家へのインタビュー動画、ヒット商品の裏側に迫る解説動画など多種多様な動画がありますが、約1分前後の動画が中心。スキマ時間に見やすい超短尺で、若手ビジネスパーソンが通勤などの移動中にさっと視聴できるボリュームに抑えています。インタビューする際に合わせて動画撮影をすれば、一度の取材で複数のコンテンツを制作できるでしょう。記事と動画、どちらのほうが反響がいいか分析してPDCAサイクルを回すことで、今後の発信ノウハウにも生かせます。

動画コンテンツマーケティングにおける最大の課題は「継続」です。動画は情報量が多いものの、制作コストが高く継続のハードルが非常に高いのが難点。一度作ったはいいものの、途中で頓挫してしまうケースが多いです。1分前後と短い動画を一度に大量生産する形であればストックを作りやすく、継続的に更新できる点がメリットです。

タカラトミー

おもちゃメーカー「タカラトミー」のYouTubeチャンネルは登録者数100万人超の人気チャンネルです。トミカやリカちゃん、プラレールにベイブレードバーストなどさまざまなおもちゃを紹介しています。

動画コンテンツの内容は、タレントのおもちゃを紹介動画やおもちゃが主役のアニメ、おもちゃの遊び方紹介など多岐にわたります。おもちゃの使い方動画は、未購入の新規顧客獲得にも購入済みの既存顧客にもアプローチできるのがメリット。口コミ効果を発揮し、商品の魅力を伝えて購入意欲や顧客満足度を高められます。

子どもとYouTubeとの親和性は非常に高く、子どもに人気のコンテンツはYouTube動画の再生数が伸びやすいというのはもはや常識。ターゲットが子どもであれば、積極的に動画コンテンツを制作するのがおすすめです。

NewsPicks

ソーシャル経済メディア「NewsPicks」もNewsPicks Studiosを立ち上げ、動画コンテンツを公開しています。堀江貴文氏、落合洋一氏、中田敦彦氏といった著名人が各コーナーを担当し、定期的に動画を公開しているのが特徴。ほかにも今話題の人が複数回登場し、各自の知見をトーク形式で発信しています。

「NewsPicks」自体は国内外ニュースのキュレーション記事を多く取り扱っていますが、そこに付随したコメント機能によって専門家の解説をプラスし、付加価値を加えています。動画コンテンツは完全オリジナルで、さまざまな専門家がトピックに切り込んでニュースを多角的に捉える視点を持てるのが魅力です。テレビ番組のように作りこんだ高クオリティの動画で、かなり見応えがあります。

YouTubeチャンネルを開設していて、そこからの新規ユーザー流入も期待できます。固くなりがちな経済のトピックを映像によってキャッチ―かつわかりやすく伝え、さらなるファンの創出、ブランド力の強化につなげている事例です。

fender

人気ギターブランド「フェンダー」が運営するオンラインギター学習システム「Fender Play」も話題を集めています。初心者プレイヤー向けにレッスン動画を発信していて、パソコンやスマホからアカウント登録するだけで何百ものレッスン動画を視聴できます。ギターは人気のある趣味ですが、途中であきらめてしまう人が多いのが課題。手軽に視聴できるレッスン動画によって、顧客の離脱を防げるのです。

レッスン動画は、ひとつのアフターサービスにもなります。購入後も継続的にブランドに接触するコミュニケーションタッチポイントになり、ブランドイメージが上がって愛着も生まれ、顧客の囲い込みに貢献します。「Fender Play」は、サービスの購入・契約後のフォローを動画コンテンツで行っている事例だと言えるでしょう。

サイボウズ

クラウドサービス「cybozu.com」を提供するサイボウズは、システムで業務効率化を目指す企業として革新的な社内制度を多数導入し、新しい働き方を推進する企業でもあります。「100人いたら100通りの働き方」を唱え、働きやすい環境づくりにも注力していて、その取り組みはメディアにも多く取り上げられてきました。

育児と仕事を両立させる女性のリアルを描いたワークスタイルムービー「大丈夫」 は大いに注目を集め、数々の女性から共感の声が寄せられました。さらに今の働き方改革に疑問を投げかける働き方改革アニメ「アリキリ」は、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSで総務大臣賞・ACCグランプリを獲得しています。

こうした動画コンテンツが企業の知名度を高め、ブランディングにも大きく貢献しました。扱っているサービスとは直結していませんが、その分共感できるストーリー性を持った動画コンテンツになり、社会に影響を与えています。こうした動画コンテンツは採用活動に貢献するでしょう。

ニキペディア

「プロアクティブ+」ブランドで有名なガシー・レンカー・ジャパンは、日本のニキビケア市場をけん引する企業です。通販をメインとする「プロアクティブ+」のプロモーションとして、ガシー・レンカー・ジャパンが2013年に立ち上げたオウンドメディアが「ニキペディア」。さまざまな情報が流布するニキビケアの正しい情報を発信するメディアとして運営し、そこから「プロアクティブ+」購入につなげてコンテンツマーケティングを実施しています。

ニキビは思春期のメジャートラブル。10~20代のスマートフォン世代がメインターゲットなので、「ニキペディア」ではスマートフォンと親和性が高い動画コンテンツも制作しています。ムービーページにはニキビケアに適したレシピ動画が並んでいます。

まとめ

動画コンテンツマーケティングは、ブランドのロイヤル顧客を生み出す手法のひとつ。労力はかかりますが、それだけファンもつきやすくなります。今回ご紹介した事例を参考にしながら、ユーザーが喜ぶ動画コンテンツを制作し、マーケティングに生かしてはいかがでしょうか。