時代の移り変わりにより成長するビジネスもあれば衰退するビジネスもあります。変化に適応できなければ斜陽産業となり、撤退を余儀なくされるでしょう。

生き残るためには時代の波に乗り、消費者のニーズを捉え、独自の価値を提供する必要があります。

ビジネスの戦略を練る立場であれば、たとえ勢いが失われて赤字になったとしても立て直す施策を考えるべきです。意外な掛け合わせで新しい価値を生み出し、窮地を脱して成功したビジネスもあります。

従来のビジネスだけで競うのには限界があっても、ほかのビジネスと掛け合わせることでまったく新しい価値を提供できる可能性が生まれるのです。今回は起死回生の一助となるよう、ビジネスの再生事例をご紹介します。

カフェ×本屋

本が売れなくなった昨今、本屋は苦戦を強いられています。人々が紙の本ではなくインターネットの記事や電子書籍へとシフトしていくなかで、本屋はどう生き残っていけばいいのでしょうか。

そのひとつの解を示したのが、ブックカフェです。本はゆっくりと座って読むことからカフェとの相性が良く、本屋とカフェが一体型になった施設が増えてきました。

*その代表的な成功事例がTSUTAYAのフランチャイズ展開と企画設計を行っているCCCエンタテインメント株式会社です。*カフェ併設型の蔦屋書店は大きな話題を呼び、図書館のように立ち読み感覚で本を試し読みしながらゆっくりできるブックカフェとして人気を集めています。

結果として売り上げは伸びていて、販促施策としても十分に機能しています。じっくり消費者が試す機会を提供しつつ、利益を出しビジネスとして成立させた点が成功の理由でしょう。

参考:コーヒー×TSUTAYA 地方スーパーの仰天戦略|ITmedia ビジネスオンライン

取り壊しが決まったビル×貸し会議室

全国各地に貸し会議室を展開する株式会社ティーケーピーは、取り壊しが決まったビルを割安に仕入れることで着実に利益を出していきました。

2005年から地道に貸し会議室の数を増やしていき、国内外に2,000以上の貸し会議室を展開。TKPのリピート率は85%、いまや時価総額1,300億円超の国内最大手企業に成長しています。

負のあるところにビジネスチャンスは眠っています。少子高齢化や都市部の再開発により多くの建物が不要になり取り壊される、企業は少ない人員でやりくりするために業務効率化やコストカットをしなければならない……。

取り壊されるビルに貸し会議室を作ってシェアするビジネスは、このふたつの負を掛け合わせ解消するものでした。

時間的にも経済的にも効率がよいシェアビジネスは、これからさらに大きく広がっていくでしょう。

参考:斜陽産業を再成長産業に再生したい/ティーケーピーの未来戦略

地方大型商業施設×コト消費

滋賀県の大型ショッピングモール「ピエリ守山」は、東京ドーム3個分ほどもある大規模施設。

かつて200店舗が軒を連ねていたものの、2013年には8店舗にまで減少し「明るい廃墟」とすら呼ばれました。

ところが2014年に体験型施設へとリニューアルしたところ、年間8か月の開催期間に1万人が訪れるほどの人気スポットに生まれ変わり、店舗数も200店舗にまで復活し再生を遂げたのです。

最大の勝因は、モノ消費からコト消費へと切り替えたこと。

単なるショッピングモールではなく大型のアスレチックを取り入れ、子どもだけでなく大人も楽しめるようにしたことで、ファミリー層中心にたくさんの買い物客が集まってきます。

アスレチックの種類は空中の丸太渡りやスライダーなどかなり大規模で、これだけのアスレチックを都市部に作るのは難しく、大きな強みになっています。

「こんな郊外には人は来ない」と考えるのではなく「こんな郊外だからできることは何か」と考えたことが再生できた理由でしょう。

参考:ピエリ守山、「体験型」で再生 「コト消費」で商業施設に活気 | 月刊「事業構想」2016年3月号