優秀なマーケターとそうでないマーケターの違い

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質問:
優秀なマーケターと、そうでないマーケターの違いって何だと思われますか?

奥谷氏:
マーケターには誰でもなれるんですよ。Oisixがクレヨンしんちゃんとコラボレーションしましたよね。あの広告はバズったんですが、担当した井上君というのは元林業&元ラッパーです。変わっていますよね。けど、彼はどのようにして利益を増やすかということにストイックです。それに、常に顧客目線で、社長と対峙しても説得する力があります。それらができない人は優秀なマーケターではないでしょうね。

徹底してお客様の状況を把握すること。どういう反響が出ているのか自分の仮説を立てることも重要です。仮説とお客様のニーズがマッチしていないと社会課題だったりお客様の困りごとを解決したりできません。それはすなわち顧客目線です。

菅氏:
優秀かどうかは置いておいて、マーケティングの定義を人それぞれ持っていた方が僕はいいと思っています。自分にとって何かしっかりした定義を持つとそこから掘り下げられますよね。僕が好きな定義はネスレ日本株式会社の「顧客の問題解決」です。この定義はエンドユーザーだけでなく、社内のスタッフを含め360度関わる人すべての問題解決をする視点を持っています。すなわち、人間洞察なんですよ、人をどれだけ見られるか。

奥谷氏:
それでいうと、自分が何を見ているかという解釈力も必要です。「この人はこういう解釈をするんだ。おもしろいな」という人のおもしろいところを見つけられるかは大事だと思います。人の欠点をおもしろみとして捉えるだけで、人の良さを引き出したりしますし、自分と一緒になって仕事をしてくれる仲間につながっていくので。

本間氏:
ここ数年理系がもてはやされていますが、1935年まで実は哲学者の方が物理学者より格上だったんですよ。すなわち文系の方が理系より世の中に求められていました。問題は、哲学が再現性というものを途中で見失いロジックだけに走りました。物理というのはロジックは弱いが、再現性が立ちます。本来文系のマーケティングなどは再現性があって優秀なんです。人間の行動を読むのは理系には難しくて、文系の方が長けています。顧客重視への回帰は人間回帰なのでそれができる人が優秀だと思いますね。

江戸時代の帳簿は、個人帳簿なんですよ。ID-posから個人の購入履歴が見られるようになりましたが、そういう江戸時代のものに戻ってきています。ですから、今のマーケティングは人間回帰に近づいています。

PDCAサイクルは日本人に不向き!?

質問:
PDCAサイクルやPoCを適用して仕事を行う企業が増えています。マーケターとして、対クライアントさんとか含めて気をつけていらっしゃることはありますか?

奥谷氏:
僕はPoCですね。ずっと考えても仕方がないのでPDCAサイクルをDPCAサイクルにしますね。

菅氏:
僕は支援者の立場なのですが、クライアントと一緒に作っていきますね。プロジェクトの状態によって、PDCAサイクルもPoCも取り入れています。ただ、自分の反省として、まだマーケティングのやり方が確立していない企業に頭でっかちすぎる提案をすると意外とワークしないんですよ。それはまだマーケティングに対して頭が重くて、慣れていないからなんです。描いた戦略が頭でっかちな重いものではなく、現場でワークしていく状態にすることが、自分の今のテーマにもなっていますね。

本間氏:
PDCAサイクルの問題は、そもそも日本人に向いてないと僕は思うんです。先日、某企業の役員が、日本人はPDCAをPlan、Do、Check、ActionじゃなくてPlan、Delay、Cancel、Apologizeだと言っていました(笑)。どういうことかというとプランの精度がまだまだ高くない。いきなり100%のPDCAサイクルで仕事を実践しようとしているからダメでなんです。Planができたらそれに満足してしまう人が多いというのが、日本人のPDCAサイクルの回し方の欠点です。完璧なPlanを作って満足するのではなく、それを実践する力をつけていくDo、Check、Actionの力をつけていくべきだと思います。