SaaS領域のスタートアップチームが事業成長戦略のメンタリング、サポートを受けられるアクセラレータープログラム「B-SKET」。その第4回目となる「Batch4」の成果を発表する「Demo Day」が2020年10月2日に開催されました。
当日は、上場を果たしているSaaS企業によるセッションや、「Batch3」卒業生セッション、「Batch4」採択企業のSaaSビジネスに関するプレゼンテーションなど見どころが盛りだくさん。当日オフライン来場は100名以上の満席となり、Web視聴も約300人の大盛況となりました。
「B-SKET Batch4 Demo Day」採択企業は、このプログラムのセッションを4ヶ月間受けてどのような成長を遂げることができたのでしょうか。今回はそのレポートをお届けします。

B-SKETで目指すもの

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B-SKETとは、以下の4つを目標に掲げるアクセラレータープログラムです。

①いかにSaaSの価値を高めるか 
②プロダクトマーケットフィットの達成
③いかに起業家から事業家になるか
④業界内ネットワークの構築

当日アジェンダ

①:上場SaaSのスタートアップによる対談「SaaS事業を成功させるアートとサイエンス」
②:「何を学び、その後どう飛躍したのか」
③:Batch4採択企業によるSaaSプロダクトのプレゼンテーション・デモ/投票
④:パートナー企業セッション「激変する環境で成長し続ける極意」
⑤:表彰式

セッション1:SaaS事業を成功させるアートとサイエンス〜上場企業経営者3名にきくSaaSビジネス成功の再現可能性とは?〜

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まず、直近で上場を果たしたSaaSスタートアップ企業による対談が行われました。

登壇者:

  • 株式会社カオナビ 代表取締役社長CEO 柳橋 仁機 氏
  • 株式会社フィードフォース 代表取締役社長 塚田 耕司 氏
  • 株式会社PR TIMES 代表取締役 山口 拓己 氏 

諸先輩方の創業間もない頃の苦労話などを振り返りつつ、成功の秘訣を探りました。

プロダクトが生まれ、PMF(プロダクトマーケットフィット)を成し遂げるまで

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SaaSビジネスにおいて「プロダクトがマーケットに受け入れられる前」そして「マーケットに受け入れられてグロースしていくタイミング」この2つが重要です。
最初のプロダクトを考えてが正しいと考えてマーケットに投入していく部分で、どのようなポイントを大事にして経営してきたのか、あるいはどんなことを軸においてアクションを起こしてきたのかを、それぞれ語っていただきました。

・カオナビ 柳橋氏
SaaSビジネスは、例えて言うなら『雪だるま』のような感覚です。最初が綺麗な丸だと、いくらでも転がっていく、いくらでも大きくなります。一方で、最初がいびつだといくら転がしても転がらない、大きくならない。だからきれいな丸をしっかり作ってそこから一気に転がす。綺麗な丸を作るフェーズと、そこから一気に転がすフェーズを作る、というのを凄く意識しています。綺麗な丸を作るフェーズは極力お金を使わないようにします。『転がった!』と思ったらトップギアにして転がしまくる、そして大きくする。『綺麗な丸』というのは、ストック収益だけでキャッシュがポジティブに転じた時。プロダクト収益だけでポジティブに回りだしたら、そこへガソリンを届けるようなイメージでやっていました」

・フィードフォース 塚田氏
「弊社はもともとデジタルマーケティングを支援するサービスなんですが、創業当然はプロダクトマーケットフィットという言葉もなかったし、やりかたもなかった。基本的にはプロダクト・アウトでした。我々が強みにしている基礎技術があってそれをどういう業界であれば使ってもらえるか、が課題でした。クライアントありきでクライアントと一緒に求めるものを基本にして機能を作るやり方をすると、まるで注文住宅に近いような雰囲気も出てきがちです。一社にしか使われないような特別な機能を盛り込んでも結局それで数回失敗している。特定のお客様に完全に寄せてしまうのではなく、最大公約数的なものは何なのかとを考えながらだんだん進化していった」

・PR TIMES 山口氏
「『プロダクトアウト』でいうと最小単位の、キーとなるプロダクト、つまり不要な機能を削るポイントを見つけ出す、がポイントです。それはユーザーの身につくポイントは何か、に注目することを繰り返して見つけていった。使ってもらえないものはカット、使ってもらえるものにどんどんリソースを投入していく、を繰り返しました」

マーケットニーズに偏ると特定顧客のわがままに、プロダクトアウトに偏ると自社のにひとりよがりになってしまうもの。プロダクトアウトも、マーケティングも、両軸で極める必要がある、と語ります。

マーケットインの意思決定の仕方

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SaaSビジネスにおいては、営業が市場ニーズを掴んできて、「この製品開発して!」と社内に向けてプッシュが起きる場面もあり得ます。その際、社内の意見の闘わせ方、意識決定の仕方について語っていただきました。

・フィードフォース 塚田氏
「最終的に決める人はそのことについて誰よりも一番考えてる人でなければならないと思います。その課題について、本当に24時間365日考え続けているような人。『A案』もあって『B案』もあるけど、『俺に決めさせろ!』というコミットメントのある人間が決めたほうが結局正解に近いですね」

・カオナビ 柳橋氏
「みんなで考えて議論していくよりも、責任者の独断で決めた方がいいんじゃないかと思います。マーケットインの際の全責任とプレッシャーを与えた方がうまくいくのではないか」

SaaSビジネスのグロース

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マーケットフィットした後の成長を軌道に乗せるために大切なことを語っていただきました

・PR TIMES 山口氏
「マーケットフィットとは言わば『移動店舗』のようなものだと思っています。お客様と一緒に動きながら、ずらしながら、少しずつ拡大していく。しかも、みんなにわからないほうがいい。ある企業様のプレスリリースで、最初は短文、最新のものだと何ページもあり大長編になった事例があるんですね。同じお客さんであってもどんどん移り変わることに価値がある、SaaSプロダクトの利用価値もそれに伴って変わっていきます」

・フィードフォース 塚田氏
「大義があればみんな応援してくれます。大義のもとに仲間、ファンを増やしていけば、結果的に成長につながっていきます」

・カオナビ 柳橋氏
「僕は起業家なのか経営者なのかという問いを考え始めました。最初のプロダクトがマーケットフィットする前は、お客を捕まえてお金を調達してこなきゃいけない。ある程度『雪だるま』ができたら経営者のマインドに変わって組織に任せる、権限移譲、リソースをちゃんと配分するなど、経営者マインドとして意識していかないと組織は大きくなっていきません。特に上場する頃には完全に経営者マインドになってないと上場できない。起業家マインドをどこかで切り離す必要があると言えます」

これからのSaaSカンパニーに伝えたいこと

・フィードフォース 塚田 氏
「5年、10年やれるような骨太のテーマを選んだほうがいいです。時間がかかるので目先のものを選ばないほうがいいですね」

・PR TIMES 山口氏
「志を育む、ですね。飽きないことにも通じるかもしれない。はじめから大志を掲げるというより事業をやっていく中でどんどん志が育まれるものです」

・カオナビ 柳橋氏
「自分が日本一このテーマについて考えてる、ぐらいの志が大事です。『俺はこれだ!これをやらないと死ねない!』ぐらいのテーマを見つけましょう」