戦略PRでパーセプションを変えよう。ナラティブ時代に企業が発信すべきこと
パーセプションチェンジを実現する戦略PR
パーセプションを変えるのに必要な手段がPRです。PRは商品の広告宣伝とはちょっと違います。私の書籍『戦略PR』を読んでくださった方にはおさらいになりますが、世の中全体でなぜその商品が必要なのか、なぜ今そのサービスを使うべきなのかという空気を醸成していく「空気づくり」が基本になります。空気づくりを行って、関心テーマを設定しターゲットに落とし込む。簡単に言うと、*①皆さんの企業の商品やサービスは何がいいんですか? ということと、②今世の中では何に関心があるか? ということ、③購入していただきたいターゲットのメリットや関心は何か? この3つをうまくつなげて、商品需要に落とし込む。*このフレームワークは15年くらい変わっていません。
一つの事例を紹介します。SEA BREEZEというブランドがありますよね。SEA BREEZEの認知度は100%に近く、ロングセラー商品です。しかし、課題が一つありました。この2年ほどの間で「ブラック校則」の問題が話題になりましたが、日本の学校では勉強に関係のないものを持ってきてはいけないところがほとんどです。SEA BREEZEは勉強に関係があるかというとグレーゾーンでした。調査によると39%の学校が禁止していることが分かり、教師によって判断もまちまちで、許す先生もいれば没収する先生もいる。これはメーカーにとってネガティブなパーセプションでした。そこで学校の先生や保護者の方に戦略的なPRを実施することになりました。
「校内クールビズ」という言葉をつくって、校内クールビズで勉学のコンディションを向上させようとPRすることにしました。校内環境の調査を進めると、冷房が完備されている学校が少ないことが判明したんです。大人社会ではクールビズが促進されて快適な環境にいるにも関わらず、子どもたちの環境は過酷である。校内クールビズを推進するべきだとの声を可視化させる作戦です。SEA BREEZEを使った生徒と使わなかった生徒に宿題をさせる実験を行い、使用した方が集中力があったという結果も出ました。そして、校内クールビズが重要で制汗剤が役に立つという事実をメディアに取り上げてもらい、先生や保護者に関心を寄せてもらう。今回の場合はさまざまなメディアに取り上げていただきましたが、先生たち向けの専門媒体である「教育家庭新聞」も大きく取り上げてくれました。宣伝行為をしているだけではダメで、このSEA BREEZEの事例でも一つのナラティブをつくっているわけです。このナラティブの中で商品が必要な必然性を組み込んでいくことが大切になっていきます。
ナラティブを見直し、戦略PRでパーセプションを変えていく
具体的にナラティブとはどういうことになっていくのかを紹介したいと思います。
UUUM株式会社はHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんなど日本のトップYouTuberが所属する会社です。順調に見える同社ですがパーセプションに課題がありました。なぜかというと、世間の人たちからは「YouTuberの芸能事務所」と認識されており、スタートアップで働きたい優秀な人材を逃すなどの問題があったからです。そこで、パーセプションを「個人の力をエンパワーするコンテンツカンパニー」に変えていこう、となりました。今は個人が活躍する時代です。それに加えて、UUUM株式会社では、コンテンツづくりのアドバイスをしたり、学生からYouTuberになった人に向けてファイナンスの知識をつけてあげたりするなどのサポートをしています。そのような事実をベースに、「UUUMとは個人の成功を変革する企業である」というナラティブを策定しました。例えばそれをメディアに投げかけると、「そうだったんですね」とメディアが新たな価値に気づき取材が実現し記事が出る。新しいパーセプションに移行するトリガーになります。
もう一つの例が、株式会社ワールドです。ワールドの課題は「旧来型のアパレル大企業」というパーセプションでした。そのパーセプションによる弊害は、人材のリクルーティングだったり新規取引先の開拓だったりと会社の存続に関わってくることでした。そこで、ワールドは「エコシステムを解放する総合ファッションサービスグループ」という新たなパーセプションの獲得に動きます。そして今人気の、自分たちとは対極にあるDtoC(Direct to Consumerの略称。製造者が直接消費者と取引を行うビジネスのこと)ブランドに目をつけたんです。DtoCブランドを集めたポップアップ型百貨店「246stMARKET」を自社ビルを開放して2週間限定で開催しました。
参考:ワールドがスタートアップブランドを集めたポップアップ型百貨店をオープン 全13ブランドを集結 | WWD JAPAN.com
アメリカ、特にニューヨークではポップアップ型のDtoCブランドを集めたマーケットが今非常に人気なんです。DtoCブランドがリアルなつながりをつくれる場所をワールドが提供し、13ブランドが参加。ワールドの展示会で過去最高の動員数を誇るイベントになりました。ポップアップ型百貨店をワールドが日本で初めて行うことで集客も従来のユーザーとは違い、SNSを積極的に活用するユーザーが参加し、どんどん情報を発信してくれたんです。話題にもなってメディアの取材でも多く取り上げられました。これによりワールドの評判も「粋なことをやる」「ワールドは今までのノウハウや巨大なアパレルブランドとして培ってきたプラットフォームを開放し始めているんだな」と認識が変わっていきます。一回だけでは変化しませんが、方向性を変化させることで、パーセプションを変えるきっかけになります。
今日はナラティブとパーセプションについてご説明しました。ナラティブを考えることは今後とても重要になっていきます。ナラティブというのは広告のキャッチコピーでもなく、Webサイトなどに書くステートメントとも違います。複合的にどういう風に世の中に語っていくかということを設定することがナラティブです。2000文字くらいで皆さんの企業やブランドについてまとめられないといけません。そして認知ではなく認識が大切になります。どんな風に受け取られるかが重要です。パーセプションのチェンジはPRの得意領域です。課題に直面している企業やブランドは、ナラティブを見直し、戦略PRでパーセプションを変えていくということに挑戦してみてください。
- 広告
- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
- コンテンツ
- コンテンツ(content)とは、日本語に直訳すると「中身」のことです。インターネットでは、ホームページ内の文章や画像、動画や音声などを指します。ホームページがメディアとして重要視されている現在、その内容やクオリティは非常に重要だと言えるでしょう。 なお、かつてはCD-ROMなどのディスクメディアに記録する内容をコンテンツと呼んでいました。
- ポップアップ
- ホームページにおいてポップアップとは、現在見ているホームページの上に、重なるような状態で、新たな画面が開き、その最前面面に表示されることを言います。より目立つ、注目を集めることが出来る反面、見ている画面を遮るように表示されるので、不快に受け取られる傾向があります。
- ポップアップ
- ホームページにおいてポップアップとは、現在見ているホームページの上に、重なるような状態で、新たな画面が開き、その最前面面に表示されることを言います。より目立つ、注目を集めることが出来る反面、見ている画面を遮るように表示されるので、不快に受け取られる傾向があります。
- フォーム
- フォームとは、もともと「形」「書式」「伝票」などの意味を持つ英単語です。インターネットの分野では、パソコンの操作画面におけるユーザーからの入力を受け付ける部分を指します。企業のホームページでは、入力フォームが設置されていることが多いようです。
- 広告
- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
- キャッチコピー
- キャッチコピーとは、商品などの宣伝の際に使用される文章のことです。 宣伝をする対象のイメージや特徴を簡潔にまとめつつ、見た人の印象に残る必要があります。一言で完結するものから数行になる文章など、実際の長さはバラつきがあります。 キャッチコピーの制作を職業とする人のことを、「コピーライター」と言います。
- Webサイト
- Webサイトとは、インターネットの標準的な情報提供システムであるWWW(ワールドワイドウェブ)で公開される、Webページ(インターネット上にある1ページ1ページ)の集まりのことです。
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