さまざまなものを共有し、より暮らしやすく、より豊かにするシェアリングエコノミー。2021年までに市場規模は1000億円超にまで成長するとも言われています。その領域は、モノ、空間、スキル、移動手段、お金、リソースなど年々広がりを見せていますが、認知されているサービスと実際に利用されているサービスには差があるようです。

今回は国内のシェアリングエコノミーサービスの動向についての解説と、認知と利用の比較を行いました。

市場規模と最近の動向

矢野経済研究所が行った調査によると、国内シェアリングエコノミーの市場規模は、年間約20%増加、2020年には1000億円を超えると予測されています。
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こうした増加の背景として、旅館業法施行令の一部緩和や2017年の民泊新法(住宅の空き部屋を有料で旅行者に貸し出す「民泊」のルールを定めた住宅宿泊事業法)の成立などで、民泊市場への参入事業者が増えたこと、2016年に『シェアリングエコノミー協会』が設立され、シェアリングエコノミーに対する認知が広がったことなどが関係しています。

実際に2019年のラグビーW杯日本大会により訪日外国人が増え、民泊、カーシェアリング、ライドシェアなどの需要が高まりました。

お金を共有するクラウドファンディングの分野においては、SNSを中心として注目度が上がり、スタートアップやベンチャー企業、個人など、資金調達方法として広く知られています。

シェアリングエコノミーが成長している理由

不況や消費税増税などによる消費意欲の減退に伴って、新たな選択肢としてモノを「共有」できるシェアリングエコノミーサービスが加わったことが挙げられます。

またスマートフォンの普及により、場所や時間に囚われることなく簡単に申込みや利用ができること。そして、シェアリングエコノミーにより個人が収入を得られる、という副業的側面も、利用増加を後押ししているでしょう。

シェアリングエコノミーサービスの「認知」と「利用」

4人に1人が「認知」している

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出典:国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019|PwCコンサルティング合同会社

PwCコンサルティング合同会社が行った「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019」によると、「シェアリングエコノミーを知っている」「聞いたことがある」と認知している人は4人に1人という結果が得られました。

「移動手段」、「モノ」の順で高く認知

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出典:国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019|PwCコンサルティング合同会社

最も認知されているカテゴリーは、自動車や自転車などの「移動手段」が74.4%、次いで洋服や家電などの「モノ」が71.6%です。

他のカテゴリーに関しても2017年から2018年にかけて大きく成長をしています。2018年はシェアリングエコノミーが広く認知された年だと言えるでしょう。

実際に「利用」したのは7人のうち1人の割合

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出典:国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019|PwCコンサルティング合同会社

「利用したことがありますか?」という質問に対し、利用経験のある人は15.4%。全体としては認知よりは少ないものの、利用経験者は年々増加傾向にあります。

「モノ」以外のカテゴリーの認知者利用率が課題

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出典:国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019|PwCコンサルティング合同会社

シェアリングエコノミーサービス利用経験者を対象に、実際に利用したカテゴリーを調査すると、「モノ(58.2%)」が最も多く、次いで「場所・空間(35.4%)」、そして「移動手段(27.5%)」の順となっています。

「モノ」以外のカテゴリーの認知者利用率の伸長ははまだまだ順調とは言い難く、認知から利用への行動へと繋げるには、まだまだ課題があることが伺えます。