2019年の母の日と父の日、夏休みの3回にわたって東武伊勢崎線春日部駅にオイシックス・ラ・大地株式会社が運営する「Oisix」と「クレヨンしんちゃん」のコラボレーション広告が掲載され大きな話題を呼びました。

「Oisix」がこの広告に込めた想い、そして今後マーケターにとって重要となる「ブランドジャーナリズム」とはどのようなものなのでしょうか。

この企画の生みの親、オイシックス・ラ・大地株式会社 統合マーケティング本部 本部長 ソーシャルマーケティング室 室長 井上政人氏と、広告を手掛けた株式会社カラス代表/株式会社エードット 取締役副社長 兼 CBO 牧野圭太氏にお話を伺いました。

プロフィール

井上政人氏
オイシックス・ラ・大地株式会社 統合マーケティング本部 本部長 ソーシャルマーケティング室 室長
大阪府出身。高校卒業後、音楽活動と並行して植木職人、木こり、デザイナー、Eコマースディレクターとして活躍。その後、Oisix(オイシックス)に入社。OisixではEC事業本部PR室、統合マーケティング部ソーシャルマーケティング室長を経て現職、統合マーケティング本部長。KitOisixプレミアムモニター、#やさいドレス、渡部建の明太マヨ、OisixテレビCM「献立予報」、東京ハーヴェスト、100万人のキャンドルナイトなど「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の3ブランドのマーケティング活動に携わっている。  

牧野圭太氏
株式会社カラス代表/株式会社エードット 取締役副社長 兼 CBO
1984年生まれ。2009年博報堂入社/コピーライターに配属。HAKUHODO THE DAYを経て、2015年独立。株式会社エードット取締役副社長CBO/株式会社文鳥社/カラス代表取締役。ブランドジャーナリズムを掲げ、社会性あるクリエイティブを啓蒙・実施している。

「Oisix」のサービスでみさえさんを助けられるのでは。コラボレーションに至った経緯

ferret:「Oisix」と「クレヨンしんちゃん」の広告は大きな話題を呼びましたが、コラボレーションするに至った経緯を教えてください。

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▲(左)牧野圭太氏 (右)井上政人氏

井上氏:クレヨンしんちゃんのお母さんであるみさえさんが、朝から忙しく家事をする短い動画があってTwitter上で「みさえ、神だ!」という多くの声とともにバズっていました。「Oisix」のサービスを使ってくれるとみさえさんの家事の負担を軽減するのに役立てるはずだという想いがあったんです。それからクレヨンしんちゃん側にその話を持っていって、「Kit Oisix」というミールキットのサービスとコラボレーションさせていただきました。牧野さんにお願いしたのは別の経緯だったんですよ。

牧野氏:僕が、株式会社カラスでLadyKnowsという男女の不均衡を解消するためのプロジェクトを始動させるという内容をTwitterでつぶやいたんです。井上さんとはお会いしたことなかったんですが、そのツイートに返信してくれました。たまたまその次の日にオイシックス・ラ・大地株式会社に用事があったので、会って話しましょうとなりました。

井上氏:忙しい女性をサポートしたいという話を牧野さんにそのときお話しして、別の日に広告コミュニケーションの部分を提案してくれることになりました。提案の中のひとつにたまたま、クレヨンしんちゃんの提案があって、打ち合わせをしたのが3月でこれから着手すると母の日に間に合うんじゃないかとなって、母の日にローンチできるように制作をはじめたんです。

母の日も考えたんだから、父の日も何かしたいよねとなってひろしさんの広告を展開することになりました。

そして、「#主婦らの夏休み戦争」というハッシュタグが一昨年あたりからバズっていて最後にしんちゃんを登場させたいなと思っていたので、しんちゃんが「お母さんありがとう」と言う広告コミュニケーションをすることにしたんです。

1週間で20万リツイート。大きな反響を呼ぶことに

ferret:反響はどれくらいのものだったのでしょうか?

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井上氏:どれも反響はすごく大きかったです。しんちゃんを起用した夏休みの広告については、約1週間でTwitterで20万リツイートされました。Oisixでは、初めての方向けに「おためしセット」を販売しているのですが、「おためしセット」の購入にも大きくつながりました。メディア露出もYahoo!トップやLINE NEWS、全国テレビなど、複数のマスメディアにとりあげていただきました。

うれしかったのが、社員の親御さんから広告を見て「いい会社だね」と言うメッセージが届いたりしたそうなんです。社員にとってもオイシックス・ラ・大地株式会社という会社で働いていることを誇れる機会にもなりました。私自身、これまでさまざまな仕事を手がけてきましたが、楽しかった仕事のひとつになりましたね。

牧野氏:すごいなと思うのが、私がいろんな会社に訪問して会社説明をするときに、皆さんクレヨンしんちゃんの広告のことを知っているんですよ。世の中に広告はたくさんあって、今日乗った電車にあった広告なんて覚えてないという人の方が多いと思うんです。それなのに、皆さん知っているのはそれだけ心に響くものがあったのだろうと思います。

ブランド・ジャーナリズムが今後重要に

ferret:牧野さんは「ブランド・ジャーナリズム」を提唱して啓蒙を行われていますが、「ブランド・ジャーナリズム」について教えていただけますか?

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牧野氏:私はブランド・ジャーナリズムを

「ブランドとしての「思想」と「美意識」を基点にした、社会への「批評」となる広告コミュニケーション」
引用:「ブランドジャーナリズム」の時代 | エードット・ジャーナル

と定義しています。

2017年の3月8日の国際女性デーに合わせて、ウォール街の象徴、雄牛の銅像「チャージング・ブル」の前に設置された「Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)」という銅像を見て思い浮かびました。この銅像は、企業が女性を役員に登用する比率の低さや金融業界での女性と男性の給与の不平等について訴えかけるキャンペーンとして大きな話題となり、世界最大級の広告賞「カンヌライオンズ」で3部門受賞しました。このキャンペーンの影響で、ゴールドマンサックスは女性の取締役がいない企業のIPO(新規株式公開)を担当しないと発表。「Fearless Girl」は社会を動かすほどの大きなインパクトを与えたんです。

今の世の中に必要なのは、広告でただ認知を上げて商品・サービスを売るのではなく、企業が社会との結びつきをつくって消費者が企業のファンになってくれる必要があると思います。よく経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」と言われますが、現代は「ヒト」「モノ」「カネ」「意味」の時代になってきていると感じます。

今回のケースでいうと、世の中のお母さんは普段から忙しくて、夏休みはもっと大変になるという潜在的な社会の文脈がありました。その社会文脈とOisixの「忙しい女性を応援したい」という理念が結びついてうまくいったのだと思います。今は商品・サービスのスペックで売れる時代ではないので余計に、意味や意義というのが重要になってくると思うんです。

井上氏と牧野氏が考えるマーケターに必要とされるものとは?

ferret:マーケターにとって必要な力とはどのようなものだとお考えですか?

井上氏:事業を理解することと顧客を理解することですね。この人だったらこのタイミングでどういう課題を持っているだろうと思いを馳せることと、自分のビジネスの事業理解との掛け合わせがアイデアを生みます。

今回の広告を考えるときも、母の日のときは、自分の奥さんだったらどうやったら喜んでくれるだろうかと考えたり、父の日の場合は自分が父親になったからいいパパってなんだろうと考えを巡らせました。そして夏休みの広告については、子どもが「ママありがとう」って言うとお母さんはどんな疲れも吹き飛んでしまう。子どもの存在って大きいんですよ。そんなことを考えながらつくっていきました。

ferret:牧野さんはマーケターとお仕事することが多いと思いますが、マーケターにどのようなことを期待しますか?

牧野氏:個人の想いとしては、単純に儲かればいい売れればいいというだけでなく、自分たちの仕事でより良い社会をつくることを意識してほしいですね。広告をつくるとなったときに、その広告を通じてより良い社会を築いていこうという考えを持ったマーケターがかっこいいなと思いますね。

ferret:ありがとうございました。

オイシックス・ラ・大地株式会社:https://www.oisixradaichi.co.jp/

株式会社カラス:https://karasu-a.com/

井上さん、牧野さんの新たな取り組み
復職はひとりじゃない!Oisix復職応援 | オイシックス・ラ・大地株式会社