場の引力がキーワードに

こうした本屋に共通しているのが、本を売るという価値を超えた場としての魅力です。例えば、本屋B&Bは単にビールが飲めるというキャッチーな魅力だけでなく、読書好きにとっても「また足を運びたくなる」イベントやセミナーを開催し、人と人との出会いすら期待できる場の引力を持っています。

具体的な形になるのは、まだまだ先のことかもしれませんが、岐阜県の庭文庫も、宿泊サービスを提供することで、都会の人と地方の人をつなぐ一つの場として、地域活性化のハブとしての引力も持ちうる可能性を秘めています。

このように、場の引力を持つ本屋を作るためには、一体どんな点を大切にしていけばいいのでしょうか。

体験を提供する本屋という場

場としての引力を高めるためには「本を買う」以外の体験を提供することがひとつの方法と言えるでしょう。例えばセミナーを開催するのもその一つ。本の著者を呼ぶもよし、ある本をテーマにそれに関連するイベントを開催しても良いでしょう。

例えばレシピ本なら、料理教室。コーヒーにまつわる本を切り口に、コーヒーのドリップ教室を開催してみるのもいいかもしれません。

本屋で体験をした後に、さらにその世界を深めたくなった人は本を購入してくれるのではないでしょうか。

出会いを提供する本屋としての場

本屋が場の引力を持つための方法として「体験」に次いで考えてみたいのが「出会い」というキーワードです。
もともと本は新たな知識や世界との出会いをもたらしてくれる存在です。本屋に足を運ぶ人たちにとって、本だけでなく価値観、モノ、ヒトとの出会いは喜ばしいものとして捉えてもらえることでしょう。

そもそも本は多様な魅力に満ちたコンテンツです。書店員の方の中には「お客様にこんな本との出会いをしてほしい」という想いを込めて、本の並びを考えたり、POPを作ったりしていた方もいるでしょう。

出会いを本屋として提供するという取り組みは、こうした従来やってきた仕事の幅をほんの少し広げてみるだけでもいいのです。
出会いの提供の仕方は一つではありません。読書会の開催で人との出会いを提供してみるのもいいですし、小説のイメージに合わせた美味しいコーヒー豆との出会いを提供してみてもいいかもしれません。

「この本屋さんに来れば、何かおもしろいコト/ヒト/価値に出会える」という期待感を顧客に感じさせ、出会いを提供できる本屋は、出版不況と言われるこの時代でも生き残っていけることでしょう。

体験や出会いが共通してあること

今、注目されている書店の取り組みを事例に、これからの書店の生き残り戦略を考えてみた今回。「ビールが飲める」「おしゃれな雑貨と出会える」「面白い人に会える」などその切り口はさまざまですが、共通していたのは体験や出会いの提供を通じて、「場としての魅力・引力」を高める工夫ができている書店が、今勢いがあるという点ではないでしょうか。

出版不況やインターネット販売の普及など時代が変わったとしても「新しい出会い」を人々が求める点は変わりません。
これからの新しい書店の在り方“本屋2.0”のヒントは、新たな出会いと場の魅力を提供する引力のある本屋づくりにあるのです。