シェアやレンタルサービスなどをはじめとして、モノを所有しない新しい消費スタイル「リキッド消費」が広まり、マーケターの注目を集めています。リキッド消費の台頭に伴って、これまで購買意欲を刺激していたブランド力やセールなどの安売りの効果が下がりつつあると言われています。

そこで今回は、これからますます広がっていくであろうリキッド消費の基本知識を解説。そしてその裏にある生活者の変化に注目しながら、なぜリキッド消費が広がっているのか、そしてどんなサービスがリキッド消費にマッチしているのか紹介します。

リキッド消費とは

イギリスで提唱された「リキッド消費(Liquid Consumption)」は、現代人の消費スタイルの変化を示す言葉で、短期サイクルかつ所有を前提としないアクセス・ベースの消費行動を指します。アクセス・ベース消費とは所有権が移転しない取引による消費のことで、レンタルやシェア、サブスクリプション、コト・サービス消費などが該当します。

今まではモノを買って消費する「ソリッド消費」が主流でしたが、最近はリキッド消費も普及したことで消費のパターンが拡大しました。リキッド消費はソリッド消費に比べて消費のサイクルが速く、より短い時間で購入を決定したり、ブランドの切り替えが頻繁だったり、なるべく手間がかからないシンプルなものを選んだり、コストを抑えたりする傾向があります。

なぜリキッド消費が広がっているのか

それでは、なぜ今リキッド消費が広がっているのでしょうか。リキッド消費の背景には、生活者の消費スタイルの変化があります。

所有より体験が重視される

若者がミニマリスト化し、あまりモノを所有しなくなりつつあります。たとえば車、ブランド物のバッグ、CDなど。昔の若者に比べて、部屋にあるモノの量はかなり減っているでしょう。モノ消費からコト消費へと移行して、所有より体験を重視するようになり、モノ自体が持つ価値が下がっているのです。

今はシェアやレンタルなどで消費できるようになったため、ブランドに対する強い好意がなければ、購入費を払い生活スペースを割いてまで所有したいと思いません。所有するには「持っていたらおしゃれ」「このブランドじゃなきゃいやだ」などの感情が必要で、以前より所有のハードルが上がっています。

デジタルの普及

コト消費が普及したのは、デジタル化の影響が大きいです。わざわざ所有しなくても、サブスクリプションサービスやレンタル、シェアサービスを利用すれば体験できます。そのほうがコスパがいいので、自然と利用率は上がっていくわけです。

また、SNSの普及も所有意識の低下を招いたと言えるでしょう。ブランド品を実際に所有していなくても、レンタルして利用している姿をSNSなどインターネットで発信することにより「ブランド品を利用している自分」を手軽に発信できます。ブランドそのものに対する好意ではなく、セルフブランディングのためにブランド品を利用する傾向が生まれ、真のファンと呼べる層は減少し、所有しないリキッド消費が広まったのではないでしょうか。

手間暇より手軽な便利さ

デジタル化が進んで効率的に消費できるようになり、手軽な消費スタイルが浸透しつつあります。インターネットを活用すれば、読みたいマンガや聞きたい音楽をすぐにダウンロードできるように「欲しい!」と思った瞬間にすぐに手に入るシステムが普及したことにより、例えば発売日に店頭に並んで購入するなど手間暇をかけて所有する必要がなくなったからです。

一番強い快感を得られる購入のタイミングは、欲求が高まった瞬間です。手軽に購入できるシステムであれば、欲しいと思った瞬間に手に入れられるので満足度が高くなります。そのため、手軽で速い利便性が重視され、リキッド消費へと繋がるのです。

環境問題に対する課題意識

近年、若者を中心に環境問題への意識が高まっています。たくさんのモノを持ち、次々に消費していく大量消費型のライフスタイルは多くの廃棄物を生み、環境に悪影響を与えかねません。自分が気に入ったものを必要なだけ持ち、長く愛用するライフスタイルが望ましいとする価値観が多数派になりつつあります。

昭和は「量」が重視され、平成は「質」が重視され、令和には「最適」が重視される、とも言われています。消費行動がアップデートされ、たどり着いたのがリキッド消費だと言えるでしょう。まとめ売りや安売りでは購入されない時代が到来しました。