企業の情報発信に活用できるツールとして、最近、利用企業が急増している「note(ノート)」。しかし、その利用実態、利用ユーザー像、活用術がよく分からない、という疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか。そこで記事では、noteの利用実態を最新データから読み解き、ユーザーを引き付けるコンテンツ投下のポイントを解説します。

ここ1年でユーザー数が急伸したnote

図1
図1.ブログサービスの利用状況.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

図1は、各種ブログサービスの利用状況を表したグラフです。noteのローンチは2014年で、他の有名ブログサービスと比較すると新興のサービスと言えますが、図1で2020年3月時点での利用状況を見ると、ユーザー数において健闘している、と読み取れます。

図2
図2.png
出典:noteは6周年をむかえ、月間アクティブユーザーが4,400万を超えました。6年をふり返る、インフォグラフィックを公開

図2は、noteのMAU(Monthly Active Users)の推移を表したグラフです。2020年3月に、MAUは4,400万を突破。図2を見ると、特に直近1年でユーザー数が急伸していることが目に見えてわかります。

参考:ピースオブケイクがnote株式会社に社名変更、MAUは4400万に到達

図3
図3.png
出典:noteは6周年をむかえ、月間アクティブユーザーが4,400万を超えました。6年をふり返る、インフォグラフィックを公開

図3は、noteの利用状況(2020年3月末時点)を表したインフォグラフィックです。noteでは、SNSのようにお気に入りのユーザーを「フォロー」して読みたい記事はタイムラインに表示されます。個々の記事を「読む」と「タイムラインに戻る」、そして「自分が記事を書く」がシームレスに行き来できるUIに。こうした、徹底したユーザー視点のUI改善をローンチ時期から繰り返し、投稿数の伸び、また、ユーザー同士の「スキ」アクション、「シェア」アクションの広がりを達成しています。

そして、従来のブログサービスで想定されているような長文テキストの投稿機能だけでなく、Twitterのような短文の「つぶやき」、「音声投稿」「動画投稿」「画像投稿」にも対応。ボイスブログをやりたい、自作の楽曲を公開したい、ビデオブログをやりたい、自作のイラストや絵を公開する場にしたいなど、クリエイターにとって使いやすい「居場所」を提供しています。

また、投稿するコンテンツは、100円~10,000円までの価格内でクリエイター側が自由に販売可能です。クリエイターにとっては、自作コンテンツをマネタイズできる可能性も膨らみますし、読み手にとっては有益なデジタルコンテンツを気軽に購入できる場となっています。

参考:ローンチから4年、『note』UIの変遷
今さら聞けない、利用企業が急増している「note」の基礎知識

noteでは「政治・社会」「教育」「経済・ビジネス」がよく読まれる

図4
図4.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

noteでよく閲覧されている記事ジャンルはどういったものなのでしょうか。図4は、各種ブログサービス別の閲覧ジャンルを表したグラフです。図4を見ると、「政治・社会」「教育」「経済・ビジネス」の割合が多いことがわかります。

こういった「政治・社会」「教育」「経済・ビジネス」というジャンルの情報は、例えばSNSでいうとTwitterにも溢れていますが、Twitter上の情報と比較して、noteで発信されている情報に寄せる「信頼度」はどうなのでしょうか?

ブログサービスには、SNSより深い論考を求める傾向

図5
図5.png
出典:Twitterってみんなどう使っているの?街頭インタビューでわかったエンゲージメント率アップの法則

図5は、Twitterの利用目的を示したグラフです。図5を見ると、7割近くの人がTwitterを「情報収集」の目的で利用していることがわかります。

図6
図6.jpg
出典:暮らしの情報とTwitter

図6は、Twitterユーザーがどんな情報に関心を示しているか表したグラフです。図6を見ると、利用者がTwitterで見ているのは「生活に関わる多種多様な興味・関心ごと」であり、「グルメ」や「コスメ」「ファッション」「料理・レシピ」「ライフハック」などややライトな情報に触れている人の割合が多いことが分かります。「時事問題」を求めている人も比較的多いと見ることができますが、140文字という短文で論考するよりも、長文テキストで論理展開がなされているブログサービス上の情報の方に、より厚い信頼を寄せているのでは?と推測もできます。

noteユーザーの9割が課金経験あり!

図7
図7.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

図7は、note利用者の課金実態を表したグラフです。驚くべきは、noteで課金(記事購入/定期購読)をした経験がある人はなんと9割にも上る、という点です。それでは、一体どのようなジャンルに課金しているのでしょうか?

「政治・社会」が売れている

図8
図8.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

図8は、noteで課金した人がどのようなジャンルの記事を購入しているかを表したグラフです。購入したジャンルの上位には「政治・社会」「経済・ビジネス」があります。先に述べた仮説「SNS上にも溢れている情報ジャンルであっても、より論考を重ねた長文テキストが発信されているブログサービスを信頼する」の裏付けにもなるのではないでしょうか。

平均購入価格は「500円~1,000円未満」が多い

図9
図9.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

図9は、noteで課金した人の平均購入価格を表したグラフです。

図10
図10.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

図10は、noteで課金した人の購入理由について表したグラフです。noteへの課金経験ありの人の平均購入価格は、「500円~1,000円未満」が最多です。購入理由は「価格が安かったから」「面白そうだったから」「役立ちそうだったから」という理由が上位を占めています。

価格や購入理由の面から見ると、かつての雑誌に置き代わる感覚で購入しているような実態が伺えます。また、購入理由として「筆者が有名人だったから」「筆者のことを信頼しているから」も比較的多く、noteを媒体として信頼できる場だと認識している様子も見て取れます。

noteユーザーがアウトプットする情報ジャンルは?

図11
図11.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

図11は、各種ブログサービスの投稿ジャンルを表したグラフです。

では、noteユーザーが「読む」ではなく「書く、アウトプットする」ジャンルはどうなのでしょうか。グラフを見ると「教育」「政治・社会」といったジャンルが多いことがわかります。特に「教育」は他のブログサービスと比較しても突出して多くなっており、先に述べた「noteを情報媒体として信頼している」という点とも繋がるのではないでしょうか。

書き手、読み手がお互いの情報について信頼し合うコミュニティが形成されている。SNSのようなフォロー機能、シェア機能もワークしていて、情報の拡散性も見込める。他者に、そして社会に向けて有用な情報をアウトプットしよう、というユーザー心理が働き、アウトプットする側も比較的堅い話題を責任を持って発信する、という循環が生まれているのかもしれません。

見えてくる、noteヘビーユーザーの実像とは?

noteユーザーで、読者として課金もする、かつ、自分自身でアウトプットもする「noteヘビーユーザー」の人物像を考えてみましょう。

・「政治・社会」「教育」「経済・ビジネス」に関心の高いビジネスパーソン
・デジタルコンテンツへの課金に抵抗がない
・情報の発信元が信頼できるコンテンツだと判断すれば、500円~1,000円程度の課金も厭わない

こういったユーザー像が見えてくるのではないでしょうか。

30代、40代はデジタルシフトの傾向

図12
図12.jpg
出典:「note」利用者の約9割に、課金経験

図12は、主要メディアの年代別平均接触時間を表したグラフです。「テレビ」「ラジオ」「新聞」「雑誌」を「オールドメディア」、そして「パソコン」「スマホ」を「デジタルメディア」とすると、上記グラフからは30代・40代ほどオールドメディアへの接触時間が少ないことが分かります。仕事や家事、子育てで忙しく可処分時間の少ないビジネスパーソン世代が、デジタルメディアを通して効率よく情報収集を行おうとしている像を推測できます。

図13
図13.jpg
出典:日本の出版統計

図13は、日本の出版物の推定販売金額の推移を表したグラフです。紙媒体の売れ行きを見てみると、週刊誌、月刊誌、書籍ともに年々、右肩下がりとなっています。先に、noteを雑誌感覚で利用し、「政治・社会」や「教育」「ビジネス・経済」といった情報に課金しているのでは、という仮説を述べました。その仮説と、図12、図13を併せて見た場合にも、30代40代のビジネスパーソンは情報収集には紙媒体からデジタルシフトしている様子が推測できます。

noteの強みとは

これまで述べてきたように、noteは雑誌など紙媒体に取って代わることができる可能性を膨らませつつあります。それどころか、noteには画像投稿や、音声投稿、動画投稿もできますから、紙媒体と比べて、ユーザーに対してよりリッチなコンテンツを見せられると言えるでしょう。さらには、筆者に「スキ」を送ったり、「コメント」を送ったり、投げ銭をしたりと、よりインタラクティブなコミュニケーションも可能です。

企業が、note利用実態から得るべきヒントは

・noteは紙媒体よりも、ユーザーに対してリッチなコンテンツを見せられる
・noteは紙媒体と比較した際、ユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションが可能である

この2点は、企業のPRなどの施策において大いに役立つと言えそうです。特に、顧客と一方通行ではない「インタラクティブマーケティング」「ファンマーケティング」の重要性は、近年マーケティング業界で言及されており、取り組みに注目している企業も多いのではないでしょうか。

例えば、企業担当者としての「ブランド、商品に込めた想い」「新商品開発秘話」「企業フィロソフィー」「プレスリリース」「社員教育」などを発信していく。日常的に顧客との接点を増やし、企業と消費者間で双方向のコミュニケーションを重ねて、熱狂度の高い顧客に育てる。熱狂度の高い顧客のLTV(ライフタイムバリュー=生涯顧客価値)を向上させる。

このようなスキームを目指している企業も増えてきているのではないかと思います。こういった点において、企業によるnoteでの情報発信は大いに有用性があると言えそうです。

noteのユーザー像から「刺さる」コンテンツ制作のヒントを得よう

noteヘビーユーザーは「時事・社会」「経済・ビジネス」「教育」といったジャンルに高い関心を寄せている実像がわかりました。また、30代・40代のビジネスパーソン世代がソースを信頼できるデジタルメディアからの情報収集に頼っていることも伺えます。企業のWeb担当者はこれらのペルソナを考慮し、「顔の見える情報発信」「時事・社会」「経済・ビジネス」「教育」といったカテゴリーの情報発信を検討していくと、ユーザーに「刺さる」コンテンツ制作のヒントになるのではないでしょうか。

■参考調査データ概要:
モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2020年3月度)
調査期間:2020年3月23日(月)〜2020年3月27日(金)
調査対象:Fastask(ファストアスク)のモニターのうち男女17歳〜69歳まで均等に割り付けて回収
有効回答数:1,100
調査方法:株式会社ジャストシステムのセルフ型ネットリサーチ「Fastask(ファストアスク)」でのアンケート調査
「note」利用者の約9割に、課金経験

noteに詳しくなろう

今さら聞けない、利用企業が急増している「note」の基礎知識

今さら聞けない、利用企業が急増している「note」の基礎知識

昨今、個人だけでなく企業の利用も増えている「note(ノート)」。この記事では、改めてnoteの利用方法や、ブログとの違い、特徴を解説します。法人向けのnote利用法についても紹介しますので、利用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

投げ銭機能も!「note(ノート)」で収益化する方法とは?

投げ銭機能も!「note(ノート)」で収益化する方法とは?

「note(ノート)」は、自己表現のコンテンツとして広く利用されています。利用者のなかには「有料コンテンツ」で収益化を実現している人も。Twitterなどを活用しながら有益コンテンツを販売して収益化しているインフルエンサーを見たことがある人もいるのではないでしょうか?記事では、noteを利用した収益化の仕組みについて解説します。

フォロワー数の多い企業アカウントから学ぶ。企業のnote活用術

フォロワー数の多い企業アカウントから学ぶ。企業のnote活用術

個人での利用が主流のnoteですが、近年は企業でもnoteの利用が増えてきました。ブランディングや広報活動に欠かせない要素としてnoteの需要が高まっています。記事では、実際にnoteを利用して情報発信を行っている企業の活用術を紹介します。

集客からブランディング、採用まで!企業の「note」活用事例まとめ

集客からブランディング、採用まで!企業の「note」活用事例まとめ

文章から写真、音声、動画まで、あらゆるコンテンツを投稿できる「note」。近年では、個人だけでなく企業もnoteの活用を始めているため、ビジネスに活かそうと考えている人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、すでにnoteを使っている企業の活用事例を「ファン獲得」や「集客」など目的ごとにまとめました。ブログやSNSとはひと味違う、noteの機能を引き出す使い方のアイディアを見ていきましょう。