AIアシスタントの進化により、音声検索は私たちの生活にとって身近なものになりはじめています。マーケターがこれから取り組むべきことの一つとして注目されるのが、音声検索のSEOであるVSO対策です。VSO対策をする上で大切なことは、まずターゲットをよく見つめることでしょう。

音声検索をよく使うのは誰でしょうか?実は、その中心にいるのはシニア世代なのです。スマートフォンなどIT機器に関連することは若い世代が中心と思われがちですが、音声検索に関してはシニアの利用割合が多いことが調査により明らかになっています。

そこで今回は、シニアの音声検索の利用について解説します。

音声検索は10代より60代に浸透している

株式会社ジャストシステムがマーケティングリサーチの情報サイト「Marketing Research Camp」で発表したモバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2019年1月度)によると、60代の約2割が音声検索を文字検索と同じくらい利用していることがわかりました。音声検索の利用率は、60代が今回の調査対象になった10代から60代の中で最も高いのです。テキスト入力しか利用しない人が最も多い10代と大きく異なる結果になりました。

音声検索は、10代より60代に浸透|Marketing Research Camp

また、株式会社ビデオリサーチが2018年2月に発刊した「Senior+/ex(シニアプラスエクス)サマリーレポート」でも、60代の音声検索利用率が10代の約2倍であることがわかります。この調査では70才から74才のユーザーも対象にしており、70代のユーザーは60代よりもさらに音声検索の利用率が高いことがわかるのです。年齢が高くなるほど音声検索が利用されていることが明らかになりました。

参考:AIスピーカーはシニアにうける?若年層よりシニア層が活用するスマホの「音声検索機能」~Senior+/exサマリーレポート発刊~|ビデオリサーチ

シニアがだんだんとガラケーよりスマホを持ち始めた

シニアによる音声検索が多い背景には、ガラケーからスマートフォンへの持ち替えがあるでしょう。MMD研究所が2019年に発表した「シニアのモバイル利用推移調査(2012年~2019年)」の調査結果から、シニアのスマートフォン利用者の割合が2019年には過去最高の68.5%まで上昇していることがわかります。また、2012年から2019年までスマートフォン利用者が継続的に上昇していることも確認できる一方で、ガラケーの利用者は継続的に減少しているのです。

シニアのスマートフォン利用はこれからも増えるでしょう。それに伴い、音声検索の利用もさらに増加していくと考えられます。

参考:2019年のシニアのスマートフォン利用者は68.5% 利用契約通信会社は「格安SIM」が18.9%と2018年に比べ2.8ポイント増加|MMD研究所

音声検索が浸透している理由

なぜシニアは音声検索を好んで利用する傾向があるのでしょうか。それにはシニアならでは理由があるのです。

入力操作のしにくさがある

シニアは、老眼など視力の低下によりスマートフォンの文字が読みにくいケースが多々あります。また、指先の動きの鈍化や端末の操作経験が浅いことにより、入力の必要がない音声検索を好む傾向があるのでしょう。スマートフォンの中には、シニアにも使いやすいように、ディスプレイの文字が大きくなる端末もありますが、それだけで入力操作がスムーズになるわけではありません。ガラケーと比べ、ディスプレイサイズが大きいスマートフォンが多いものの、シニアにとって入力操作は馴染みやすいものではないのが現実です。

音声検索の方が速くて簡単

スマートフォンの入力操作にあまり慣れていない人が多いシニアにとって、音声検索はとてもスムーズな検索方法です。スマートフォンの登場以前から、携帯電話を使った文字入力やインターネット閲覧は、シニアにはあまり馴染みのないものでした。スマートフォン全盛期がやってきて、シニアのスマートフォン普及が進んでも、そう簡単にテキスト入力に慣れるわけではありません。音声検索という「声」を使う手軽さは、メールより電話が習慣化しているシニア世代にとって何より早くて簡単に感じるでしょう。

ソフトバンクの「シンプルスマホ4」には音声検索用の物理的なボタンがついている

ソフトバンクのシニア向けスマートフォン「シンプルスマホ4」は、スマホデビューをする人でも使いやすい仕様です。音声検索をワンタッチで起動できるボタンが搭載されています。この機種は、全国のソフトバンクショップの「スマートフォンアドバイザー」へのアンケート結果を参考にして開発されたものであり、音声検索がシニアから必要とされていることが裏付けられているとも言えるでしょう。道案内や乗り換え案内の際に、音声検索をワンタッチで立ち上げて調べられるといった利用が想定されているようです。音声検索のために物理的なボタンを端末につけていることも、シニアの日常的な利用を考慮しているのでしょう。

また、この端末には、長時間、画面を見続ける際の疲労感を和らげる「はっきりビュー」やワンタッチで相手に連絡できるボタンなどが搭載されています。シニアユーザーに対しスマホの敷居を下げる様々な工夫の数々から、シニアのスマートフォンの利用は、今後ますます円滑になっていく印象です。

参考:シンプルスマホ4(シャープ製)の概要|ソフトバンク

今後はAIスピーカーなどの需要もシニア層に普及するのでは?

シニアにとって、スマートフォンよりも便利な存在としてAIスピーカーの普及が進むかもしれません。AIスピーカーは、話しかけるだけで情報収集や連絡ができるものであり、「Google Home」「Amazon Echo」「LINE Clova」といった製品があります。視力が弱くなってきているシニアがスマートフォンのディスプレイを見る必要がなく、馴染みにくい画面操作を覚える必要もありません。操作に関して新たに覚えることが少ないAIスピーカーほど便利なものはないでしょう。AIスピーカーの機能を利用した見守りサービスなども開発されており、高齢化社会への貢献が期待されています。今後さらなる進化を遂げると考えられるAIスピーカーは、シニアの暮らしをサポートする存在になるかもしれません。

参考:スマートスピーカーで高齢者の生活をより安心・便利に|シニアのあんしん相談室

まずはシニア向けにVSO対策を

シニアが音声検索を好む傾向があることから、VSO対策はシニア向けから想定するのも一案です。何より高齢化社会の日本ということを考慮すると、音声検索の利用者のボリュームゾーンはシニアになるでしょう。スマートフォンやAIスピーカーの進化に伴い、音声を使ってできることに溢れる未来は遠くないはずです。音声検索の利用がさらに増える前に、VSO対策をスタートしユーザーから選ばれる企業になりましょう。

注目されているものの、音声検索はまだこれから期待される技術です。この時期にVSO対策の知識を深めることは、将来に活きる取り組みになるでしょう。

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