コロナウイルスの影響でオフラインのイベントが全体的に打撃を受けたことは、様々な業界で問題とされてきました。三密を避けるために規制されることが増えた結果、これまでのイベント運営は困難となっています。そこで導入され始めたのが投げ銭というシステムです。

投げ銭を活用することで、これまでと異なる形でイベントでの収益化が可能となりました。現地に人が集まることを想定したイベントが制限されたことで、新しい活路が見出されたといえます。

本記事では、オンラインのイベントがメインで開催されるようになったコロナ禍で、どのような利用事例があるのか。そしてイベントの運営手法の変化から生じる、消費者心理の変化についても考察していきます。

投げ銭がもたらすメリット

まずはなぜ投げ銭が活用されたのでしょうか。そのメリットについて3つの観点で紹介していきます。メリットを知れば、コロナ禍のタイミングで投げ銭が選ばれた理由が見えてくるでしょう。

直接応援できる

投げ銭はイメージでいえば、路上パフォーマーの前に置かれている缶にお金を入れる行為です。その行為をインターネットで行うことで得られるのは、個人が応援したい誰かを支援するという構図です。

これまでは商品を買ったり、ライブに行ったりするという何かしらのサービスを購入することで支援を行ってきました。しかしそのサービスの中には諸経費が含まれ、直接支援される額はその中でも少ない額になってしまいます。

投げ銭を利用すれば、使用するプラットフォーム内のルールに沿って直接支援できるのです。自分が可能な金額を設定できるので、無理のない範囲で参加可能なうえに、そのお金が応援したい人や団体のためになります。

相互的なやり取りが生まれる

投げ銭は基本的に何かを提供した人に対して、その恩恵を受けた人がする行為です。ただサービスを購入して体験するだけだった従来のものから、サービスを体験しながら感じた価値に対しても金銭を支払えます

その相互作用的な関係性は、「投げ銭」導入前になかなか見られなかった光景です。自分にとって価値のあるものに対して、適切な価格を払いたいといったコアなユーザーのニーズにも応えられます。

これまでにないイベントの可能性が生まれる

またイベントに投げ銭を導入することで、オンラインイベントでも収益の動線を増やすことが可能です。イベントの収益といえばチケットやグッズによる物販収益などが主なものとなっていましたが、そこに投げ銭が加われば新しく収益を生み出すことが可能になります。

特にコロナ禍のようなオフラインイベントが禁じられた状況では、イベントの存続にかかわる収益の問題を緩和してくれました。視聴者にとって価値のあるものを提供していることが前提とはなりますが、より現代の情勢にマッチした収益化手段として利用されているのです。

コロナ前後での消費行動の変化

コロナウイルスが流行し始めてから、外出を自粛するケースが多くなりました。活動する場所が変わることによって、消費者行動にも影響が及ぼされていきます。コロナ前後で、どのような消費行動の変化があったのか見ていきましょう。

在宅でできることに焦点

外出ができないことはコロナ以前には考えられないことでした。自粛を要請されたとしても、毎日の生活は続いていきます。消費行動を当たり前のように行っていた現代において、それをいきなり止めるということはストレスとなるでしょう。

よって在宅でも可能な手段で消費をするようになりました。ライブに行けないのならば、自宅でライブ配信を見ること。欲しい商品に関してをYouTubeのレビューや記事などを参考にして通販で購入するなど、在宅だからこそできる行動が促進されました。

お店よりも通販

在宅で買い物などをすることが増えたということに関連して、通販を利用する頻度が爆発的に増加しました。株式会社ロックウェーブが出したデータによると、4月に入ってからの注文件数の増加が顕著に見られます。

また在宅で行う事柄が増えたことや、感染の拡大を防ぐために自粛をすることが重なり、今後も通販を利用したインターネット上での消費が加速するでしょう。まだECサイトなどを活用していない企業は、実店舗以外での販売についても考えていく必要があるのでしょう。

「ライブに行く」から「ライブを見る」

コロナウイルスによって大打撃を受けたエンタメ業界。舞台系のイベントや音楽系のライブなどはすべてキャンセルとなり、多大なる損失を生み出したといわれています。オフラインが封じられた段階で注目されたのが、インターネット上でのイベント開催です。

それによって在宅でイベントに参加するといった体験が可能になりました。ライブの無観客配信などはその典型例で、その他にも配信番組が大幅に増えるなどエンタメ業界でも大きなムーブメントとなっているのです。

投げ銭を導入したリアルタイムイベント

ではリアルタイムイベントで、投げ銭を導入した具体的な例をいくつか見ていきましょう。これまでに確保されるはずだった収益が大幅に失われた状態では、新しくお金を回収する経路が必要になります。どのようなイベントで有効に活用されたのかを見ていきます。

ウェビナー

Webでセミナーを行う通称「ウェビナー」。これまでは会場に集まってセミナーを行うことが通例でしたが、学びの場もインターネットを通して自宅に移動されました。その際に導入されたのが投げ銭です。

合同会社well coの代表である藤田泰仁氏が主催するウェビナーでは、無料でセミナーを受けることができる一方で、お金に余裕があれば追加で支払いを可能としています。支払いをチケットなどで制限しないことで、より柔軟な収益構造を確保できるのです。

参考:コロナ禍で頭を抱えている事業主に向けて『投げ銭式セミナー』を開催

無観客ライブ配信

ライブにおいても投げ銭が利用されるケースが増えてきました。会場に人が集められないことが確定しているので、確保した会場は空の状態で残されています。ライブがキャンセルとなったアーティストは、その状況を活用して配信を伴った無観客ライブを行いました。

配信プラットフォーム上の投げ銭のシステムを利用することで、ライブの収益として投げ銭が入ってくる仕組みです。実例として1つのライブだけで、1億円もの収益を上げたアーティストも出てきています。

参考:新型コロナで公演中止のM.S.S Project、無観客ライブ配信にファンの“投げ銭”止まらず 「スパチャ1億」トレンド入り

Jリーグ

サッカーでおなじみのJリーグも投げ銭を導入した活動を始めています。スポーツ事業に関しても観客を会場に集められないという問題が発生し、収益源が失われつつある状況です。その中で投げ銭の効果は絶大でした。

鹿島アントラーズが行ったオンラインイベントは、過去の映像を選手と振り返るといった内容。投げ銭機能を活用した5時間のイベントで、個人から数万円単位の金額も出されるほどの結果になりました。

参考:「10万円を投げ銭」した猛者も。Jリーグで“投げ銭”応援イベント続々。気になる手応えと実績は?

withコロナで起こる消費者心理を考察

ではコロナを介して消費者心理はどのように変わっていったのでしょうか。withコロナの時代を生き抜くためにも変化が求められている今。消費者の行動を理解することが、企業としても重要な一手となっています。消費者心理を考察し、これからの消費について考えていきましょう。

これまでの「会場に行く」とは違う楽しみ

先ほど紹介した無観客ライブなどのように、会場に足を運ばないライブの方式が採用され始めています。リアルタイムで現地で体験することに価値を見出していた方法から、インターネットを利用してつながる新しい形態へ。

ライブだけにとどまらず、セミナーやその他の各種イベント全般においてその傾向は見られます。今後も、会場で楽しむことを前提としないイベント設営が活発になることが考えられるでしょう。イベント業界全体の状態が改善へと向かうことを願って、支援をしていくことが重要となります。

考える時間が生まれ新しいことに注目

活動を自粛されたことによって、家で活動する時間が長くなりました。これに伴って外で働いている人はテレワークが導入されることになり、仕事も家でする頻度が増加したことでしょう。通勤にこれまで使っていた時間など、空白の時間が生まれることも想定されます。

これまで考えなかったことにも触れることになり、新しい視点に立つユーザーも増加。購入する商品の属性が変わるなど、新しい消費行動を示すケースも表れています。時間があることでこれまで忙しくて手が付けられなかったことを実行に移し始めたといえるでしょう。

今まで外に向いていた意識が内側へ

コロナ以前の社会では多くの人が外出を日常的に行っていたため、長時間意識が外を向いていました。そのため自分が本来求めているものはなんなのか。改めて考える時間を捻出しづらい状況でした。

それに対しコロナ禍を経験して、外出頻度が下がることで自分と向き合う時間が少しずつ確保されるように。これを受けて決断できなかった大きな決定をする人も少なくないでしょう。外の世界の見方も変われば、また外出をした際にも異なる消費行動をする可能性があります。

参考:新型コロナウイルスが及ぼす消費者心理への影響(6月第1週)

個人の支援がコンテンツを守る

コロナの影響でイベントは大打撃を受けましたが、それに適応する形で変化が行われているのも事実です。今後の流行の状況を見つつも、イベントはかつての盛り上がりを取り戻すための施策を編み出していくことでしょう。

そのための手段として「投げ銭」は有効な手段の1つとなります。信用をためていくことで、それはいざというときに支援として収益に変換されるのです。今からでも価値を提供し、投げ銭によって危機を脱却していきましょう。

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