オウンドメディアやソリューション構築において、参考にし欲しいビジネスモデルの設計方法が「リーンキャンバス」です。

前回は、リーンキャンバスについて概要を説明しましたが、今回はリーンキャンバスの書き方をferretの例をもとに解説しますので、参考にしながら自社のビジネスモデルに当てはめて考えてみましょう。

前回の記事:成功したスタートアップから学ぶビジネスモデルの設計方法「リーンキャンバス」とは

リーンキャンバスとは

リーンキャンバスを設計したアッシュ・マウリャの著書「Runnnig Lean」では、下記図のように、以下の要素を1ページに盛り込んだビジネスモデル図を意味します。

original.png
※会員限定でテンプレートがダウンロードも可能です。形式:xlsx

リーンキャンバスのテンプレートのダウンロードはこちら

(記述する際は、①から順に記載するのが設計しやすいと言われています)

①	課題:ターゲットが感じている解決すべき上位3つの課題
②	顧客セグメント:どんな人がターゲットなのか
③	独自の価値提案(UVP):どうなれば独自の価値を感じてもらえるか
④	ソリューション:どうやってその課題を解決するのか
⑤	チャネル:どうやってターゲットにアプローチするのか
⑥	収益の流れ:どのように収益化されるのか
⑦	コスト構造:コスト(顧客獲得コストや流通、ホスティングにかかるコスト、人件費など)はどれくらいかかるのか
⑧	主要指標:どの数値があがれば成功と言えるのか
⑨	圧倒的な優位性:他者に真似されない優位性とは何か

以下では、①から順にferretの例をもとに書き方を解説します。

リーンキャンバスを使ったferretの例

①課題&②顧客セグメント

課題と顧客セグメントの2つを埋めることで、企画しようとしているビジネスのスコープ(領域)がクリアになりやすくなり、後の項目が書きやすくなります。

はじめに“課題”についてですが、解決すべき課題の上位1~3位を記述します。ferretの場合は、以下の通りです。
なお、この項目では、挙げた課題に対し、既存の代替品も記載しておくと競合や他ソリューションのスキーム等を理解しやすくなります。

▼ferretの課題
・Webマーケティングの実用的かつ正しい知識・ニュース・事例を学びたいが、どう学べばいいかが分からない
・調べれば調べるほど色々な意見があって、どこが正しい情報なのかわからない
・学んだ知識やスキルを実践する場所が欲しいが、なかなか無い
・Webツールやサービスを利用して効率化を図りたいがどれが自社にあっているのかわからない

▼代替品
・他メディア(リアルな場も設けている)

続いて、“顧客セグメント”ですが、ここでの顧客は「お金を支払ってくれる人」が対象です。
また、顧客セグメントの欄には最初に顧客なってくれる=アーリーアダプターもさらっと記述しておきましょう。

▼ferretの顧客セグメント
・中小企業のWebマーケティング担当者
・最初はWeb関係の職種ではなかったが、何らかの理由でWebマーケティングの担当に抜粋されたという経緯

▼アーリーアダプター
・こまめにFacebookやTwitterをチェックするだけでなく、RSSフィードでマーケティング系のメディアもチェックするWebマーケティング担当者

③独自の価値提案(UVP)

リーンキャンバスの中で最も重要で難しいのが③の独自の価値提案。
この欄には、差別化要因と注目に値する価値を説明した単一で明確な説得力のあるメッセージを記述しなければいけません。

UVPの公式として、「即効性のある明快な見出し=顧客が望む成果+明確な期限+それが達成されなかった場合の代替案(デーン・マクスウェル公式より)」というものがあり、こちらを参照すると良いでしょう(期限と代替案はMUST要件ではなくWANT要件になります)。

▼ferretの独自の価値提案
・ホームページの悩みは今日で終わりWeb担当者に必要な情報は全てココに。成果の出る“ホームページ運営プロセス”を公開中

④ソリューション

ソリューションは、上位3つの機能を記述しますが、課題に取り組む程度の簡単なラフスケッチ程度に書くのがいいでしょう。
なぜなら、課題は後工程の顧客インタビューでテストされることで、優先順位が変わったり、課題そのものが大きく変わったり、それに伴いソリューションも変わったりなど、さまざまな“変化“が起こりやすいため、ここで作り込んでも無駄に終わる可能性が高いからです。

▼ferretのソリューション
・Webマーケティングの分かりやすいカリキュラム・ニュース・事例の提供
・Webツール・サービス比較サイト「tool ferret」の提供
・Webマーケティングの実践の場「ferret one」の提供
・24時間ネットがつながる環境であればどこでも気軽に学習できる

⑤チャネル

ここでのチャネルは、顧客へ商品を届ける経路を意味します。
チャネル例で言うと、SEOやfacebookなどのソーシャルメディアブログなどが主要なチャネルとして挙げることはできますが、他にもリスティングやDSP、Ebook、小冊子、オン・オフラインセミナー、チラシ、展示会など、さまざまなチャネルが存在します。

▼ferretのチャネル
・SEO
・Facebook
・Twitter
・リファラル
・メルマガ
・RSSフィード
・LINE

⑥収益の流れ

収益モデルや顧客障害価値、サービス価格などを記述します。
なお、サービス価格に関しては、“課題“欄に記述した代替品の価格を参考にすると設定しやすくなります。

▼ferretの収益の流れ
・ferretの認知 ⇒ 会員登録 ⇒ ferretでより深い学習 ⇒ 有料会員
・Webツール・サービスの導入を検討している ⇒ 「tool ferret」の活用
・ferretを活用した企業のネイティブ広告、ユーザーにアプローチできるメルマガ広告など
・Webマーケティングを実践したい人 ⇒ 「ferretOne」の活用

⑦コスト構造

コスト構造は、製品を市場に送り出すためにかかるコストをリストアップしていきます。
すべてを正確に記述することは難しいので、現時点で思いつくものだけで構いません。

ferretのコスト構造の流れ
・人件費“○○○円”
・取材費“○○○円”
・サーバー費“○○○円”
など

⑧主要指標

「Running Lean」の著者は主要指標を策定するにあたって、“デイブ・マクルーアの海賊指標(AARRRモデル)”を使用していると思われるため、今回はそのフォーマットに沿って記述していきます。

▼ferretの主要指標
・獲得(ユーザーはどうやってあなたを見つけるのか?):ferretへのUU(セッション)
・アクティベーション(ユーザーは最初の体験に満足したか?):会員登録数
・定着(ユーザーは戻ってくるのか?):会員登録した人のアクティブ率
・収益(どうやってお金を儲けるのか?):tool ferretやferret oneへの申込数など
・紹介(ユーザーはほかのユーザーに紹介してくれるのか?):ferret oneのソーシャルエンゲージメント

⑨圧倒的優位性

圧倒的な優位性を記述する際は、簡単にコピーや購入ができないものを軸に構成しましょう。
著書では、圧倒的な優位性の具体例として「内部情報やドリームチーム、コミュニティ、既存顧客」などを挙げています。

▼ferretの圧倒的な優位性
・Webマーケティングに特化したメディアで立ち上げ1年3カ月で月間200万PV
・約30万以上の会員